著者 : 加藤かおり
あなたは僕を知らない。僕だって、あなたを知らない。 エジプト、カイロ。親に決められた既定路線の人生を歩む新婚の医師ターレクは、 ある日魅力的な青年アリーと出会い、その平穏な未来は一変する。 保守的な文化圏での同性愛と不倫は疑惑と波紋を呼び、そして物語は思わぬ方向へと転がり始める…。 喪失と欠落、そして家族の愛を描く珠玉の文芸作品。 カナダのフランス語圏の作家のデビュー作にしてフランスで大ヒット。フェミナ賞とルノードー賞の最終候補となり、「高校生が選ぶフェミナ賞」やリブレール賞(フランス版本屋大賞と呼ばれている)ほか様々な賞を受賞した、話題の一作。 [著者プロフィール] エリック・シャクール Éric Chacour 1983年カナダのケベック州モントリオール生まれ。エジプト人の両親を持つ。パリ・ドーフィンヌ大学を経てモントリオール大学で国際関係論の修士号を取得した。 金融業界で働く傍ら小説を執筆。第一作である本書は2023年カナダでの出版後フランスでも刊行されたちまち人気となり、同年度の「高校生が選ぶフェミナ賞」を受賞したほか、フェミナ賞とルノードー賞の最終候補に選ばれた。翌年にはフランス書店大賞、フランコフォニー五大陸賞などを受賞。 2025年現在はモントリオール在住。 [訳者プロフィール] 加藤かおり (かとう・かおり) フランス語翻訳家。国際基督教大学教養学部社会科学科卒業。訳書にガエル・ファイユ『ちいさな国で』、エルヴェ・ル・テリエ『異常【アノマリー】』、ダヴィド・ディオップ『夜、すべての血は黒い』、ブリジット・ジロー『生き急ぐ』(以上早川書房)、アントニオ・カルモナ『サヨナラは言わない』(小学館)、セシル・トリリ『ちぐはぐなディナー』(講談社)ほか多数。 [原題] Ce que je sais de toi
妻と関係修復のためにシチリア島タオルミーナを訪れたメルヴィルは、レンタカーで宿に向かう途中「何か」に衝突する。事実から目を背け、最悪の選択を重ねる男の行く末は。陰気で、不穏で、スリリング……ジョルジュ・シムノンの後継者と名高い著者が放つ怪作
人生の曲がり角は、真夏のパリの晩餐にあった。 ジゼル・アリミ賞を受賞した「反逆へ向かう女性たちを描く、一触即発の密室劇」 8月の暑い夜。パリのラスパイユ大通りにある高級アパルトマンを1組の夫婦が訪れた。エティエンヌが旧友のレミと、レミの妻のジョアルを招いたのだ。エティエンヌの妻のクローディアを交えて、4人でディナーを囲む。弁護士で自信に満ちたエティエンヌ。運動療法士で内気なクローディア。経済学の教師で社交的なレミ。IT業界で成功を収める思慮深いジョアル。それぞれの胸に秘めた思いを抱えながら、ディナーは進行していくがーー。 踏み出してみれば、なんてことのない一歩だった。
バイク事故で夫を亡くした作家は、20年後、思い出の家を手放す今、再び問いに向き合う。もしも、あのとき別の選択をしていたら事故は避けられたのか? 悲劇の日までの二十数年にわたる結婚生活の「あのとき」の数々を見つめ直す。ゴンクール賞受賞の感動作
百年前の戦争の苦しみと哀しみ、歴史に埋もれた声がよみがえる。セネガル歩兵のアルファは、瀕死の友をまえに決断を迫られていた。第一次世界大戦でフランスに動員された20歳のアルファと同郷の友マデンバ。対ドイツ軍の塹壕戦で、マデンバは死に瀕していた。腹を切り裂かれた苦しみは凄まじく、一思いに殺してほしいというマデンバの懇願に、アルファはー。この日を境にアルファは変わった。ドイツ兵を捕らえ、腹を引き裂き、苦しむ相手を殺してやり、手を切り落としてゆく。仲間からは英雄扱いされるものの、持ち帰る手が増えるたびに、恐れられていった。それでもアルファの復讐は止まらずに…。戦争という極限状況におかれ、人間性と非人間性、服従と自由に引き裂かれてゆく青年の心理を鮮烈に描き出す、新たな戦争文学の傑作。ブッカー国際賞、高校生が選ぶゴンクール賞受賞作。フランスで25万部突破。
1830年秋、七月革命の熱狂が冷めやらぬパリで、前途洋々たる代議士の息子が、盛大な夜会のさなか、二階の窓から身を投げた。死の直前、その青年は魅せられたように鏡に見入っていたという。父の遺志を継いで化学者から警官に転身したパリ警視庁の若き警部ヴァランタン・ヴェルヌは、突然の異動とともにこの事件の担当を命じられる。元徒刑囚にして元治安局長の探偵ヴィドックの助けを借り、新政権を揺さぶる奇怪な謎を解くため奔走するが…。科学の知見を武器にしたヴァランタンの活躍を描く傑作歴史ミステリ!
殺し屋、ポップスター、売れない作家、軍人の妻、がんを告知された男……なんのつながりもない人びとが、ある飛行機に同乗したことで、運命を共にする。飛行機は未曾有の巨大乱気流に遭遇し、乗客は奇跡的に生還したかに見えたがーー。ゴンクール賞受賞作
フランスの田舎町でゲストハウスを営んでいるアレックス。あるとき、宿泊客としてやってきたゴンクール賞作家のシャルル・ベリエに襲われ、彼を殺してしまう。彼女は夫にも事情を隠してパリへ行き、殺人の隠ぺい工作を始める……スピード感あふれるサスペンス
90年代初頭にブルンジ共和国で生まれたガブリエルは、家族と幸せな日々を送っていた。しかし隣国ルワンダの民族対立が深刻化すると、平穏な生活は音を立てて崩れていくのだったーーフランスで活躍する現役ラッパーが自らの過酷な生い立ちをもとに書いた感動作
顔見知りのいない田舎に滞在する前科持ちの男テオは、農家の老兄 弟に監禁されてしまう。鎖をつけられ、地下室で奴隷のような生活 を強いられるテオを待つ未来とはーー衝撃のフランス・ミステリ!