小説むすび | 著者 : 古沢嘉通

著者 : 古沢嘉通

七月七日七月七日

東アジアに伝わる七夕伝説、 不老不死の薬を求める徐福伝説、 済州島に伝わる巨人伝説ーー 伝説や神話からインスピレーションを得て 日中韓三ヵ国の作家が紡ぐ、十の幻想譚。 七夕の夜、ユアンは留学で中国を離れる親友ヂィンに会いに出かけた。別れを惜しむ二人のもとに、どこからともなくカササギの大群が現れーー東アジア全域にわたり伝えられている七夕伝説をはじめとし、中国の春節に絡んだ年獣伝説、不老不死の薬を求める徐福伝説、済州島に伝わる巨人伝説など、さまざまな伝説や神話からインスピレーションを得て書かれた十の物語。日中韓3カ国の著者による韓国発のオリジナル・アンソロジー。 ■目次 「七月七日」ケン・リュウ 「年の物語」レジーナ・カンユー・ワン 「九十九の野獣が死んだら」ホン・ジウン 「巨人少女」ナム・ユハ 「徐福が去った宇宙で」ナム・セオ 「海を流れる川の先」藤井太洋  「……やっちまった!」 クァク・ジェシク 「不毛の故郷」イ・ヨンイン 「ソーシャル巫堂指数」ユン・ヨギョン 「紅真国大別相伝」イ・ギョンヒ

訣別(上)訣別(上)

ある日、元ロス市警副本部長で、現在はセキュリティ会社トライデント・セキュリティの重役になっているクライトンに呼び出され、トライデント社の顧客の大企業のオーナーである富豪、ホイットニー・ヴァンス(八十五歳)が、ボッシュを名指しで依頼したいことがあると言っている、と告げられる。依頼内容は、クライトンも知らず、ボッシュにのみヴァンス本人から伝えるとのこと。 ボッシュは、ロス市警時代の旧知の知人が本部長を務めるロス北郊の小さな自治体サンフェルナンド市(人口二万人強)の市警察に誘われ、無給の嘱託刑事として勤務するようになっていた(一方で私立探偵免許をあらたに取り直していた)。  ある日、元ロス市警副本部長で、現在はセキュリティ会社トライデント・セキュリティの重役になっているクライトンに呼び出され、トライデント社の顧客の大企業のオーナーである富豪、ホイットニー・ヴァンス(八十五歳)が、ボッシュを名指しで依頼したいことがあると言っている、と告げられる。依頼内容は、クライトンも知らず、ボッシュにのみヴァンス本人から伝えるとのこと。  ヴァンスに会いにいくと、高齢と疾病のため、老い先短いことを悟った老人から、大学生の頃知り合い、妊娠させながらも、親に仲を裂かれたメキシコ人の恋人を、あるいはもしその子どもがいれば、探してほしいと頼まれる。ヴァンスは未婚で、ほかに子孫はおらず、彼が亡くなれば莫大な財産の行方が気になるところで、もし血縁者がいれば、会社の将来を左右する事態になるかもしれず、そのため、会社側の利益(ひいては自分たちの利益)を優先させる行動に出る重役たちがいることが予想されるため、調査はくれぐれも極秘でおこなってほしい、と念を押される。また、この調査に関する報告は、かならずヴァンス自身にのみおこない、ヴァンス以外の人間から調査への問い合わせは一切しない旨、告げられる。

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