著者 : 吉川凪
崔参判家の実権を握った趙俊九は、法外な小作料を取り立てるなど、その横暴さは目に余るものとなった。日露戦争に勝利した日本が朝鮮の主権を侵食し、日本の有力者につながる俊九の勢いは増すばかりだ。 崔参判家の跡取り娘の西姫は、俊九に反撃できない鬱憤から吉祥、鳳順にしばしば八つ当たりする。 鳳順は吉祥への思いを募らせるが、吉祥はその思いを受け入れられない。幼い頃から固い絆で結ばれていた三人の間には、微妙な亀裂が広がる。 祖国存亡の危機に重なる西姫の窮状に、彼女を支えてきた人たちは俊九に反旗を翻した。追われる身となった彼らと共に、西姫は新天地を目指す覚悟を決める。 第一部 第四篇 疫病と凶作 十六章 情が多過ぎても狂うのだろうか 十七章 愚かな反骨と邪悪な理性 十八章 蟷螂の斧だと言っていたけれど 十九章 酒宴の風景 二十章 旅立つ人々 第一部 第五篇 去る者、残る者 一章 黄泉の三途の川 二章 花靴 三章 脚の取れたたんす 四章 乱行 五章 過客 六章 乙巳保護条約 七章 日陰に差す日光 八章 春の草と冬の木 九章 乞食が伝えた言葉 十章 往年の東学将軍 十一章 対面 十二章 あばら屋の歌い手 十三章 夜に泣く女 十四章 帰ってきた潤保 十五章 義挙 十六章 悪は悪を忌避する 十七章 かすかな希望がぶらんこに乗る 十八章 故国の山河を捨てる人たち 訳注 イラスト図版 崔参判邸の見取り図 訳者解説 監修、訳者略歴
田舎の獣医キム・ビョンスの裏の顔は、冷徹な殺人犯だった。現在は引退して古典や経典に親しみ詩を書きながら平穏な日々を送る彼には認知症の兆候が現れ始めている。そんな時、偶然出会った男が連続殺人犯だと直感し、次の狙いが愛娘のウニだと確信したビョンスは、混濁していく記憶力と格闘しながら人生最後の殺人を企てるーー。 虚と実のあわいをさまよう記憶に翻弄される人間を見事に描き、結末に向かって読み進める読者の記憶までをも翻弄する韓国長編ミステリー小説の傑作。 【映画化情報】 ソル・ギョング、キム・ナムギル、ソリョン(AOA)出演、映画『殺人者の記憶法』 2018年1月27日よりシネマート新宿ほか全国にて順次公開決定! 殺人者の記憶法 訳注 作家の言葉「これは私の小説だ」 訳者あとがき
崔致修殺害事件は関わった者たちの処刑で幕を下ろした。 平穏を取り戻そうとしていた平沙里は干ばつに襲われ、崔参判家の財産を狙う没落両班の趙俊九は妻子を連れて乗り込んできた。 災厄は続く。コレラの流行が多くの死者を出し、参判家の跡取り娘・西姫は後ろ盾となる人々を失った。翌年には麦が大凶作となり、趙俊九はこの機に乗じて参判家の実権を握るべく卑劣な手段で攻勢に出た。幼いながらも西姫は当主として果敢に立ち向かい、寿童、吉祥、鳳順、俊九に反発する一部の農民と共に、大胆な反撃に出た。誇り高き西姫の戦いがここから始まる。 第一部 第三篇 終わりと芽生え 十一章 救われた魂 十二章 荷車に乗った少年 十三章 レンギョウを摘んで 十四章 斜陽の挽歌 十五章 帰ってきた任の母 十六章 李府使家の坊ちゃん 十七章 西姫の外出 十八章 襲撃 十九章 欲情のいけにえ 二十章 金書房の女房 二十一章 底なし沼 第四篇 疫病と凶作 一章 ソウルから来た客たち 二章 発病 三章 私刑 四章 至る所に死に神が 五章 生と死 六章 ポソンを照らす日差し 七章 酒幕で会った老人 八章 帰郷 九章 世論 十章 浮雲のような幸福 十一章 牛観の下山 十二章 騒動 十三章 凶作 十四章 生ける屍しかばね 十五章 わが友、カラスよ 訳注 崔参判邸の見取り図 訳者解説
映画業界で働いている「私」は、 たわいのない毎日を動画撮影で記録していた。 気のおけない友達とのおしゃべり、お気に入りのMDプレイヤー、 風に揺れるガイコツTシャツ、 20万円分の多種多様なハサミ…。 そこに外国から戻った「ハジュ」兄妹に出会い、「私」の動画記録にも変化がではじめたが…
高橋新吉、辻潤、秋山清…大正の世にかりそめに咲いた前衛芸術の徒花。韓国文学史上唯一のダダイストの交友の軌跡から、その鮮烈な青春のきらめきをエピソード豊かに描く。刹那的な彼ら“三国同盟”の友情。日/韓式ダダ群像。
韓国ドラマや映画好きの人におすすめの詩集! 情の世界が故郷の風景と一緒に唄として聞こえてくる。詩人は自分の故郷である全羅道の匂い、風、色、人々を韓国郷土詩人許炯萬(ホ・ヒョンマン)の暖かいポエムとポエジーの世界がリズム感たっぷりでうたわれています。 【「愛について」(抜粋)】 愛とは思いの分量である。 波打つけれど溢れない思いの海。光り輝く思いの山脈。悲しい時は限りなく深くなる思いの井戸。幸福な時は花びらのように戦慄する思いの木。 愛とはからっぽの魂を満たすものである。今日も夕暮れの窓辺に座り明けの明星を待つ人よ。明星が輝けば静かに夢見る人よ。
本作は深い内省と探求から生まれた8つの短編で構成されていますが、それらは、独立した物語でありながら、同時に1つの長編小説のようにつながり合い、互いに共鳴し合っているのです。 【全部読まねば「都市」が見つからない。パク・ソンウォンワールドの八篇のストーリー】 この作品には短編集『キャンピングカーに乗ってウランバートルまで』と『都市は何によってできているのか』の小説が同名2作目まで収録されており、「キャンピングカー」にでてくる「僕」が「都市はー2」にも登場するという、ユニークな構成になっています。二つとも違う背景の作品ではありますが、「僕」が家族を通して追求していた幸せの理想は「何」なのかが淡々と語られ、遊牧民のような「放浪生活」をし続けていく「僕」の話は私たちの話でもあるような気がします。軽いタッチで書かれたパク・ソンウォンワールドの「放浪」をお楽しみください。 姉と僕は誕生日が数日しか違わない。そんな姉を姉とよんでいいのかどうか、僕は昔から何とも判断が付きかねている。早い話が僕は父の隠し子だ。それも本妻と同じ時期に妊娠させたというから、その手際の良さには舌を巻く。父はたぶん当時から遊牧民気質を持っていたのだろう。 -「キャンピングカーに乗ってウランバートルまで」から
ラクダに乗って行こう あの世へは/ 星と月と太陽と/砂しか見たことのないラクダに乗って。 -「ラクダ」より 40年に及ぶ全詩業から選りすぐりの69篇を収録した、画期的な一冊となっています。 韓国民衆の暮らしを見つめ、それをすぐれた詩作品へと昇華させた出世作『農舞』の他、厳選した詩やエッセイ、訳者による詩人解説を収録。 韓国最大の詩人の詩業を一望できる内容となっています。
死期の迫る恋人に向かって、ともに良く生きようと切々と訴えかける「葵のようなあなた」、子供時代の空想に満ちた豊かな孤独を蘇えらせる散文形式の「誰もいない教室」など、溢れる叙情を美しい情景に載せて詠む9篇の詩。