著者 : 吉本ばなな
ヨシモトオノとは、吉本ばなな×「遠野物語」! 日常にふと口をあける世界の裂け目。 生と死の境界がゆらぐときーー心に小さな光を灯す物語たち。 天井の木目に小さな顔があった。何度見ても顔だった。知らないおじさんの顔。 木目って人の顔に見えるよなあ、小さいときも風邪を引くと木目がいろんなものに見えたな、と思ったら、そのおじさんがにやりと笑った。こちらの考えを見透かすように。(「思い出の妙」より) 民俗学者・柳田國男が地方の不思議な伝承を集めた不朽の名作「遠野物語」。 これは「不思議と言えば不思議で、そうでもないと思えばそれっきり忘れてしまう」小さなエピソードを集めた「吉本ばなな版遠野物語」! だまされすくわれ 引き出し 唐揚げ 渦 幽霊 光 みだしなみ 炎 花 わらしどうし 楽園 最良の事故物件 思い出の妙 あとがき
「友おじさん、どうして人は色とかお金とかに目がくらむの?」 「人はいつだって、今の人生をとにかく変えたいと思ってるからだよ。」 下町で生まれ育ったキヨカは幼いころから、目に見えないものが見える能力を持っていた。中学生になって、ご近所に住む友おじさんが運営する「自習室」の空間を、その力で清めるアルバイトをしていた。そんなある日、母と離婚して家を出た父が、自殺未遂を図ったという連絡が入ってーー。人と違う能力を持つ少女が世界を生き延びるための、暮らしの知恵が詰まった最新長編!
海と山に囲まれた吹上町で、ミミは除霊師の美鈴に出会った。母親により痛めつけられた美鈴に、ある日妊娠が発覚しー。傷と再生、欲と本質、自然の力を描き切った傑作長編、堂々完結。
愛は戦いじゃないよ。愛は奪うものでもない。そこにあるものだよ。たいせつなひとの死、癒えることのない喪失を抱えて、生きていくーー。凍てつくヘルシンキの街で、歴史の重みをたたえた石畳のローマで、南国の緑濃く甘い風吹く台北で。今日もこうしてまわりつづける地球の上でめぐりゆく出会いと、ちいさな光に照らされた人生のよろこびにあたたかく包まれる全6編からなる短篇集。
吹上町の夏が終わり、引きこもりの美鈴がミミのもとを訪れた。「部屋の中に子どもの霊がいるんだ。いつも夜になると出てくる」生も死も、過去も未来も溶け合う吹上町に、新たな風が巻き起こるー人智を超えた世界の理がしみじみと胸をうつ、大好評哲学ホラー。
ちょっとしたきっかけで近づいたり、大嫌いになったり。友達、親友、ライバルーー。読者と選んだ好評アンソロジー。友情編には、坂木司、佐藤多佳子、重松清、朱川湊人、よしもとばななの傑作短編を収録。
「アロエが、切らないで、って言ってるの。」ひとり暮らしだった祖母は死の直前、そう言った。植物の生命と交感しあう優しさの持ち主だった祖母から「私」が受け継いだ力を描く「みどりのゆび」など。日常に慣れることで忘れていた、ささやかだけれど、とても大切な感情ー心と体、風景までもがひとつになって癒される13篇を収録。
妹の死。頭を打ち、失った私の記憶。弟に訪れる不思議なきざし。そして妹の恋人との恋ー。流されそうになる出来事の中で、かつての自分を取り戻せないまま高知に旅をし、さらにはサイパンへ。旅の時間を過ごしながら「半分死んでいる」私はすべてをみつめ、全身で生きることを、幸福を、感じとっていく。懐かしく、いとおしい金色の物語。吉本ばななの記念碑的長編。
サイパンの心地よい生活、そして霊的な体験。親しんだバイトとの別れ。新しいバイトの始まり。記憶は戻り、恋人は帰国し、弟は家を出る。そして新たな友人たちとの出会いー。生と死、出会いと別れ、幸福と孤独、その両極とその間で揺れ動く人々を、日々の瞬間瞬間にみつけるきらめきを、美しさを、力強く繊細に描き出した、懐かしく、いとおしい金色の物語。定本決定版。
複雑な家庭環境の中、これまで会わずに育った「兄妹」が出会った瞬間から恋を育むー。互いに愛する人を失った男女が出会い、やがて何かに導かれるようにして寄り添ってゆくー。運命的な出会いと恋、そこから生まれる希望や光を、瑞々しく、静謐に描き、せつなさとかなしい甘さが心をうつ珠玉の中編二作品。明るさのさしこむ未来を祈る物語。定本決定版。
唯一の肉親であった祖母を亡くし、祖母と仲の良かった雄一とその母(実は父親)の家に同居することになったみかげ。日々の暮らしの中、何気ない二人の優しさに彼女は孤独な心を和ませていくのだが……。
主婦のジュンコは、眠る大切なマリカを見つめて機中にいた。多重人格のマリカの願いはバリ島へ行くこと。新たな祈りと魂の輝きにみちた小説に、著者が訪れたバリで発見した神秘を綴る傑作紀行を併録。
私の衝動的なプロポーズに対して、長い沈黙の後とかげはこう言った。「秘密があるの」-。幼い頃遭遇したある事件がもとで、長い間目の見えなかったことのあるとかげ。そのとかげにどうしようもなく惹かれてゆく私。心に刻まれた痛みを抱えながら生きてきたカップルの再生の物語「とかげ」。運命的な出会いと別れの中に、ゆるやかな癒しの時間が流れる6編のショート・ストーリー。