著者 : 吉村達也
奈緒美は十歳年上の町田雄一と結婚した。自分は初婚だが、彼は四年前に離婚歴がある。その理由はきかなかったが、夫は優しく、新婚生活は幸せだった。が、あるとき雄一の手帳に「セカンド・ワイフ」という謎めいた言葉が書いてあるのを発見。それは奈緒美のことか、別の女の意味か?急に夫の過去に不安を抱いた奈緒美は、彼の前妻に会おうとする。衝撃的な事実に直面するとも知らないで…。
第一印象は抜群だった。由美が出会った蔭山雄二は彼女の理想像。彼との新婚生活は幸せに満ちていた。が、一本の長い髪をきっかけに暗転。夫の下着に付いたそれに浮気の予感を抱いた由美は、彼の部屋を調べる。だが、見つけたのは毛根まで付いた髪の毛の束!凍りついた由美は昔の恋人にSOSを…。
総務部人事課係長の石原滋が一目惚れした十一歳年下の妻瀬里は、フランス人形の如き美しさ。だが、表情に乏しく、夫との肉体的接触を嫌った。子供を作るときでさえも。耐えかねた滋は、部下の高田千絵と浮気をするが、それを察知した瀬里は、自殺騒動を起こし「別れてください」と懇願する。しかし、妻の行動に激怒した滋は、離婚を断固拒絶して自室に引きこもり、家庭内別居で対抗する…。
角丸真理子は父の反対を押し切って、屋敷芳樹と結婚した。小野和人という恋人をふっての決断だった。しかし、新婚生活のスタートとともに地獄ははじまった。言葉の暴力ーそれも叱責や罵倒ではなく、やさしい皮肉。真理子の神経を柔らかく包み込むように、夫の言葉が鼓膜から脳髄へと侵入していく。精神の限界に到達した真理子は、ついに決断した。「やさしく殺して…」。
桐島尚紀は、恋人玲美との結婚を翌月に控えたある日、交通事故に遭い、右腕右脚骨折の重傷を負って渋谷ホスピタルに入院した。病室番号は109。ある夜更け、尚紀はベッドの傍らに忽然と現れた謎の原色ナースに驚かされる。その名は「あじゃ」。彼女は人よりも三十日先を生きていると語り、たったいま尚紀が死ぬのを見てきたところ、と言う。つまり、彼の命は残り三十日。突然のカウントダウンに混乱する尚紀が迎える結末に、あなたは泣いてしまうかもしれない…。
夢二の絵の女に恋した男が祇園を訪れ悲劇の幕は開いた。多重人格、自分恐怖症、異常な愛欲日記、妊娠中絶。同期入社の男二人と女三人の仲間は各々恐るべき素顔を!古都を恐怖の舞台にかえる衝撃作。
その部屋には第三者がいたのか、いなかったのか。朝比奈耕作の前に新たな密室の難問が立ちはだかった。強風吹き荒れる夜、マンションの五階から『天井桟敷の貴婦人』と呼ばれる美女が転落死。直後に、どこからともなくドライフラワーの花束が降ってきた。五階の部屋は無人の密室。だが、誰かがいた可能性が消せない。現実離れした服装で観劇に現れ、客席で奇妙な独り言をつぶやく美しき奇人の悲劇を調査する朝比奈は、巧妙な死の罠を解く。しかし、その直後に思いもよらぬ戦慄の結末が…。「軽くてヘビーな」推理小説。
雷鳴轟く京の都を高台から見下ろすひとりの人物-その手には、完成年代及び著者ともに不詳の悪魔の書『陰陽大観』が携えられていた。その冒頭の一行は、“魔界は天に在らず、地に在らず、人の心に在り”。人の心に悪魔を運ぶことを使命と信じ、殺人者を生み出す快感に最大の生きがいを覚える狂気の伝道師QAZ。謎のコードネームを持つ人物が仕掛けた第一の大罪は、京都魔界伝説の地を舞台に、前代未聞のバラバラ殺人。人間の左手とぬいぐるみのサルの左手が、同じ場所から見つかった!悪魔の挑戦を受けて立つのは、東京から京都へ活動拠点を移したばかりの精神分析医・氷室想介。作者ライフワークの全百巻シリーズがいま始まった。
花咲村の惨劇を彷彿とさせる桜吹雪に彩られた殺人劇が、またも朝比奈耕作を襲った。月光に照らされた雪景色の中で眺める満開の夜桜-雪・月・花の三要素が揃ったとき、吉野の山の蔵王堂に惨劇が起こる。不気味な殺人予告状で標的にされたのが、地元の名士・井筒屋義信が誇りとする美しい三人の娘、雪絵・月絵・花絵。闇に響く法螺貝の音とともに、異様な美意識に彩られた連続殺人の幕が切って落とされた。朝比奈耕作、待望の新シリーズ『四季の殺人』第一弾。
地底の病院探検を敢行した里見捜査官と立松刑事は、時の杜の真下に壮大な秘密が仕掛けられていることに気づきはじめる。しかし、その一方で連続殺人は止まらない。不潔恐怖症の女、謎めいた言葉を繰り返す美少女、スピード狂の高校教師、七五調で喋るクラブ支配人、不可解な行動をとるオカマ歌手、禁断の御神体を知る老婆。疑い出せばキリがない容疑者だらけの状況で、こんどはまさかと思われる人物が撃ち殺された。
森には神が棲んでいる、しかし悪魔も棲んでいるー早川家の老母歌子は、時の杜地区一帯に仕掛けられた壮大なスケールの陰謀を示唆する。その一方で、これまで変人を装ってきた住人たちが、その意外な素顔を続々と表わしはじめた。いったい誰が味方で、誰が敵なのか。混乱する里見捜査官をよそに、一色舞子を刺し殺した犯人の正体がついに明らかにされた!だがそれでもなお、惨劇はその幕を下ろさなかった…。
果てることなき連続殺人の真相をなんとか解き明かそうとする里見捜査官は、犯人に襲われて重傷を負った精神科医鰐淵吾郎から、時の杜地区に秘められた驚くべき秘密を聞き出すことに成功する。地下に御神体を祀り、独自の哲学によって新しい社会を築こうとする姫神教信者たち。その教義は、現代日本の常識を根底から覆すものだった!だが、真犯人逮捕を目指し地下神殿に突入した里見を待ち受けていたのは…最後の悲劇。
森の奥で刺し殺された一色舞子の遺体状況から、里見捜査官は犯人が左利きではないかと疑う。だが、捜査の進捗をみないうちに、こんどはFM局の人気DJ日向基樹が放送中に射殺された。しかも目撃された犯人は身体が人間で顔は鹿!異形の殺人鬼は「時の杜」地区に住む誰かと思われたが、奇人ばかりのこの町では、みんながみんなウソをつき、犯人像は全く絞れない。そしてついに連続殺人の犠牲者は捜査陣の中からも出た。
わずか三日で四件の殺人事件が発生した高原の町「時の杜」。県警本部から鯨岡警視も応援に駆けつけ懸命の捜査にあたる中、最初の犠牲者となった一色舞子の父が経営する新聞社に一通のFAXが届いた。文面は「私は犯人を見ています」!一方里見捜査官は、時の杜地区の地下に巨大な都市構造が存在するのではないかという疑念を抱き、実地調査に乗り出した。読み返す手間がはぶけて便利な1&2巻のダイジェスト付き。
森と湖に囲まれた不思議な町「時の杜」。外部と隔絶された奇妙な異次元世界の森の奥で、女子高生・一色舞子が殺された。県警本部から現場へと急行した里見譲捜査官がそこで見たものは、スギの巨木に埋め込まれ、カチカチと静かに時を刻む謎の柱時計。死体の直腸温にフェチを感じる病院長の内村英太郎。捜査を露骨に妨害する地元巡査。奇怪な人間模様の中で起こったその殺人は、神をも恐れぬ壮大な陰謀の序章にすぎなかった。
精神分析医・氷室想介のもとに、奇妙な不安を訴える女性が訪れた。自分には不釣り合いなほどハンサムな男から求愛され、幸せすぎて恐ろしいというのだ。彼女が男から見せられた不思議なトランプ魔術。その裏に秘められた身の毛もよだつ残虐趣味を氷室は見抜いた(『マグネット・ラヴ』)。-魔女が操る水晶玉を通して覗く、人間世界の歪んだ恐怖を描く吉村達也推理短編集。
傍若無人・傲岸不遜・厚顔無恥-そうした悪評をものともせず、己の利益追求のみに血道を上げてきた長崎出身の代議士立浪辰之輔。彼の愛人が都内の超豪華マンションで刺し殺された。その枕元にはミニチュアの鐘。つづいて辰之輔の弟が長崎県五島列島の福江島で惨殺。そして死体の脇にはやはり鐘。殺意の輪が自分めがけて絞り込まれてきたことに恐怖を覚えた辰之輔は、推理作家の朝比奈耕作に謎解きを依頼する。一方、事件を取材する女性記者の片倉文恵に奇妙な手紙が届いた。文面は『連続殺人の原因は、あなたにある』。