著者 : 垣根涼介
上洛した織田信長に呼び出された明智光秀は、とある任務を下される。数の信奉者である信長は、敵対する大名の財力を把握する必要があった。中でも武田と毛利の資金源である湯之奥金山と石見銀山の見定めは不可欠である。ただし、そのためには敵地の中枢に潜り込み、金銀の産出量を示した台帳を確認しなくてはならない。見つかれば命の保証はない危険な道中である。光秀は盟友の新九郎と愚息を伴って隠密裏に甲州へ向かう。駿河湾の田子の浦に辿り着いた三人は、そこで土屋十兵衛長安と名乗る奇天烈な男に出会いー。金と銀、その真価を問う。
第169回直木三十五賞受賞作 やる気なし 使命感なし 執着なし なぜこんな人間が天下を獲れてしまったのか? 動乱前夜、北条家の独裁政権が続いて、鎌倉府の信用は地に堕ちていた。 足利直義は、怠惰な兄・尊氏を常に励まし、幕府の粛清から足利家を守ろうとする。やがて後醍醐天皇から北条家討伐の勅命が下り、一族を挙げて反旗を翻した。 一方、足利家の重臣・高師直は倒幕後、朝廷の世が来たことに愕然とする。後醍醐天皇には、武士に政権を委ねるつもりなどなかったのだ。怒り狂う直義と共に、尊氏を抜きにして新生幕府の樹立を画策し始める。 混迷する時代に、尊氏のような意志を欠いた人間が、何度も失脚の窮地に立たされながらも権力の頂点へと登り詰められたのはなぜか? 幕府の祖でありながら、謎に包まれた初代将軍・足利尊氏の秘密を解き明かす歴史群像劇。
血に束縛され、戦国史上最悪と呼ばれた男の素顔とは。豪商・阿部善定は、没落した宇喜多家一家を引き取る決意をする。幼い八郎の中に非凡さを見い出したが故である。やがて宇喜多家を再興し、荒れた備前南部に再びの安寧を与えてくれるのでは、と期待を寄せた。町家で育った八郎は孤独な内省の中で、商いの重要性に早くから気付く。武門の子でありながら、町や商人の暮らしに強く惹かれる。が、青年期に差し掛かる頃、町で出会った年上の女性・紗代と深く関わり合うことで、自身の血に流れる宿命を再確認する。-八郎は、やがて武将・宇喜多直家となる。
宇喜多家の存続のためには、どんなことでもする。親族はおろか我が死でさえも、交渉の切り札に使う。世間でいう武士道などは、犬にでも呉れてやる。直家は宇喜多家を再興し、石山城(岡山城)を国内商業の拠点と定める。同時に、近隣の浦上・三村と激しくつばぜり合いをくり返し、彼らの背後にいる巨大勢力の毛利・織田の狭間で、神経を磨り減らしながら戦い続ける。直家の生来の気弱さを知る、妻のお福。生涯の恩人となった商人・阿部善定。旧縁である黒田満隆と官兵衛の親子。直家が武士に取り立てた商人・小西行長…様々な人との関わりの中から、直家は世の理(ことわり)に気付いていく。-人の縁で、世は永劫に回り続けていく。
応仁の乱前夜。天涯孤独の少年、才蔵は骨皮道賢に見込まれる。道賢はならず者の頭目でありながら、幕府から市中警護役を任される素性の知れぬ男。やがて才蔵は、蓮田兵衛に預けられる。兵衛もまた、百姓の信頼を集め、秩序に縛られず生きる浮浪の徒。二人から世を教えられ、凄絶な棒術修業の果て、才蔵は生きる力を身に着けていく。史実を鮮やかに跳躍させ混沌の時代を描き切る、記念碑的歴史小説。
唐崎の古老のもと、過酷な鍛錬を積んだ才蔵は、圧倒的な棒術で荒くれ者らを次々倒す兵法者になる。一方、民たちを束ね一揆を謀る兵衛は、敵対する立場となる幕府側の道賢に密約を持ちかける。かつて道賢を愛し、今は兵衛の情婦である遊女の芳王子は、二人の行く末を案じていた。そして、ついに蜂起の日はやってきた。時代を向こうに回した無頼たちの運命に胸が熱くなる、大胆不敵な歴史巨編。
吉法師は母の愛情に恵まれず、いつも独り外で遊んでいた。長じて信長となった彼は、破竹の勢いで織田家の勢力を広げてゆく。だが、信長には幼少期から不思議に思い、苛立っていることがあったーどんなに兵団を鍛え上げても、能力を落とす者が必ず出てくる。そんな中、蟻の行列を見かけた信長は、ある試みを行う。結果、恐れていたことが実証された。神仏などいるはずもないが、確かに“この世を支配する何事かの原理”は存在する。やがて案の定、家臣で働きが鈍る者、織田家を裏切る者までが続出し始める。天下統一を目前にして、信長は改めて気づいた。いま最も良い働きを見せる羽柴秀吉、明智光秀、丹羽長秀、柴田勝家、滝川一益。あの法則によれば、最後にはこの五人からも一人、おれを裏切る者が出るはずだー。
フィジー人、インド人、日本人、中国人…。雑多な人種が陽気に暮らす南国の楽園・フィジー。そんな日常をクーデターが一変させてしまう。観光業が一気に傾斜して国全体が不穏になっていく中、浮き彫りになる民族的な価値観の対立。それは次第に衝突の気配を孕み出してー。幸せの意味を問い続ける著者、渾身の長篇小説。
【話題沸騰 『信長の原理』 の姉妹編!】 明智光秀はなぜ瞬く間に出世し、信長と相前後して滅びたのかーー。 厳然たる「定理」が解き明かす、乱世と人間の本質。 各界絶賛の全く新しい歴史小説、ここに誕生! 永禄3(1560)年の京。 牢人中の明智光秀は、若き兵法者の新九郎、辻博打を行う破戒僧・愚息と運命の出会いを果たす。 光秀は幕臣となった後も二人と交流を続ける。やがて織田信長に仕えた光秀は、初陣で長光寺城攻めを命じられた。 敵の戦略に焦る中、愚息が得意とした「四つの椀」の博打を思い出すがーー。 何故、人は必死に生きながらも、滅びゆく者と生き延びる者に分かれるのか。 革命的歴史小説、待望の文庫化! 解説・篠田節子
「会社を辞めて、これからどうするつもりなんですか?」リストラ面接官として村上真介が今回対峙するのはー鼻っ柱の強い美容部員、台湾に身売りした家電メーカーのエース研究員、ペースを狂わせる不思議ちゃん書店員。そして最後にクビを切られるのは、なんと真介自身!?変わりゆく時代を見据え、働くこと=生きることの意義を探す人々を応援する人気シリーズ、旅立ちの全四話。
ならず者の頭目・骨皮道賢は幕府に食い込み、洛中の治安維持を任されていたが、密かに土倉を襲撃する。浮浪の首魁・蓮田兵衛は、土倉で生き残った小僧に兵法者への道を歩ませ、各地で民百姓を糾合した。肝胆相照らし、似通った野望を抱くふたり。その名を歴史に刻む企てが、奔り出していた。動乱の都を駆ける三人の男と京洛一の女。超絶クールな熱き肖像。
太刀川要が深夜に遭遇した異様な大きさの黒犬は、半死半生の状態だった。動物病院へ駆け込むと、不可解なことに判別不能の犬種で獣医も戸惑うばかり。やがて始まった共同生活は、かたくなに孤独を貫く男の見慣れた風景を変えていく。そして湧き起こる、ある疑惑の真相とはー。ジョンの眼差しを通じて見つめる人の営み、滑稽さ、哀しみ。淡く胸に迫る大人のファンタジー。
リストラ面接官・村上真介の今度の相手は、航空会社の勝ち組CA、楽器メーカーでくすぶる元バンドマン、ファミレスの超優秀店長、おまけに、破綻した証券会社のOBたち。企業ブランドも価値観も揺らぐ時代、あなたは明日をどう生きる?全ての働き人たちにパワーを届ける、人気お仕事小説第4弾!
一時代を築いた優良企業にも、容赦なく不況が襲いかかる。リストラ請負人・村上真介のターゲットは、大手家電メーカー、老舗化粧品ブランド、地域密着型の書店チェーン…そして、ついには真介自身!?逆境の中でこそ見えてくる仕事の価値、働く意味を問い、絶大な支持を得る人気シリーズ、堂々完結。
渋谷のチーム「雅」を解散して3年。カオルは東大生となり、アキは裏金強奪のプロとしてそれぞれ別の道を歩み始めていた。ところが、ファイトパーティを模したイベントを見たという級友の話を聞き、カオルは愕然とする。あろうことか主催者は「雅」の名を騙っていたのだ。過去の発覚を恐れたカオルはアキに接触するが…。
渋谷でのあの事件から3年。チームを解散し、別の道を歩み始めていたアキとカオル。ところがある日、カオルは級友の慎一郎が見に行ったイベントの話を聞いて愕然とする。それはファイトパーティーを模したもので、あろうことか主催者は“雅”の名を騙っていたのだ。自分たちの過去が暴かれることを恐れ、カオルはアキに接触するがー。
渋谷のチーム「雅」の頭、アキは、チーム解散後、海外放浪を経て、裏金強奪のプロ、柿沢と桃井に誘われ、その一員に加わる。二人は、あらゆるテクニックをアキに教え込み、アキも持ち前の勘の良さで、課題をクリアしてゆく。はたして、アキのデビューはうまくゆくのか?「ヒートアイランド」の続篇となる痛快クライムノベル。
陽気で大柄、機嫌悪くなるのは空腹時と眠い時、そんな典型的フィジー人とつきあう茜。良昭は店の従業員に「お客様の料理を食べてはいけません」と教えなくてはならない。ここは独特の文化と時間が流れる楽園なのだ。しかし、若者たちのすれ違い、住民の対立、暴動が彼らの人生を変えていく。幸せとは何か。
その地に着いた時から、地獄が始まったー。1961年、日本政府の募集でブラジルに渡った衛藤。だが入植地は密林で、移民らは病で次々と命を落とした。絶望と貧困の長い放浪生活の末、身を立てた衛藤はかつての入植地に戻る。そこには仲間の幼い息子、ケイが一人残されていた。そして現代の東京。ケイと仲間たちは政府の裏切りへの復讐計画を実行に移す!歴史の闇を暴く傑作小説。