著者 : 大野芳
ペトログラード、ヘルシンキ、ハルビン、上海、そして日本へ。母と妹の手を引いて、苛酷な運命にひとり立ち向かったエリアナ・パブロバ。彼女には二つの武器があった。その類稀れな美貌と、驚嘆すべきバレエの才能。彼女はこの武器で危機を脱し、日本バレエ界を導く星となった。しかし-忍び寄る軍靴の足音と共に思いもよらぬ運命が彼女を待ちうけていた…。わが国バレエ界の礎となったロシア貴族、その美しき流転の軌跡。
太平洋戦争末期、南海の孤島アナタハンに取り残された33人。米軍の爆撃が熄んだのちも、大日本帝国の不敗を信じて米軍への投降を拒み続け、七年と十八日間。当初は軍人の指揮のもとに結束していた男たちも、自給自足の生活を強いられ、互いに離反してゆく。そして何よりも、唯一の女性の存在が、32人を根底から揺さぶり始めた。夜もおちおち眠れぬ愛憎の疑心暗鬼。闇の中で誤解と深読みがぶつかり合い、死体がひとつ、またひとつ…。32対1の女の凄絶サバイバル。
「壮烈な撃墜死」は軍部の捏造だった。戦史をリアルに覆す実録小説。海軍の高官と思しきその男は、乗機が墜落したあとも、しばらく生きていたものと推測された。致命傷は、敵機の機銃でなく、自らの手によるものらしかった。しかし軍医は、事実をありのままに記し止めることを禁じられ、目撃者たちは最前線に赴かされて次々と戦死していった…。真珠湾の英雄を、あくまで英雄として葬るために、自決は伏せられ、また伏せられるために多くの血が流れた…。綿密な史料を駆使してブーゲンビル島秘話を再現する、大作ノンフィクションノベル。
昭和十九年十月、戦力の大半を喪った日本は、総力を結集してレイテに殺到した。折しも特攻隊が初陣を飾り、滅びのメロディが戦場を蔽いつくした…。多大の犠牲を払った囮作戦が用意した大和の決戦場。しかし不沈戦艦は、ある理由で巨体を翻した…。特攻とレイテの真相を探る戦史小説大作。
ロスの田所葬儀所につとめる神奈柊二は、ある日、同じ宿の住人、星川金吾に死後のエンバーミング(遺体整復)を頼まれる。金吾は日系二世の老人で、柊二の恋人メアリーに食事の世話をしてもらっていた。ところが、数日後、金吾は謎の死をとげる。葬儀の準備のため、金吾の別れた妻や親友を訪ねるうちに、柊二の前に死者の重い過去が次第に明らかにされてくる…。