著者 : 安藤哲行
猛り狂った、途方もない生、そして死者たち、そして蝿。溢れでる声と言葉が交錯するめくるめく小説世界。救いのない貧困、安らぎのない家族…、バティスタ独裁政権末期、カストロの武装蜂起を時代背景に、思春期をおくる青年フォルトゥナートの生の苦難と魂の叫びを描いて、『夜明け前のセレスティーノ』に続く、ライフワーク第二作。
母親は井戸に飛び込み、祖父は自分を殺そうとする。寒村に生きる少年の目に鮮やかに映しだされる、現実と未分化なもう一つの世界。ラテンアメリカ文学の魔術的空間に、少年期の幻想と悲痛な叫びが炸裂する!『めくるめく世界』『夜になるまえに』のアレナスが、さまざまな手法を駆使して作り出した奇跡の傑作。
家の前に母親と住む汚い子供、酒浸りの高校時代、幽霊屋敷、子供と小動物の殺し屋、通りで見つけた頭蓋骨、鎖で脚をつながれた子供、黒い水から生まれた奇形児たち、「燃える女たち」の反乱…。読み進めるうちに、底知れぬ恐怖に満ちた現実に囚われていく。ラテンアメリカ新世代の“ホラー・プリンセス”が作りだす濃密なゴシックワールド。
アインシュタイン、フォン・ノイマン、ゲーデル、ハイゼンベルク、シュレーディンガー…実在するノーベル賞級科学者たちが織りなすタピスリー。ヒトラー暗殺計画、不確定性原理、ナチスの核開発、ゲーム理論、聖杯伝説など、政治と科学と愛と欲望が入り乱れる。ラテンアメリカ新世代の旗手による最高傑作、ついに刊行!!
一番小さくあれば大きくもある、そのうえ、けっして抜けだしえない、〈心〉という迷宮。この迷宮から抜けだそうとする主人公の旅の行方は?ポレミックな美術批評を展開しつつ、文学においても特異な世界を創造した、急逝惜しまれるマルタ・トラーバの傑作。
「わたしがメキシコの石壁を背に立たされて蜂の巣にされたという話を聞くことになったら、思い出してほしい。それはこの世とおさらばするには願ってもない方法だとわたしが考えていたことを。それは、老衰や病死、地下室の階段での転落死にまさる。メキシコで異邦人であること-ああ、それは安楽死だ!」不可思議な手紙を最後に、メキシコ革命の戦塵の中に消息を絶ったアンブローズ・ビアス。その謎の最期を、アメリカ人女性、メキシコ革命軍士官との愛憎のなかに、事実と虚構を混然とさせながら描く。ジェーン・フォンダ、グレゴリー・ペック主演映画原作。