著者 : 小島環
かつては黄金の治世と呼ばれながらも、今は侵略と動乱に揺れる大陸。「彗星王」として名を馳せていた義賊の王義英と相棒の黒猫・夜風は、裕福な者たちの屋敷に忍び込んでは財産を盗みだし、暮らしに苦しむ民たちに配っていた。しかし、ある日、企てに嵌まってしまい逃れるために船に乗りこむことになった。その船には赤髪・碧眼の女性アナスタシアも乗っていた。彼女が暴漢に襲われたところを救った義英。聞けば、アナスタシアは島国である天神島の領主になりにいくという。しかし島は、領主不在の間に権力者二人によって島内を二分する争いが起きかねない状態だった。島の無辜の民たちのため、アナスタシアの補佐を買って出る義英だったが、次々に島内で起こる事件の数々に巻き込まれていくー。義賊と領主、二人が織りなす、清朝中国を舞台にした、歴史ファンタジー!
魯国の有力者の息子・盤は、年末のお祭り騒ぎのなか、かつての許嫁イチに呼び出される。二人は様々な発明品を作ることに夢中になり、お互いの才能を認め合ってもいた。盤の父親がイチの才能に目をつけ、自らの夫人としてしまったため、本来は二人きりで会うことは決して許されない。束の間、甘く苦い時を味わっていたそのとき、盤の家の方から煙が昇り、大量の火矢が射られているのを発見する。盤は家へ急ぐ。イチにもどうするか問いかけるが、すでにそこにはイチはいなかったー。この日を境に運命の歯車は大きく狂い、盤とイチの愛と憎しみの物語が始まる。
春秋後期の中国。十五歳の小旋風は、家業の盗掘を手伝わされていたが、事故で養父と死別。その際に発見した華麗な琴を高く売って新生活の糧にしようと思いつくのだったが、その琴のせいで幽鬼のような謎の女性に追い回されることになるー。少年の夢と野心の行方に手に汗握る第9回小説現代長編新人賞受賞作。
春秋後期の衛国。小柄な十五歳の少年・小旋風は、盗掘を生業とする養父に育てられた。彼は盗掘の最中、生きているようにしか見えない、数百年前の少女の亡骸を発見する。彼女は伝説の楽器と思われる、華麗な琴とともにあった。その直後、落盤事故がー。小旋風は自分の唯一の武器である言葉を使って琴を売り、大金を手に入れようと決意する。第9回小説現代長編新人賞受賞作。