著者 : 小川高義
ルーシー・バートンと元夫のウィリアムは、離婚してからも穏やかな付き合いを続けていた。ある日、亡き母の秘密を知って動揺するウィリアムに助けを求められ、ふたりは短い旅に出る。家族という、時に厄介で時にいとおしい存在は何なのか。結婚とは、人を知るとは何なのか。静かな感慨に満ちたブッカー賞最終候補作。
1972年末、英国コーンウォールの灯台から3人の灯台守が忽然と姿を消したー。灯台は内側から施錠され、食事も手つかずのままであった。8週間の任務、狭いベッド、夫婦の距離…。孤絶したコミュニティの中で、灯台守とその妻たちに何が起きていたのか?事件から20年後、ひとりの作家が関係者への取材を始めた。残された家族のひとりひとりが光として抱えてきた思いが、未解決事件の謎を解き明かす。
ボルティモア郊外で、コンピューターの便利屋をしながら独り暮らす43歳のマイカ・モーティマー。人付き合いの少ない彼は、毎朝7:15になるとランニングに出かけ、その後シャワー、朝食、掃除…というように決まった日課を守って毎日を過ごしている。そんなある日、マイカの息子だと名乗る青年が彼の元を訪れる。さらに、恋仲の女性には、とあるすれ違いで別れを告げられー。予想外の出来事が続き、日常のテンポがズレ始めたマイカの行き着く先とは。アン・タイラーらしいユーモラスで滋味深い仕掛けが光る、2020年ブッカー賞候補作。
ヘンリー・ダンバーはテレビ局や新聞社を傘下に収めるメディア王。だが、会社の乗っとりを企む娘たちの陰謀で秘密裡に英カンブリアの療養所に入れられ、クスリを盛られて意識混濁状態に。家業に興味を抱かなかったことが原因で勘当された末娘フロレンスだけが、父の身を案じ、捜索にのりだすが…。父親から虐待を受け、クスリと酒に溺れた過去を持つ作者が、慢心の果てに真実を見誤り、娘たちに裏切られる、強烈で横暴な父親「リア王」をリトールド。
怒りっぽく皮肉屋、しかし唖然とするほど正直で、たまに驚くほどあたたかいー。そんなオリーヴ・キタリッジと、小さな港町クロズビーの人々の日々を描く。父を亡くした少女がその事実と折り合いをつけようとする「清掃」、遺産相続の手続きのため帰郷した女性と、年配の弁護士が互いにひそやかな慰めを見出す「救われる」、夫婦の日々の浮き沈みを繊細に描いた「ペディキュア」など、13篇を収録。ピュリッツァー賞を受賞した『オリーヴ・キタリッジの生活』、11年ぶりの続篇にあたる連作短篇集。
「早熟の天才」はこうして誕生した。グレニッチ高校の文芸誌に掲載された7作を含む、思春期から二十代はじめにかけて執筆された未発表作品14篇をセレクト。出自を隠して白人学校に通う少女、死を目前にした孤独な老婆ー社会の外縁に住まう者たちに共感を寄せ、明晰な文章に磨きをかけていく。若き作家の輝きに触れる貴重な短篇集。
アメリカ中西部にある町、アムギャッシュ。さびれたこの町を出た者もいれば、そこでずっと暮らしている者もいる。火事で財産を失った男性が神に思いを馳せる「標識」。都会に出て有名作家になった女性と、故郷に暮らす兄との再会を描く「妹」。16歳のときに家を出た女性が実家の真実に直面する、O・ヘンリー賞受賞作「雪で見えない」。家族という存在、人と人との出会いに宿る苦しみと希望を描く9篇を収録。ストーリー賞受賞作。
月旅行を目指す高校時代からの四人組。西部戦線からの帰還兵のクリスマス。変わり者の億万長者とその忠実な秘書。男と別れたばかりの女がつい買ったタイプライター。離婚した父母のあいだをゆききする少年。内戦で祖国を追われ、ニューヨークに上陸した移民。ボウリングでパーフェクトスコアを出し続け、セレブに上り詰めた男ー。世界が驚いた、小説家トム・ハンクスのデビュー作。良きアメリカの優しさとユーモアにあふれ、人生のひとコマをオムニバス映画のシーンのように紡いだ、17の物語。
イギリス郊外に静かに佇む古い貴族屋敷に、両親と死別し身を寄せている眉目秀麗な兄と妹。物語の語り手である若い女「私」は二人の伯父に家庭教師として雇われた。私は兄妹を悪の世界に引きずりこもうとする幽霊を目撃するのだが、幽霊はほかの誰にも見られることがない。本当に幽霊は存在するのか?私こそ幽霊なのではないのか?精緻で耽美な謎が謎を呼ぶ、現代のホラー小説の先駆的な名著。Star Classics名作新訳コレクション。
ルーシー・バートンの入院は、予想外に長引いていた。幼い娘たちや夫に会えないのがつらかった。そんなとき、思いがけず母が田舎から出てきて、彼女を見舞うー。疎遠だった母と他愛ない会話を交わした五日間。それはルーシーにとって忘れがたい思い出となる。ピュリッツァー賞受賞作『オリーヴ・キタリッジの生活』の著者が描く、ある家族の物語。ニューヨーク・タイムズ・ベストセラー。
同じ飛行機に乗りあわせたサッカー選手からのデートの誘い。疎遠になっていた幼馴染からの二十年ぶりの連絡。アメリカ人に嫁いだ娘と再会する母親。最愛の妻と死別した祖父の思い出話ー。かつて強制収容所が置かれたロシア極東の町マガダンで、長くこの地に暮らしてきた家族と、流れ着いた芸術家や元囚人たちの人生が交差する。温かな眼差しと、煌めく細部の描写。米国で注目を集める女性作家による、清新なデビュー短篇集。
陰鬱な屋敷に旧友を訪ねた私。神経を病んで衰弱した友と過ごすうち、恐るべき事件は起こる…。ゴシックホラーの名作「アッシャー家の崩壊」、名探偵デュパンの類稀な洞察力が発揮される「盗まれた手紙」、暗号解読と宝探しが痛快な「黄金虫」など、ポーの代表的短篇7篇と詩2篇を収録。
「あれが最後ね。てっきり夜中に落ちるんだろうと思った。風の音がしてたから。きょうには落ちるでしょうね。そのときに、あたしも死ぬわ」老画家が命がけで彼女に贈った希望とは。表題作のほか、「感謝祭の二人の紳士」「芝居は人生だ」「金のかかる恋人」など、O・ヘンリーの名作短篇14篇を新訳。ニューヨーカーたちの魂をふるわせ、優しく暖め、温かく笑わせた選り抜きの物語たち。
デラはおんぼろカウチに身を投げて泣いていた。明日はクリスマスというのに手元にはわずか1ドル87セント。これでは愛する夫ジムに何の贈りものもできない。デラは苦肉の策を思いつき実行するが、ジムもまた、妻のために一大決心をしていたー。若い夫婦のすれ違いが招いた奇跡を描く表題作ほか、ユーモラスな「赤い酋長の身代金」「千ドル」など、選り抜きの傑作を集めた新訳版。Star Classics名作新訳コレクション。
数カ月続く不漁のために周囲から同情の視線を向けられながら、独りで舟を出し、獲物がかかるのを待つ老サンチャゴ。やがて巨大なカジキが仕掛けに食らいつき、三日にわたる壮絶な闘いが始まる…。決して屈服しない男の力強い姿と哀愁を描く、ヘミングウェイ文学の最高傑作。
カルカッタ郊外に育った仲睦まじい年子の兄弟。だが過激な革命運動に身を投じた弟は、両親と身重の妻の眼前、自宅近くの低湿地で射殺される。報せを聞いて留学先のアメリカからもどった兄は、遺された妻をカルカッタから連れだすことを決意する。喪失を抱えた男女はアメリカで新しい家族として歩みだすが、やがて女は、小さな娘と新しい夫を残し、行方も告げず家を出るー。
息子が事件を起こした、助けてほしいー妹からの電話をきっかけにニューヨークに住む兄弟は久しぶりに帰郷する。それは家族との絆さえ揺り動かす一年の始まりだった。『オリーヴ・キタリッジの生活』でピュリッツァー賞を受賞した著者が描く、ある家族の物語。
女の誘いは決して断らないモテモテのテレビ記者、パトリック・ウォーリングフォード。インドでサーカスの取材中、ライオンに左手を食われてしまう。5年後、手の提供者が現れ、移植のチャンスに舞い上がるパトリック。だが、手の元持ち主の妻ドリスが「手の面会権」を主張し、会いに来てー。希代の色男と一世一代の決意を秘めた女の運命的な恋を描く、ロマンティック・コメディ。