著者 : 小林宏明
貧困と政情不安にあえぐ中米の小国ニカラグアでは、首都を取り巻くジャングル地帯で親米ゲリラが現体制打倒のチャンスをうかがっていた。米政府はゲリラに武器と資金の援助をおこなっていたが、議会はそれ以上の積極的介入を許さなかった。そこで大統領は直属の補佐官に、泥沼化した事態の打開を命じた。野心家のこの補佐官はCIA支局長と連絡を取り、ゲリラの基地にのりこむが…。
いまや事態は急速に悪化していた。パーティに集まったニカラグアの閣僚たちがゲリラに虐殺される一方、米軍輸送ヘリが何者かに撃墜されて16名のアメリカ兵が死亡した。米国の世論は米軍の全面的軍事介入を要求しはじめた。ニュー・ワールド通信者の記者クリス・イートンただひとりが一連の事件に不審を抱いて調べはじめるが、すでに空母エンタープライズに攻撃の指令は発せられた。
ロス市内で3人組による銀行強盗事件が続けざまに起きた。犯人は各銀行を入念に下調べし、不倫進行中の支店長に狙いをつけると、その愛人を人質にとるという手口だった…。停職処分中のロス市警部長刑事ロイド・ホプキンズは上司に呼ばれ、処分がとけると同時にこの強盗事件の担当を命じられた。ただし、職場はFBIロサンジェルス支部銀行強盗課への出向だった。調査を開始したホプキンズは、犯人たちに“知性”を嗅ぎ取った。と同時に彼はこの一件が自分の最後の仕事になると思っていた。市警の上層部が彼を切りたがっていたのだ。そして、市警内の宿敵である上司との最終的対決も予感していた。『血まみれの月』『ホプキンズの夜』に続くホプキンズ・シリーズ第3弾。
深夜のハーレム地区で警官が指名手配中の殺人容疑者を射殺した。事件は単純な正当防衛と思われたが、“Q&A”(尋問調書)をとるよう命じられた地方検事補ライリーはかすかな疑惑を抱く。やがて彼が知った、検事局全体を揺るがす忌わしき事実とは?汚職、犯罪、人種差別…ニューヨーク市警の実態を活写した傑作社会派サスペンス!
第二次大戦直後、ドイツの秘宝を手に元ナチス将校がアメリカに潜入した。ドイツ空軍元帥ゲーリングの逃亡ルートを拓くことが目的らしい。米国情報機関の依頼を受けた私立探偵ルー・キャシディは将校の足取りを追うが、なんとその男はルーの死んだはずの妻と結婚していた…。虚実を巧みに織りまぜて描く、リリシズム溢れるノスタルジック・ミステリの巨篇。
サンフランシスコ市警殺人課のジャック・ケイツは、アイスマンと呼ばれる謎の大物麻薬ディーラーを執念深く追っていた。しかし悪辣な罠のために、2日以内にアイスマンを捕えなければ、ケイツは警官のバッジを失う。一方、刑期を無事終えようとしているレジー・ハモンドは、ケイツにあずけてある50万ドルで新生活を夢見ていた。いま、ケイツは警官の職のために、ハモンドは50万ドルのために、おたがいの助けを必要としていた。
その孤独な殺人者は内なる妄念に衝き動かされ、次々と若い女を惨殺していた。ある時は路上で。またある時は被害者の部屋で。“詩人”と呼ばれるその男はいつも彼の最愛の女性を殺すのだったー。一方この殺人者を追い求めるロイド・ホプキンズはロス市警強盗殺人課の部長刑事。仲間から“ブレーン(頭脳)”と呼ばれる天才肌で、異常なほどの正義感をもつ男だった。そのホプキンズの直感が犯人は一種の天才であると告げていた。天才対天才の闘いが始まった直後、ホプキンズに市警の上層部から圧力がかかった。上司からも部下からも見放され、〈静かな狂気〉と化したホプキンズは、ひとりロサンジェルスの街を駆けめぐり、〈激しい狂気〉である“詩人”を追いつめる。ロイド・ホプキンズ・シリーズ第1弾。
ロス市警の警官ハーゾグが失踪して3週間が過ぎた。勤続13年の模範的な警官で変装を得意とし、単身で市内の各署によく駆り出されていた。同僚のロイド・ホプキンズ部長刑事はハーゾグの部屋に泊まり込み独自の捜査を開始するが、しばらくして奇妙な事実をつきとめる。ハーゾグは6人の市警警官の資料をとりよせ、彼らの言動をさぐっていたのだった。しかもリストの6人目には「ロイド・ホプキンズ強盗殺人課」とあった。何のためなのか。一方同じ頃、小さな酒屋で3人が射殺される強盗事件が発生し、ホプキンズの興味をひく。この凶悪事件と警官失踪を結ぶ糸とは…。鬼才J・エルロイが放つ新警官小説ロイド・ホプキンズ・シリーズ第2弾。
一撃で相手を天国へ送ることから“パラダイス・マン”と渾名される殺し屋ホールデン。彼は請け負った仕事のために幼友達のギャングを殺し、その時助け出した人妻と恋に落ちた。やがてマフィアの抗争に巻き込まれた彼は何者かに命を狙われ、彼女とともに身を隠すが。NYの暗黒街に生きるクールな殺し屋の姿をハードに描き出すクライム・ノヴェルの力作。
アメリカ東部の大都市フィラデルフィア近郊の、閑静な学園地区メイン・ラインの一角で女性の全裸死体が発見された。スーザン・ライナート、39歳、高校教師。一緒にいたはずの子供たちの姿は消えていた。捜査線上に浮かんできたのは、高い学歴のインテリばかりだった。ビル・ブラッドフィールドは、博識で、詩人の魂をもつといわれるカリスマ的な英語教師だったが、そのストイックな言葉と裏腹に、何人もの女性と結婚やら同棲をし、複数の恋人までいた。彼らの校長、ドクタ・スミスは変態性欲者で、また窈盗癖があった。この二人に疑惑の目は集中した。倫理なき社会病質者の犯罪を描き、そこにうごめく人間心理の不可思議に鋭く迫る、ウォンボー渾身のノンフィクション。
はるか数千年の昔、アラビア半島の大ナフード砂漠の奥深く栄えたという伝説の都市イラム。その古代都市を本拠にする謎の組織によって拉致されたデイヴィッド・ローゼンを救出すべく、美貌のパレスティナ人ガイド、レイラ・ラシドとモサドのショーレム大佐の一行はナフード砂漠の奥地めざして旅を続けるが…。世界世覇をもくろむ地下組織と、それを阻止しようとする考古学者の死闘を、壮大なスケールで描く冒険伝奇サスペンス巨篇。
ーニューヨークの北東、ロングアイランド島の高級リゾート地、ハンプトン・ビーチに埋められていた男の死体。男の名はヴィクター・アンボイズ。郷土史家。アンボイズは、百年まえに消えたという島の土地権利書の秘密を握っていた。だが、地元の警察はインディアンの青年を犯人に仕立てて、事件の真相をもみ消そうと…。-ハーヴァード大学出身の異色警官シュワーツが、休暇を返上して事件に挑む。好評シリーズ第2弾。
原稿もなければメモの類もない。資料もまったく見当たらない。-政情不安定な中米の小国ロス・イノセンテスをネタに特種をものにできそうだと興奮していた著名なジャーナリストが突然自殺を遂げたのも奇妙だったが、その部屋も異様だった。死んだアダム・ストリーターと契約をしていたバナー保険会社に依頼され、ブランドステッターは故人の周囲を調べ始めた。やがて、アダムの助手が何者かに射殺され、彼に協力していたパイロットが謎めいた墜落死を遂げるに及び、事件は底知れぬ深さを見せ始めた。ハードボイルド界に独自の地歩を占める著者が、緊迫する中米情勢を背景に、ブランドステッターの命がけの調査行を描く第8弾。
パーム・スプリングスの別荘から、富豪ワトスンの息子がロールス・ロイスとともに消えた。FBIの捜査もむなしく、事件は迷宮入りとなった。それから17か月もたって、ハリウッド署のシドニー・ブラックプール部長刑事がワトスンに呼び出された。行方不明になった当日、息子がハリウッドのロールス・ロイス販売店に寄ったことが今になってわかった、もう一度ハリウッド署に事件を調べ直してほしいというのだ。警察小説を書かせては並ぶもののないウォンボーが、鮮やかなプロットに深い味わいを添えて贈るミステリ。