著者 : 小谷野敦
昨年11月、惜しまれつつ逝った著者の、最後に遺された単行本未収録の短篇小説、追悼文、鎌倉の文芸誌「そして」に連載されていたエッセイを収める。巻末に三木卓文学を愛してやまない編者・小谷野敦氏の解説と年譜を収める。 詩人として、また作家、児童文学者として生涯活躍し続けた著者のスワンソング。 〈短篇小説〉 ヌートリア 来訪したもの 咳 夏、そして冬 幸福感について 寝台自動車 病室 〈追悼文ふたつ〉 辻章さんのこと 小田さんありがとう 〈文芸誌「そして」に連載されたエッセイ〉 異性の目 ハッピーエンド わが土台 小説を書きだした頃のことから 文学者の認められかた ああ、ジョン・レノン 八公の神さま 解像度と段差 録音音楽について 二〇一四年二月 最近のこと、ひとつ これからの文学 ぼくはターザン 身の上相談からはじまって 随筆文学の衰退について 【解説】三木卓の世界 小谷野敦 三木卓 年譜
私は自分の人生の半分以上はテレビだった人間だから、それをあえて書くことにする。1960年代後半から1970年代前半にかけて、「ファイトだ!!ピュー太」「宇宙猿人ゴリ対スペクトルマン」『新八犬伝』等々、夢中になって番組のこと、ADHD、好みの女子、小児性欲の記憶を、生まれ育った町、水海道(茨城)と越谷(埼玉)を背景にたどる自伝の試み。書き下ろし長編。
パリの日本人コロニーを舞台にした“ジャポニズム・フィクション”として、20世紀初頭、欧米各地の劇場を席捲、「黄禍論」の議論を呼んだドラマ。「台風」現象としてセンセーションを巻き起こした、ハンガリーの劇作家レンジェルの代表作。
ネットお見合いで知り合った女性の深い秘密から、この国の機構のいびつさに接してゆく、『文學界』発表時から話題を呼んだ表題作。消えてゆく煙草とコンビニをペーソスとともに描いた「さようならコムソモリスカヤ・プラウダ」、実家と膨大な蔵書を処分する一幕「実家が怖い」、赤裸々に「艶舗」に通う日々を描く「五条楽園まで」、『ハムレット』の大胆なパロディ「ホレイショーの告白」の全五篇を収録。
婚活体験を描く表題作。谷崎潤一郎と夏目漱石の知られざる関係、図書館員と作家の淡い交流、歴史に埋もれた詩人の肖像…“いまの文学”に飽き足らない、あなたに贈る“ほんとうの文学”がここに!
明治から昭和敗戦後に生きた歌舞伎役者・七代目松本幸四郎。團十郎不在の時代に、劇壇・文壇と交流し、「藝」を守った名優である。その裏の顔は、妻に次々と先立たれながらも三人の子を名高い歌舞伎役者に育てあげたひとりの男だった。その知られざる生涯をたどる本邦初の伝記小説。
女の盛りを過ぎようとしていたホステス葉子は、大学教師松崎との愛人生活に終止符を打ち、古巣の銀座のバーに戻った。無垢なこころを持ちながら、遊戯のように次々と空しい恋愛を繰り返し、やがて睡眠薬自殺を遂げる。-その桜花の幻のようにはかない生に捧げられた鎮魂の曲。実在の人物をモデルとして、抑制の効いた筆致によって、純粋なロマネスクの結構に仕立てた現代文学屈指の名作。