著者 : 尾辻克彦
贋金づかい贋金づかい
トランクを少し斜めに傾けてみた。試しに留金を押してみると、抵抗もなくパチンと外れる。それならと、蓋をそっと開けた。隙間から、ぎっしりと詰まったものが見える。紙がぎっしり。唐草模様だ。伊藤博文。札束である!-後楽園球場でトランクいっぱいの贋千円札を渡された「私」は、月産百五十億円の紙幣生産地へ赴いた。そこは何と…。「模型千円札裁判」の有罪判決から四半世紀、前衛画家赤瀬川原平が、いま尾辻克彦として放つ、脱経済=超芸術(トマソン)小説。あふれる想像力と言葉の乱舞が、読者を天空の高みへと誘う。
父が消えた父が消えた
表題作は、父の遺骨を納めるべく売り出された墓地を見に行く青年の奇妙な一日をポップ・アート風に描いて注目を浴びた第84回芥川賞受賞作。他にカメラ狂のフェティシズムを考察する「星に触わる」、晴れた日に雨樋を買うことこそラディカルだと思う男を描く「自宅の蠢き」など、初期の秀作五篇を収録した純文学短篇集。
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