著者 : 山崎ナオコーラ
近所の川沿いを散歩するのが日課の早乙女雄大。入院中の愛する人との残り少ない日々の過ごし方や、ある告白をきっかけに家を出てしまった家族のこと、あれこれ思い悩みながら歩いていると、親子風の二人組に出会う。親に見える人は何やら思い詰めた表情で「自分の人生をあきらめたい」と言う…。
ある日、サンドウィッチ屋を営む妻が末期がんと診断された。夫は仕事をしながら、看護のため病院へ通い詰めている。病室を訪れるのは、妻の両親、仕事仲間、医療従事者たち。医者が用意した人生ではなく、妻自身の人生をまっとうしてほしいーがん患者が最期まで社会人でいられるのかを問う、新しい病院小説。
四姉妹の次女である豆子は三十二歳、芳香剤のメーカーで働いている。見た目も性格も地味な豆子だが、和やかな鯛造と出会って結婚することになった。結婚式を準備していくなかで、豆子は、自分の金銭感覚が人生の変化とともに、にょきにょき変わっていくことをスリリングに感じ、ある決心をするのだった。
“おばあさん”になりたい、自称68歳の村崎さん、未来でなく“今”を生きたい紫さん、“徐々に”年をとりたいスカート男子・加藤くん。町の公民館の「編み物クラブ」に通う未来は未定!高校3年生の冬ものがたり。
幸福寺の小さな本屋さん「アロワナ書店」。三代目のハッコウは店長とは名ばかりで店内をぶらぶらするばかり、ともに育ったいとこの昼田はIT企業に勤めていた。しかし正月早々大事件が起き、書店は存続の危機に。昼田とハッコウは、二人でゆっくり立ち上がる。自分と世界のつながりを考える、著者渾身の長編。
アロワナ書店は毎朝開店し、客をはじめ、さまざまな人を迎え入れて、夜には閉まる。その日常が壊れた「あの日」を境に、「町の本屋さん」の店長として動き始めたハッコウと昼田の関係は、じわじわと変わっていく。仕事をすること、家族になること、人とつながること。続いていく毎日をゆるやかに更新する物語。
夫を亡くしてひとり暮らしの荻原萩子・五十五歳が抱く、バイト仲間の年下女子・早蕨へのときめきと憧れ。-「反人生」。世界を旅する寅次郎、ユーモアのセンスあふれる桃男。男友だちから新たな感覚を学ぼうとする大沼の行く末は…。-「越境と逸脱」。自由でゆるやかな連帯のかたちを見つける全四編。
芳香剤のメーカーで働く地味な会社員、豆子は、自身の結婚式を機に、金銭感覚が人生と共に変化していくことの面白さを発見する。決して「モテ」を追求することなく、社会人としての魅力をアップしていきたい。退職して、「香りのビジネス」を友人と起こそうと画策する。香水に、セクシーではなく、経済力という魅力を!
“恋愛は苦手だけど、恋愛小説は好き”なあなたに贈る、心に柔らかい刺を残す連作短編小説集。人気多肉植物店「叢」のサボテン×山崎ナオコーラのラブストーリー。
憧れの人気写真家ニキのアシスタントになったオレ。絶えず命令口調の傲慢な彼女に、オレは公私ともに振り回される。だがオレは一歳年下のニキとつきあうことになる。そして仕事の顔とは全く別の、恋に不器用なニキを知ることになって…格差恋愛に揺れる二人を描く、『人のセックスを笑うな』以来の恋愛小説。
恋人ではないけれどセックスはする会社の先輩と、セックスはしないけれどつきあっている30歳年上の上司との間で揺れる20代女性を描いた「手」(芥川賞候補作)。NHKラジオ文芸館で異例の話題となった、血のつながらない娘と暮らす44歳のサラリーマンが主人公の、「お父さん大好き」など4作を収録した新鋭の中短篇集。
十九歳のオレと三十九歳のユリ。恋とも愛ともつかぬいとしさが、オレを駆り立てたーー「思わず嫉妬したくなる程の才能」と選考委員に絶賛された、せつなさ百パーセントの恋愛小説。第四十一回文藝賞受賞作。映画化。
「人生ってきっと、ワタクシたちが考えているより、二億倍自由なのよ」。中学に入ってから不登校ぎみになった幼なじみの犬井。学校という世界に慣れない私と犬井は、早く25歳の大人になることを願う。11年後、OLになった私だが、はたして私の目に、世界はどのように映るのか?14歳の私と25歳の私の今を鮮やかに描く文藝賞受賞第一作。