著者 : 山本一力
つばきは、深川に移り住み、浅草で繁盛していた一膳飯屋「だいこん」を開業した。評判は上々だが、「出る杭は打たれる」とばかりに、商売繁盛を快く思わない者もいた。廻漕問屋「木島屋」から、弁当を百個こしらえてほしいという大口の注文を受けたのだが…。浅草とは仕来りの違う深川に馴染もうと、つばきは奮闘する。祭の興奮と職人たちの気概あふれる深川繁盛記。
有田皿山の薪炭屋の若主・健太郎は公儀隠密から、有田で黒色火薬が密造され、伊万里湊から江戸に運び出されていると聞く。事が明らかになれば鍋島藩は取り潰しともなりかねない。健太郎は密造一味捕縛に力を貸すことを決め、江戸へと向かった。辿りついた先で、凄絶な闘いを目の当たりにする健太郎。傍らには同道した妻のおちえがいたー。若き大店主の清廉なる信念が胸を打つ、波乱万丈の時代巨編。
二等航海士として海へ。バートレット・アカデミー(航海術専門学校)を首席で卒業した万次郎。故郷や仲間に思いを寄せながら、1846年5月、ニューベッドフォードから出航。アフリカからアジアへと、緑したたる未知の大陸へと漕ぎ出でる。
アメリカで航海術を学ぶ前に、基礎学力を身に付けるため16歳のジョン・マンこと万次郎は、小学校に入学する。年下の子どもたちとの交流はすべてが楽しいわけではなかった。さらに地元の教会に通うも、ある問題が待ち構えていた。2ヵ月の勉強を経たジョン・マンは、難関に挑む。土佐生まれの作家が精魂込めてえがく、「最初の日本人」ジョン・マンの生涯。
黒船より前に浦賀に来航した米国船が存在した! 日米初遭遇の歴史的瞬間がいま鮮やかに甦る。「本船はこれより、エドへ向かう!」1845年、捕鯨船マンハッタン号は洋上で日本人漂流者22人を救助。彼らを送り届けるため、被弾覚悟で鎖国中の日本に針路を取った。言葉の壁を越えて育まれる船乗り同士の友情と敬意。そして船はついに浦賀入港を許されてーーペリーも注目した開国への第一歩を日米双方から描く興奮の歴史長篇!
秘伝の継承を目前にして親方は逝き、弟弟子には先を越され、鬱屈した日々を送る看板職人・武市のもとへ、大店(おおだな)から依頼が舞い込んだ。しくじりは許されない重圧の中、天啓のように閃いた看板思案に職人の血が滾る。実現を前に立ち塞がるいくつもの壁。それでも江戸っ子の度肝を抜くこの仕事、やるのは俺だ。知恵と情熱と腕一本で挑む、起死回生の大一番! 痛快無比の人情時代長編。
親代わりのホイットフィールド船長の励ましと万次郎の頑張りで、晴れて、航海術の専門学校であるバートレット・アカデミーに合格した。万次郎は、首席で卒業することを誓う。
万次郎は共に救助された仲間全員のハワイから日本への船賃を稼ぐために、ひとり、アメリカの捕鯨船ジョン・ハウランド号の乗組員となった。英語を覚え、南氷洋の凍える寒さを経て、船上の先輩らと信頼関係を築いた万次郎は、海の男として成長し、アメリカ大陸の土を踏む。著者入魂の歴史大河小説、白熱の第3弾。
満開を迎える深川大横川の桜並木。駕籠舁きの新太郎と尚平は、庄兵衛とおよねの老夫婦を花見に招待した。余命わずかなおよねの望みをかなえるためだった。翌日、桜を楽しむ新太郎たちに、千住の駕籠舁き寅とその客が早駕籠勝負をけしかけてきた。我慢を重ねた新太郎だったが、やがて、勝負をうけることに。だが、賭け金が千両だったことからー胸のすく第三弾!
難題を依頼された若き戯作者は、苦悩と自問の末に筆を執った。七十四年前に起きた加賀藩と幕府老中の対立、その緊張関係を解消せんと奔走する飛脚たちの闘いを描くためにー。男の誇りを賭けた仕事が、加賀百万石を救う。真の忠義とは何かを問う大型時代長編。
四国統一を目指す長宗我部元親の旗下で、勇名を馳せた名将・波川玄蕃。元親の妹・養甫を妻とし、領民からの信望も篤い玄蕃だったが、いつしか元親の暗い嫉妬を買い、次々と失脚の罠を仕掛けられる。やがて襲う悲劇ー戦国乱世における夫婦の情愛、家族の絆、側近達の活躍が生き生きと描かれる感涙時代小説。
献残屋とは、大名や幕臣の屋敷を回って進物を買い取り、転売するのが仕事。そんな献残屋のひとつ、寺田屋の手代・佐吉は、一本筋が通った男。得意先である浦賀奉行所の役人が抜け荷の片棒を担いでいることを知り、肚をくくって知恵を絞り、不逞の輩に挑んでいく。江戸、浦賀、焼津。肝の太い男、情の深い女が命を張り悪事を暴いていく、痛快!人情時代小説。
若い娘ながら青菜の目利きに長けた棒手振りの朋乃。ある朝仕入れに向かう橋の上で、大金の入った財布を拾う。商いに障ると知りながらも、落とし主を救うため自身番に届け出たのだがー欲深さ、狡猾な保身に満ちた浮世を、正直に誇り高く生きることの価値を描いて爽やかな感動を呼ぶ、極上の人情時代小説。
娘の祝言が決まった日から急に態度が冷たくなった父親の心情が胸に迫る表題作ほか、他人の物を盗った息子に右往左往する両親を描く「泣き笑い」、晩年の清水の次郎長が小気味よい「言えねえずら」、土佐の長宗我部家に伝わる文書に秘められた一族の尊い使命「銀子三枚」など、とびっきりの人情話8編。
秘伝の継承を目前にして親方に死なれ、弟弟子には先を越され、鬱屈した日々を過ごす看板職人・武市のもとへ大店から依頼が舞い込んだ。「目新しい趣向を」との注文に途方に暮れる武市。が、不意に閃いた前代未聞の看板思案に、職人の血が沸き返る。依頼主は猛反対、協力を仰いだ棟梁には激怒され、それでもー江戸っ子の度肝を抜く仕事、やるのは俺だ!痛快無比の時代長編。