著者 : 山本一力
“ツボ師”の異名を持つ鍼灸師・染谷の凄腕が、ますます冴えわたる!父・染谷に弟子入りした娘いまりを嗅ぎまわる渡世人たちの正体は?戯作者を目指す長男・勘四郎の元へは破格の縁談が持ち込まれるが…!?
月刊『潮』誌上で好評連載中の「蒼天有眼 雲ぞ見ゆ」シリーズ、書籍化第一弾!!!清代末期の光緒二十五年(一八九九年)。杭州・西湖のほとりにある孤山に暮らす数え年で二十一歳の丁仁は、金石学者である父・丁立誠の後を継ぎ、学究に勤しんでいた。ある日、生薬である「竜骨」に神秘的な図形や文字のようなものが刻まれていて、北京で騒動になっていることを耳にした丁仁は、丁家にかねてから出入りする北京在住の雑貨商人・元突聘に、その子細を尋ねようとするー。
嘉永六年(一八五三)元日、異例の暖冬に加賀藩は弱りきっていた。この夏の重要行事である将軍への「氷献上」に不可欠な氷が全く作れないのだ。ひと月後、信州の旅籠の氷室で見つけた氷には、八十名以上もの先約が。事態を打開するため御用飛脚宿「浅田屋」の面々が立ち上がる!氷の確保、献上日の調整、他藩の説得、新しい氷室の普請、運搬中のアクシデントー怒涛の展開があなたを待つノンストップ時代小説!
一膳飯屋「だいこん」を知人に譲ったつばきは、父安治と母みのぶと、新たな三人暮らしを始めた。不景気風が吹く江戸の商いはどこも経営不振でどの店も苦労していた。ある日、富岡八幡宮に参拝した安治は、薬種問屋「蓬莱屋」が看板の思案を求めていることを知り、渡世人の弐蔵と講釈師で絵心のある三太郎を仲間に、巨大提灯という壮大なスケールの看板を提案する。
初午の真夜中、水垢離に臨もうとしていた喜八郎たちのすぐそばで、男女が川に飛び込んだ。女を助けた喜八郎は、ふたりが奉公先の賭場で恋仲になった挙げ句に心中を図ったと知り、賭場の貸元と直談判に及ぶが…。そして喜八郎と秀弥の恋の行方にも新たな展開が!
小網町の白扇屋・吉野屋へ婿入りした岡三郎は、一緒になったばかりの妻に惚れ込んでいたが、どうやらまだ夫婦の契りがないらしい。それを聞いた老舗眼鏡屋・村田屋のあるじの長兵衛は、吉野屋の一番弟子が問題の鍵を握ると言い出して…(「蒼い月代」)。飛鳥山にて湯治中の長兵衛のもとを自身番が訪ねてきた。村田屋の手代頭を名乗る男が、村田屋の天眼鏡を江戸で評判の料理屋の板長へ貢げばそこへの仕入れがかなうと、王子村の豆腐屋から大金を騙し盗ったらしく…(「湯どうふ牡丹雪」)。創業百二十年を迎える老舗眼鏡屋のあるじは、知恵と人情で問題に挑むお江戸の“名探偵”。時代小説の名手による、心に沁みる極上の六篇。
亡き夫との思い出の地、ニューヨークに降り立ったマーサ。白タクに乗った田舎者の老女に運転手は高値を吹っかけようとする/「ホワイト・キャブ」。古書店店主のアンソニーは、地上げで閉店するグリーンマーケットの店主のためにあることを計画。奇跡のような一夜が待っていた/「ピクルス」。拾ったカモを公園の池に戻すため、少年たちが知恵を絞って小さな冒険に出発する/「C・P・D」。著者が馴染み深いニューヨークの街を舞台にした、円熟の筆冴え渡る六編。
深川で鍼灸師を営む染谷。「医は仁術」と心得て、朋友の漢方医・昭年とともに市井の人々を癒す。元辰巳芸者で気風のいい内儀の太郎にも支えられ、人助けに世直しにと奔走する日々を人情味あふれる筆致で綴る。現代の疲れた心にもじんわり効く長篇時代小説『たすけ鍼』待望の続編。
1845年3月、クーパー船長率いる米国捕鯨船は日本海を目指す途中、無人島に漂着していた日本人11名、翌日にも沈没しかかった日本船の乗組員11名、計22名を救助した。22名分の水と食料の消費は激しく、送りとどけるにも日本は鎖国中で、沿岸部に近づけば被弾する恐れもある。船長の決断は早かった…。ペリー浦賀来航の8年前にあった日米交流の史実を題材に、船乗りたちの交誼を描く圧倒的感動巨編。
捕鯨の大成果を挙げ、航海の途中で一等航海士に昇格し、フランクリン号で3年4ヵ月ぶりに晴れがましく帰港した万次郎。しかし、漂流仲間の重助の死、さらに深い哀しみが彼を襲う。そして心に誓った。必ず仲間と日本に帰ることを。息もつかせぬ第7弾!
ホイットフィールド船長夫妻の教育を受けて勉学に励んだ万次郎は、見事バートレット・アカデミーに合格した。船長の長期出航を機に、万次郎は樽造り職人の店に住み込みで働きながら通学することに。想像を超えるつらさをしのげたのは、バディーとの友情のおかげだった。著者が渾身の筆をふるう歴史大河小説。
古典落語の人気演目をノベライズ。働き者だが大酒飲みのために貧乏な夫と、その妻の愛情を温かく描いて、屈指の人情噺として名高い「芝浜」。正直者同士が意地を張り合い、明るい人情噺として人気の高い「井戸の茶碗」。船場の商家を舞台に、堅い番頭の裏の顔を描いた「百年目」。一文無しの絵描きが宿代の代わりに描いた絵から意外な展開となる「抜け雀」。江戸末期の名脇役だった三世仲蔵の自伝的随筆をもとに作られた「中村仲蔵」。落語ファンから愛される以上五演目を、ときに独創を加え、ときに人生訓を加え、咄に込められた諧謔と人情味を趣深く伝える。
父島で育った丈二・子温の二人の兄弟は、ジョン・マンこと中浜万次郎と出会い船乗りを目指す。その頃、アメリカ西部はゴールド・ラッシュに沸き人々が殺到。中国からも海を渡る者がおり、兄弟も新天地へ。現地では一攫千金を夢見る男たちの間で復讐劇が勃発。日米中を股に掛けた死闘必至の大作戦が始まった。
不況の嵐が吹き荒れる江戸ー同心を辞し、庶民相手に鍋釜や小銭を貸す「損料屋」として暮らす喜八郎。与力や仲間たちと力を合わせ、巨大な敵と渡り合う!二千坪の土地を牛耳る黒幕の目的は?危機感をつのらせる深川の住人たち。
嘉永6年、黒船来航に揺れる江戸。木更津の薪炭問屋の娘おきょうは、深川の材木商との談判のため単身江戸へ向かうが、警戒を強める船番所に留置されてしまう。彼女の危機を救おうと、密かに想いを寄せる仙之助をはじめ、男たちが動き出す。騒動に乗じて悪事を企む者たちも現れ、事態が複雑化する中、若き二人の運命やいかに。川面をはしる風のように、心に爽やかな印象をはこぶ傑作時代小説。