著者 : 山本兼一
茶人は常に命がけで絶妙の境地を求めるー。最後まで己の美学を貫き、天下人・秀吉に疎まれ、切腹を命ぜられた千利休。心の中にいつも棲んでいたのは、十九のときに、殺した女だった…。利休に艶やかな感性を与えた、その秘めた恋と人生の謎に迫る山本文学の金字塔。第140回直木賞受賞作。浅田次郎氏との対談を特別収録。
近江国友村の鉄炮鍛冶である一貫斎は村の訴訟に巻き込まれ江戸に出ることになった。太平の世に鉄炮の注文は減り、村は景気が悪く寂れた状況にあった。江戸に出た一貫斎は持ち前の好奇心で交友を広げ、オランダ渡りの新式鉄炮の修繕を依頼される。見事に鉄炮を修繕した一貫斎は独自の工夫によって改良型まで作ってしまう。
江戸での訴訟に勝ち、国友村に戻った一貫斎は、江戸滞在中に請け負った反射望遠鏡の制作に夢中になった。レンズの制作で、失敗を重ねる最中に、墨をすらないですむ「懐中筆」や油を足さない「玉燈」等を発明し、潜水艦も模索する。後年日本のダ・ヴィンチと呼ばれる鉄炮鍛冶の生涯を描いた傑作時代職人小説。
時は慶長五年九月十五日。昨夜来の雨は上がれど、濃霧が立ちこめる関ヶ原。一大決戦の秋を迎えていた。未明、小早川秀秋の裏切りの気配を伝える密使が石田三成の下にやって来る。三成は裏切りに備え、万全を期す。一方、徳川家康は、豊臣恩顧の福島正則らの動向に不安を募らせる。東西両軍、命運を賭けた戦いの火蓋が切って落とされた!日本史上最大、関ヶ原の合戦。その長い一日を描く戦国巨編。
筑前立花城の城督・〓(ぎん)千代姫が婿に迎えたのは、後の名将・立花宗茂。島津、大友、龍造寺ー三つ巴の闘いが繰り広げられる九州で、大友を支える立花家も戦いに明け暮れる。〓(ぎん)千代自ら鉄炮隊を率いて闘う中、父・道雪に続き、宗茂の実父・高橋紹運も命を落とし…。豊臣秀吉の天下、そして関ヶ原の戦いへ。時代の荒波に翻弄される夫を支えつつ、摩利支天の如く、凛々しく、ひたむきに生きた〓(ぎん)千代姫の生涯を描く力作。
信州小諸藩赤岩村に生まれた山浦正行、のちの源清麿は、九つ上の兄真雄の影響で作刀の道にのめりこむ。隣村の長岡家に十八歳で婿に入るが、刀に対する熱情は妻子をおろそかにさせるほどたぎるのだった…。幕末最後の天才刀鍛冶、その波乱の生涯を描く!
安土桃山時代。足利義輝、織田信長、豊臣秀吉と、権力者たちの要望に応え「洛中洛外図」、「四季花鳥図」、「唐獅子図」など時代を拓く絵を描いた狩野家の棟梁・永徳。ライバル長谷川等伯への嫉妬、戦乱で焼け落ちる己の絵、秘めた恋。乱世に翻弄されながら大輪の芸術の華を咲かせたその苦悩と歓喜の生涯を描いた長篇。
天正10年、甲斐の武田氏を滅ぼし天下統一に王手をかけた織田信長は、正親町帝に大坂遷都を迫った。このまま信長の躍進が続けば、朝廷はどうなることかー不安と忍耐が限界に達した帝は、ついに重大な勅命を下す…。本能寺の変まで、残り38日。日本史上最大の謎を、明智光秀をはじめ、近衛前久、吉田兼和、里村紹巴、徳川家康ら、信長を取り巻く男達の心理戦から炙り出す、著者渾身の歴史巨編。
幕末の京都で道具屋「とびきり屋」を営む若夫婦・真之介とゆず。ある日、坂本龍馬から赤絵の鉢の商いを持ちかけられるのだが…。真之介の秘策の冴えわたる表題作、若宗匠からある大事な品を取り返すために夫婦で奮闘する「うつろ花」ほか、珠玉の6編を収録。京商人の心意気に胸躍る人気シリーズ第3弾。
五十本の茶杓の中に一本だけあるという、「ほんまもん」の利休の茶杓。はたしてゆずは目利きできるのかー?道具屋若夫婦の奮闘を描く“はんなり”系時代小説「とびきり屋見立て帖」シリーズ第四弾。
純金入りの“黄金鍛え”の刀をめぐり一万両の刀剣詐欺が勃発。盗人は詐欺剣相家の白石瑞祥。光三郎の刀剣談義仲間の一人は瑞祥を信じて詐欺の片棒を担いでしまう。瑞祥は奪った金を元手に憧れの名刀を求め江戸を出た。光三郎は瑞祥を追い、日本刀「五か伝」の地、相州鎌倉、美濃関、京、奈良、備前長船へ!
天才絵師・狩野永徳の恍惚と不安。稀代の名作『洛中洛外図』を描き、時代を席巻した永徳。-あの男は、どうしておれを苛立たせるのか。長谷川等伯への嫉妬に身悶えしながら、画境の極みを目指す。絵師の業を極限まで描く、傑作長編。
名代の茶道具屋の愛娘だったゆずは店の奉公人だった真之介と出奔、幕末の京都で道具屋「とびきり屋」を営んでいる。二人にわかるのは道具のことだけ。でもその「見立て」力で、龍馬や桂小五郎らと渡り合い、動乱の京を生き抜いていく。若い夫婦の成長を軸に、京商人の心意気を描いた大人気シリーズ第2弾。
京で屈指の茶道具屋の娘・ゆずと奉公人の真之介は、駆け落ち同然で夫婦となり、道具屋「とびきり屋」を三条木屋町に開く。そこでは近藤や芹沢、龍馬がお客にやって来ては、騒動が起こり…。混乱する幕末の京を舞台に、“見立て”と“度胸”で難題を乗り切ってゆく夫婦を描く「はんなり」系痛快時代小説。
女のものと思われる緑釉の香合を肌身離さず持つ男・千利休は、おのれの美学だけで時の権力者・秀吉に対峙し、天下一の茶頭へと昇り詰めていく。しかしその鋭さゆえに秀吉に疎まれ、切腹を命ぜられる。利休の研ぎ澄まされた感性、艶やかで気迫に満ちた人生を生み出した恋とは、どのようなものだったのか。思いがけない手法で利休伝説のベールが剥がされていく長編歴史小説。第140回直木賞受賞作。
幕末の京都で道具屋「とびきり屋」を営む若夫婦・真之介とゆず。わけありの道具を「見立て」、癖のある人々を「目利き」しながら、ふたりは少しずつ成長してゆくー。動乱の京都を舞台に、「道具」と夫婦愛を描いた佳品六篇を収録。
時は幕末。将軍の上洛にわきたつ京の都で、真之介とゆずは道具屋を構えた。ゆずは名代の茶道具屋の愛娘。真之介はその店の奉公人だったが、駆け落ちして夫婦になったばかり。一癖ある手代たちを仕込みながら、いわくつきの御道具をさばき、新撰組や龍馬、高杉と渡り合う。夫婦の成長を軸に、京商人の心意気を描いた傑作連作短篇集。