著者 : 山田風太郎
戦国の梟雄・松永弾正は、主君三好家の美姫・右京太夫に邪恋を抱いた。そして己が欲望を成就せんと、幻術師・果心居士配下の根来僧七人に催淫剤を作るための美女狩りを命じた。淫石と呼ばれるこの媚薬を口にした女人は、男に対して本心を失い、一匹の淫獣と化すという。犠牲となったのは伊賀忍者・笛吹城太郎の妻・篝火であった。操を守って自決したものの、死んだ体を根来僧に犯され、さらに弾正の妾と首だけすげ替えられた。慟哭し、半狂乱の城太郎は怒りを胸に復讐を誓うが…。伊賀忍法と根来忍法の血みどろの戦いを描く、風太郎忍法帖の代表作。
慶長十九年。この年、七十三歳の家康は悩んでいた。竹千代か、国千代か?秀忠の跡を継がせるのは、暗愚の兄か、聡明な弟か?懊悩の末、家康が出した選定方法ー。それは、おのれの命の落日が近い焦燥からか、あまりに奇想天外であった。峠ひとつ隔てて対峙する先祖代々の宿敵、甲賀と伊賀。この両派から精鋭十人を選び、代理として戦わせるという。家康の厳命のもと、手網を解かれた猟犬のごとく敵に突進する忍者たち。秘術の限りを尽くして繰り広げられる地獄絵巻。凄絶な死闘の果てに漂う哀しい慕情。風太郎忍法帖の記念碑的傑作。
島原の乱に敗れ、かろうじて生き延びた天草側の軍師、森宗意軒は、幕府への復讐を誓い、死者再生の秘法「魔界転生」を編み出した。それは、現世に不満を抱く希有の生命力の持ち主を魂だけ魔物にして蘇生させるという桁はずれの超忍法だった。これにより次々と魔界から蘇る錚々たる武芸者達。彼らを操り、紀州大納言頼宣をそそのかした森宗意軒は、さらに由比正雪を手先として本格的に幕府転覆に乗り出した…。驚愕と戦慄の連続。息もつかせぬ展開。天才山田風太郎の最高傑作。
幕府転覆を企む森宗意軒の野望阻止に柳生十兵衛は敢然と立ち上がった。敵は天草四郎を筆頭に、宮本武蔵、荒木又右衛門、柳生但馬守、柳生如雲斎…。秘法「魔界転生」によって蘇り、生前と同じ容貌、剣技を持ちながら、この世のあらゆる道徳に背反する魔人たち。隻眼まなじりを決し、孤剣を抱いて十兵衛は、殺戮マシーンと対峙してゆくが…。史上最強の殺人集団と十兵衛との壮絶無比の大死闘。群を抜く着想と圧倒的なスケール。剣豪小説、伝奇小説の極北として屹立する、日本エンタテインメント界の金字塔。
太閤秀吉の愛妻・淀の方が秘所に潜ませた歓喜をよぶ「楊貴妃の鈴」を浮気相手に盗まれた。それを旅役者に化けた石川五右衛門が奪う。一座の娘・織部は太閤の妾になる夜、五右衛門を思い、そっと鈴を体内に…。大盗賊の悲哀を描く「忍者石川五右衛門」、怪しげな敵討ちの「忍者車兵五郎」など怪異忍者出現の九短編。
時は天正十八年。豊臣秀吉麾下二万余の軍勢に対し、わずか数百人の手勢を率い北条方の小城・忍城を守る美貌の麻也姫。姫を陰に陽に護るのは、忍びの者として天下に鳴る風摩組。中に割って入る戦場荒らしの七人の香具師は、麻也姫の貞操を狙う。香具師vs.風摩忍法、武州の地で機智と詐術を巡す縦横の戦い
心をこの世に残しつつ死の際に立った男が愛する女と交るーと、一ヵ月後にその女胎を裂いて男が再誕する。妖異凄絶の忍法「魔界転生」。血風の中に甦る大剣鬼は天草四郎を筆頭に、宮本武蔵、荒木又右衛門、柳生但馬守…。背後で操る森宗意軒と由比正雪。紀伊大納言頼宣をそそのかして天下を大乱に導くか。
将軍家病篤し、の報に紀伊大納言は今や藩をあげて命運を賭すべく、魔界より甦った怪異の剣豪を供に江戸へ向ったー魔人たちの大陰謀は大詰めに!この天下覆滅の奸計に立ちはだかる柳生十兵衛。柳生谷に伊勢船島に…隻眼まなじりを決し、孤剣を抱いて馳せ向う。壮絶無比の大死闘はいよいよ最高潮に。
大坂夏の陣、落城前夜に救出された千姫とその侍女たち。智将真田幸村はそのなかに秀頼の落とし胤を身籠る五人の女忍者を潜ませていた。それを知った家康は、「子が生まれる前に始末せよ」と密命を伊賀忍者に下す。子を宿しながら迎え討つ、くノ一、五人衆に危機迫る!忍法帖ブームの際に頂点をなした傑作。
戦国の魔王松永弾正、己が邪恋を成就せんと、妖術師果心居士の弟子・根来忍法僧に数千の美女狩をさせた。伊賀忍者笛吹城太郎の妻・篝火もまたその贅となって果てた。だが奇怪!復讐に起った城太郎の前に、弾正の寵姫が、篝火の顔で艶然と微笑み、地獄へと誘う。根来vs.伊賀、容喙する柳生新左衛門の死闘。
英雄色を好む、という。だが、色を好むために英雄をめざす男もいる。信長の妹・お市の方の美貌に魂を奪われた瞬間から、名もなき軽輩の天下取りへの夢は始まった。巧みな弁舌と憎めぬ猿面の陰の冷徹な権謀術数。ライバルを蹴落とし、敵同士を反目させ、はては本能寺の変をも演出した希代の謀略家・秀吉。確固たる歴史眼と人間洞察力をもとに、無類の想像力で描く風太郎版太閤記の魅力。
足利将軍家の姫君香具耶を奪った者には南蛮銃三百挺をとらせようー。美女香具耶を憎む妖女玉藻の号令に信長・謙信・信玄らは色めき立った。姫を護るは剣聖塚原卜伝、上泉伊勢守。仕官先の大名の品定めに高見の見物決め込んだのは日吉丸。二匹の狐妖術対決。淀川では上杉軍と武田軍がぶつかって…。戦国オールスターキャストでお贈りする奇想天外・痛快無比の傑作長編伝奇小説。
殿中での吉良への刃傷沙汰により浅野家は断絶、赤穂浪士は仇討の機を窺う。一方、吉良方の上杉家では家老の千坂兵部が女忍者を用い、色仕掛けで浪士骨抜きを企む。大石内蔵助が同志と密議の最中に、妖美と怪異の忍法が華と炸裂した。