著者 : 岩本正恵
孤児院で育ったジュディの人生に、とびきりのチャンスと幸せが舞い込んできた。名を名乗らない裕福な紳士が、奨学金を出して彼女を大学に通わせてくれるという。ただし条件がひとつ。毎月、手紙を書いて送ること。ジュディは謎の紳士を「あしながおじさん」と呼び、持ち前のユーモアがあふれた手紙を書き続けるのだがーー。最高に素敵なハッピーエンドが待ち受ける、エバーグリーンな名作。
100年程前、夫となる人の写真だけを頼りにアメリカに嫁いでいった日本の娘たち。失望とともに結婚生活をはじめ、厳しい労働を強いられながら、子を産み育て、あるいは喪い、懸命に働いて、ようやく築いた平穏な暮らしも、日米開戦とともにすべてが潰え、砂漠のなかの日系人収容所へー。「わたしたち」という主語を用いて、女たち一人ひとりの小さなエピソードがつぎつぎと語られるうち、その小さなささやきが圧倒的な声となってたちあがる、痛ましくも美しい中篇小説。
老女の部屋の壁に並ぶ、無数のカートリッジ。その一つ一つに彼女の大切な記憶が封じ込められていたー。記憶を自由に保存・再生できる装置を手に入れた認知症の老女を描いた表題作のほか、ダムに沈む中国の村の人々、赴任先の朝鮮半島で傷ついた鶴に出会う米兵、ナチス政権下の孤児院からアメリカに逃れた少女など、異なる場所や時代に生きる人々と、彼らを世界に繋ぎとめる「記憶」をめぐる6つの物語。英米で絶賛される若手作家による、静謐で雄大な最新短篇集。O・ヘンリー賞受賞作「一一三号村」およびプッシュカート賞受賞作「ネムナス川」を収録。
オンボロ車でふらりと牧場に乗りこんできたカウガール、友人の姉と恋におちる15歳の少年、泥棒を殺害した移民と奇術師の友情、トラックが故障してひまわり畑で立ち往生する兄妹ー表舞台とは無縁の彼らにも人生の落とし穴があり、喜びと悲しみの溢れる一瞬がある。孤独、挫折、そして愛をかみしめながら生きる人々の姿を、シンプルな文章と独特のリズムで丁寧に描いた短篇12作。
辛辣なまでのウィット、強い意志を持ったエレガンス。いつも母は、娘に鬱陶しくまとわりついてくる。プロデューサーは女優を脱がせたがる。口先だけの男に退屈な夫、成就しない不倫。あの人はずうっと振り向いてもくれないし、久しぶりに会った友人は何を考えているのかわからない…。あなたの隣にもきっといる「鳥」たちを、現代アメリカ文学きっての短篇の名手がユーモラスに、シニカルに、けれどエレガントな筆致で描く、女と男の不安と孤独、12篇。我が子がガンに冒された経験をもとに小児ガン病棟を描き、新境地を拓いた異色作『ここにはああいう人しかいない』(O・ヘンリ賞受賞)を収録。