著者 : 帚木蓬生
鎌倉時代初期から戦国時代まで15代360年にわたって、北部九州に君臨した名家はなぜ歴史に埋もれてしまったのか。地方豪族の盛衰を丹念に描く、書き下ろし大河歴史小説! 少弐氏の名は、鎌倉時代初期に九州に渡った豪族・武藤資頼が大宰少弐という官職に任命されたことに由来する。資頼は当初、平家の武将だったが源平合戦で源氏に投降。頼朝の家人となり北部九州諸国の守護の座についた。二代目当主・資能は元寇で活躍し、筑前・豊前・肥前・壱岐・対馬の「三前二島」を支配下に置いて、少弐氏は全盛期を迎える。その後、南北朝時代には九州に落ち延びてきた足利尊氏に味方し、やがて肥後の菊池氏と争うことに。室町時代になると周防から大内氏が頻繁に攻め寄せてくるようになり、劣勢を強いられる。そして戦国時代。大内に攻められ本拠を肥前南部に移した少弐氏は、15代冬尚のときに家臣・竜造寺隆信の謀反に遭い、ついに名家として君臨した360年余の歴史の幕を閉じるのである。
源氏物語と紫式部を描き切った大河小説、堂々完結! 千年読み継がれる名作には、いかなる想いが込められていたのかーー 一条天皇が崩御し、皇太后となった彰子のもとで取次役などを務める香子(紫式部)。「源氏の物語」に込めた本意をいち早く理解してくれていた同僚の女房が亡くなり、悲しみに暮れながらも、ついに最後の帖を完成させた。娘・賢子も彰子に仕えることになり安堵しつつ、「源氏絵」とともにこれまでの物語を振り返る。『源氏物語』とともに香子の人生を描くという、王朝文学の頂点に挑んだ歴史長編、最終巻。
これは「女人の哀しみ」を描いた物語ーー 作者の視点から名作を読み解く! 傑作長編小説<全五巻> 皇子二人を生んだ彰子に仕える、香子(紫式部)。彼女の書く「源氏の物語」は一条天皇も愛読するほど、宮中で影響力を持つようになる。香子は、ともに宮仕えする女房たちの境遇や悩みに触れ、様々な「女人の哀しみ」を物語に織り込んでいく。一方、道長は彰子の子である敦成親王を東宮とすべく、暗躍しーー。 香子の人生の変動とともに、『源氏物語』「下若菜」〜「総角」の帖を執筆する様を描く、圧巻の大河小説。
大河ドラマで話題の「紫式部」と「源氏物語」を描く、帚木文学の最高傑作、第3弾! 一条天皇の中宮であり、藤原道長の娘・彰子に仕える香子(紫式部)は、道長から彰子への進講を依頼される。彰子に白楽天の『新楽府』を手ほどきしながらも、香子は自身が物語を生み出すことについての思索を深める。さらに彰子が懐妊、皇子出産と、道長一家の権力が増していく中、香子が紡ぎ出す『源氏物語』は「少女」〜「上若菜」の帖に進み、「玉鬘」十帖や女三宮降嫁など、光源氏の華々しい世界を描き出していく。
構想10年! 著者渾身の大河小説、第2弾。 藤原宣孝との子を身籠った香子(紫式部)は、悪阻に悩まされながらも、「源氏の物語」を書き継いでいく。しかし無事に娘・賢子が生まれ、一家が喜びに湧くなか、夫・宣孝が病に倒れてしまう。悲しみに沈む香子を支えたものは、やはり物語であった。 出産、夫との別れ、そして藤原道長に求められて中宮彰子に出仕するなど、香子の波瀾の人生とともに、『源氏物語』「紅葉賀」〜「朝顔」の帖を描き出した傑作長編小説<全五巻>。
5ヵ月連続発刊、第1弾! 千年読み継がれる物語は、かくして生まれたーー帚木文学の集大成にして最高到達点の長編小説〈全五巻〉 父や祖母の薫陶を受けて育った香子(紫式部)は、「いつの日か、『蜻蛉日記』を超えるものを書いてほしい」という早世した姉の想いを胸に、物語への素養を深めていく。夫との短い結婚生活、家族とともに向かった越前での暮らし……その中で、香子はまったく新しい物語を紡いでいく。 香子の人生とともに、1巻では『源氏物語』「桐壺」〜「末摘花」の帖についても描き出した、著者渾身の長編小説。
「町医者」が、ぼくの家の天職だったーー。大正時代、蛔虫退治で評判を取った初代。軍医としてフィリピン戦線を彷徨った二代目。高齢者たちの面倒を見る三代目。そして肥満治療を手がけてきた四代目の「ぼく」はコロナ禍に巻き込まれーー。現役医師でもある著者が、地方に生きる医師四代の家を通じて、近現代日本百年の医療の現場を描く感動作完成!
欲、業、金、偽、殺、毒ー信じる心が、嘘と虚像に翻弄され起こった平成最悪の事件。あの日、未知の毒物と闘った医師、看護師、駅員、警官。判断を誤れば、さらに人が死ぬー。なぜ、起こってしまったのか?膨大な資料と知識を土台に、想像力と熱意を注ぎ込むことで、剥き出しになった「オウム」の全貌。小説家でもあり、医師でもある著者にしか描きえない、そして、到達しえない真実。
安房国で漁師をしていた見助は、京に遊学していたという僧侶と出会う。僧はやがて日蓮と名を改め、鎌倉に草庵を構えて辻説法を始める。見助も鎌倉まで従い、草庵で日蓮の身の回りの世話をするようになる。その後日蓮は、他宗派への攻撃を強め「立正安国論」を唱える。幕府が法華経を用いなければ、国内の災害が続き他国からの侵略を受けると主張した。日蓮の目となり耳となるために、見助は九州の対馬に一人で赴くことに……。 安房国の港町・片海で漁師をしていた見助は、京の寺々に遊学していたという僧侶と出会う。僧はやがて日蓮と名を改め、鎌倉の松葉谷に草庵を構えて辻説法を始める。見助も鎌倉まで従い、草庵で日蓮の身の回りの世話をするようになる。その後日蓮は、他宗派への攻撃を強め「立正安国論」を唱える。幕府がこのまま邪宗を放置し法華経を用いなければ、国内の災害が続き他国からの侵略を受けると主張した。そして見助は日蓮の予言に伴い、九州の対馬に一人で赴くことになる。日蓮の目となり耳となるために。鎌倉から京の都までは陸路、京から博多さらに壱岐・対馬までは海路だ。遥か遠国の地への、見助の苦難の旅が始まった。
日蓮が唱えた「立正安国論」の中にある「他国侵逼」とは、大陸の蒙古による九州侵攻を意味する。その予言を確かめ蒙古の様子を探るために、日蓮の身の回りの世話をしていた見助が対馬まで遣わされた。対馬に到着した見助は、島民に温かく迎えられ、蒙古の情報を次々に入手する。その間、日蓮は弾圧や法難に遭うが、対馬と東国の間で二人の手紙のやりとりは続いた。そして見助が対馬に入って十余年、ついに蒙古が動いたとの情報が。 日蓮が唱えた「立正安国論」の中にある「他国侵逼」とは、大国が日本に攻め寄せるということを意味した。即ち、大陸の蒙古による九州への侵攻である。その予言を確かめ、蒙古の様子を探るために、日蓮の身の回りの世話をしていた見助が、朝鮮半島に最も近い島、対馬まではるばる遣わされたのだ。長旅を終えて対馬に到着した見助は、島民に温かく迎えられる。古くから島に住み着いている阿比留一族との交流を深め、蒙古の情報を見助は次々に入手していく。他方、日蓮はこの間、幕府からの弾圧や浄土宗による法難に遭うが、対馬と東国の間で二人の手紙のやりとりは続いた。そして見助が対馬に入って十余年、ついに蒙古が動いたとの情報が……。
一九九八年、和歌山市内の夏祭りでカレーを食べた住民六十名以上が中毒症状を呈し、四名が死亡した。県警から、毒物中毒の第一人者である沢井直尚九州大学医学部教授のもとに、協力要請が入る。現地入りした沢井は、事件の深刻さを前に誓う─本物の医学の力で犯罪をあぶりだすと。被害者たちの診察と診療録の解析の果てに浮上する、小林真由美の保険金詐取疑惑と過去の事件、戦慄の闇。
カレー事件の背後にあった複数の犯罪、鬼畜夫婦が詐取した高額の死亡保険金。だが、真由美は逮捕後も、完全黙秘のまま。難航する物証固め、捜査を支える専門医たちの知見。緊迫の公判が始まったーー。事件の全容は解明されたのか。なぜカレー鍋に砒素を入れたのか? 毒の魔力に取り憑かれた女の底知れぬ暗部とは。現役医師の著者が、小説でしか描けない真相に迫る医学捜査小説の金字塔。
初めてだった。これほどに、自分を認めてくれる教えは。だから、信じることに決めた。百姓たちは、苦しい日々を生き抜くためにキリシタンになった。なにかが変わるかもしれないという、かすかな希望。手作りのロザリオ。村を訪れた宣教師のミサ。ときの権力者たちも、祈ることを奨励した。時代が変わる感触がそのときは、確かにあった。しかしー。感涙の歴史巨編。戦国期から開国まで。無視されてきたキリシタン通史。
教えを棄てた。そう偽り、信念を曲げず、隠れ続けたキリシタンたち。密告の恐怖。眼前でおこなわれる残虐な処刑。なんのために、信じているのか?そう迷うこともあった。だが。九州のその村には、おびえながらも江戸時代が終わるまで決して逃げなかった者たちがいた。隠れ、そして信じ続けた者たちがいた。いままで誰も描きえなかった美しく尊い魂の記録。慟哭の隠れキリシタン秘史。
様々な症状の老人が暮らす痴呆病棟で起きた、相次ぐ患者の急死。理想の介護を実践する新任看護婦が気づいた衝撃の実験とは? 終末期医療の現状と問題点を鮮やかに描くミステリー!(解説/備瀬哲弘)
「父上、庄十は医者になりとうございます」享保13年、久留米藩領。大庄屋の次男に生まれた庄十郎は、飢饉に苦しむ人々の姿を目の当たりにするーー。飢餓と圧政に苦しむ百姓のために医師を志した少年の成長物語。
「人間ちうもんは、命をかけにゃならんときがある」かつて身を挺して増税に立ち向かった家老がいた。ときは過ぎ、百姓たちの生活は再び逼迫しーー。慈愛の心を貫く青年医師の目を通して、市井の人々を見た歴史大作。(解説/上田久美子)
韓国の珍島沖で大型旅客フェリー「世月号」が沈没、三百人超の犠牲者が出る大惨事となった。船への過積載、乗組員の経験不足など、事故調査が進むにつれ、その杜撰な管理体制が明らかになる。さらに船会社のオーナーも事故直後から姿を消していた。時を同じくして、日系ブラジル人の津村リカルド民男が経営する韓国・麗水の細胞工学治療院に、冷凍保存された少女の遺体が運ばれた。依頼者の男は、滝壷に落下して溺死したその遺体を蘇らせてほしいという。津村はiPS細胞と最先端の3Dプリンターを駆使し、彼女のレプリカを作ることを決心する。見事に蘇生した少女は、徐々に記憶を取り戻しながら、世月号の事故に関心を抱いていくが…。