著者 : 帚木蓬生
不慮の事故で恋人は逝ってしまった。失意の底で舞子が見出した一筋の光明。それは、あの人の子供を宿すことだった。すべてを捨て舞子はブラジルの港町、サルヴァドールへと旅立つ。比類なき愛と生命の物語。
パリ警視庁付の精神科医ラセーグが診断した美少女は、万国博覧会に浮かれた華の都で、恐怖に身を震わせていた。ラセーグに病的につきまとう貴婦人と、連続誘拐事件はどう繋がっているのか。被害者の女性たちに共通項はあるのか。日本ブームに沸く華の都で、精神科医の異常な二百日が始まった!パリを熟知した著者ならではの大作。
毒に汚された山の悲鳴が聞こえる。死んだ恋人の面影を追って訪ねた美しい山で、巨大なごみ処理センターの建設が進められていた。立ち上がった女性市議と地元の住民に、何ができるのか。真の社会正義とは?超弩級書下ろし問題作。
東西の壁が崩壊したベルリンで、日本の剣道の防具が発見された。「贈ヒトラー閣下」と日本語で書かれ、日本からナチスドイツに贈られたものだという。この意外な贈り物は、国家と戦争に翻弄されたひとりの男の数奇な人生を物語っていたー。1938年、ベルリン駐在武官補佐官となった日独混血の青年、香田光彦がドイツで見たものとは、いったい何だったのか。
絶滅したはずの天然痘を使って黒人社会を滅亡させようとする非人間的な白人支配層に立ち向かう若き日本人医師。留学先の南アフリカで直面した驚くべき黒人差別に怒り、貧しき人々を救うため正義の闘いに命をかける。証拠品の国外持ち出しは成功するか!?山本周五郎賞受賞作家が描く傑作長編冒険サスペンス。
とある精神科病棟。重い過去を引きずり、家族や世間から疎まれ遠ざけられながらも、明るく生きようとする患者たち。その日常を破ったのは、ある殺人事件だった…。彼を犯行へと駆り立てたものは何か?その理由を知る者たちはー。現役精神科医の作者が、病院の内部を患者の視点から描く。淡々としつつ優しさに溢れる語り口、感涙を誘う結末が絶賛を浴びた。山本周五郎賞受賞作。
199X年度「ノーベル賞」には微かな腐臭がしたーイギリス医学界の重鎮が受賞した「医学・生理学賞」の周辺に不自然な死が多すぎるのだ。故あって、恩師の死因を探っていた青使医師・津田は、賞を巡る“論文剽窃”の疑惑と“見えざる凶器”の存在を知る。しかし真相を握る医学研究者は重度のアルコール依存症に陥っており…。現役医師にして山本賞作家が放つ、傑作サスペンス。
新任看護婦・規子が小耳に挾んだ「無脳症児」のひと言がきっかけだった。この病院で何か途方もないことが進行している-。周囲で頻々と起る奇妙な出来事、そして親しい者たちの死。涙の渇くひまもなく襲ってくる「臓器農場」からの魔の手。マッドサイエンスを食い止める者はいないのか…。本邦医学サスペンス史上随一の熱血小説。
一度めは暗い船底に詰め込まれ、半死半生で連行された。二度めは日本人の女と夜陰に紛れて密航した。そして三度め-九州から釜山に届いた一通の手紙が、老境の男に朝鮮海峡を越えさせた。数十年を経ても拭い去れぬ痛恨の思いとは何なのか。朝鮮半島の側から、日本人の手で描かれた、限りなく熱い復讐物語。『モンテ・クリスト伯』に比すべき大巨編。血沸き肉躍る大河小説千枚。ナショナリズムの耐えられない軽さに悩む日本人に捧ぐ-。
アメリカ合衆国国立防疫センターで不審火による火災事故が発生した。消火作業は迅速で、死傷者ゼロ。焼失したのは、C棟三階の医薬品二十万トンであった。心臓移植の若き日本人学徒・作田が、留学先のアフリカで直面したのは、白人によるおそるべき黒人差別の現実であった。やがて、黒人ゲットーで、絶滅したはずの天然痘が大量発生する。平和と繁栄に酔う日本を遠く離れて、作田の怒りと正義のたたかいがはじまる。サスペンスに満ちた冒険ハードボイルドの傑作。