著者 : 平山瑞穂
コロナ禍から10年が経過した日本の社会…。バイザーを利用した相互監視システムが構築され、どんな理由であれ、適合できない人々は「アンプラ」と呼ばれた。不適合の人々は“静山泊”に集まり共同生活を送るものの、地域住民による排斥運動に悩まされる。彼ら・彼女らの行く場所はあるのか?
三津谷咲良、結婚4年目の34歳。成功しない不妊治療に焦燥を感じ、大学講師の夫とは微妙な関係に。徳永多実、咲良の小学生時代の親友。恵まれた家庭に育った優等生の咲良と異なり、高校を1年で中退、パートで働くシングルマザー。二人が19年ぶりに再会し、止まっていた刻が再び動き始めたらー。生まれも育ちも、そして住む世界も違う二人の女性の友情と葛藤と再生を描く、感動の文庫書下ろし。
身体を求めてくる義父を殺したい女子中学生。所持金2千円、ネカフェ暮らしに絶望する30代男性。社会への愚痴を吐く老人…。砂漠のような毎日を送る全く接点のない5人が、ある瞬間から細い糸で繋がっていく。始まりは女子中学生のネット上の呟きだった。たった一歩踏み出しただけで生活に変化が現れ、遂には5人の人生が劇的に好転していく。
絵に描いたような文学少年であった高校時代、谷崎潤一郎は最も好きだった作家の一人で、全集の七割は読破していた。今回、主だった作品を一気に再読して、実生活で起こした「細君譲渡事件」がどれほどこの人の作品世界に深い影を投げかけているかを再認識した。『蓼喰ふ蟲』をはじめとする一連の作品の現代性にあらためて驚嘆しつつ、その「陰翳」を及ばずながら現代社会にトレースするつもりで書き上げたのが本作である。
小説家の伊豆浜亮平はヒット作にめぐまれず、フリーライターとして雑誌に記事を書いて生計を立てている。ただ、文章や言葉づかいに関しては人一倍鋭い感性を持っていた。そんな小説家が、世界的ピアニストへの取材をきっかけに遭遇したのは、不思議な話法で言葉を操る謎の女性だった。「社宅にヒきに行っている人とその恋人の方ですね。ラクゴはミています」-彼女の言葉にどんな意味があるのか、なぜこんな話し方をするのか。言葉の迷宮をさまよう小説家は、やがて執筆中の作品にも通底した“もうひとつの現実”へと導かれてゆく。物語の異境を体感する超感覚小説。
月刊誌記者として働く小坂井夏輝、31歳。取材先で中学の同級生・瀧光平と再会する。かつて周囲を見下していた瀧を夏輝は疎んじ、片や誰彼なく優しくする夏輝を瀧は偽善者と嫌っていた。だが次第に夏輝は瀧が抱える痛みを、瀧は夏輝の葛藤を知るようになる。過去を受け止め、前を向いて歩くために、二人はある行動に出る。逃げたくなる自分の背中をそっと押してくれる、優しい物語。
三十歳を前に、このままでいいのだろうかー。仕事に不満があるわけではないが、漫然と毎日を過ごす真帆。職場を見渡せば、“いい大人”なのに、自称・できる美人や勘違いモテ男、BL好きの人妻といった、言動が伴わない子どもな人ばかり。そんな彼らをやり玉に挙げて楽しむ同僚に、抵抗を感じながらも同調してしまう自分。真帆の胸の奥に生まれた小さな疑問はやがて…。
生物多様性助成機構に勤めるOL真崎皓乃は突然、外資系ファンドからやってきたデキるイケメン・上林薫(通称ウェーバー卿)が上司となって、日々振り回される。密かに行っていた悪魔秡いのバイトに支障が出るわ、結婚を目前に控えていた彼氏との関係もぎくしゃくするわ、わたし、ぜんぜん大丈夫じゃないっぽいんですけど!
婚約破棄された上、リストラに遭い、不幸のどん底にいた氏家譲は、中学時代の友人武蔵と十年ぶりに再会する。「よう、久しブリ照り!」武蔵に愛人の「相手をしてやってほしい」と頼まれた譲は、愛人のあらぬ誤解(ロリコン疑惑)からインチキ臭い神社へ連れていかれ、そこでどういうわけか中学時代の同級生・藤原たまりに遭遇。さらには、武蔵がステキに胡散臭く経営している会社「ハピネス計画」で働きはじめ…。怪しいけどどこか憎めない人物たちに巻き込まれ振り回されつづける譲に、やがて小さなハピネスが。元気が湧く長編小説。
浮遊バクテリアが建物を侵蝕し、情報伝達物質により政府が国民統制する都市を舞台に、主人公と女友達の曖昧な一夜を描いた表題作、“野天人”だったという叔父の後妻をめぐる少女の回想「野天の人」、“町”に侵入してくる悪魔と戦う公社職員の挫折と希望「駆除する人々」ほか、期待の幻想小説作家による硬質にしてフェティッシュな7篇を収録。
製品名は「魅機MOUS-27」。愛称は「みきちゃん」。その正体は、お酌するために造られた「お酌ロボット」。仕事はもちろん、お酌すること…ではなく、探偵助手!OLスーツを身にまとい、人間と同じように話し、笑い、怒り、酒を飲み、そして酔っ払う。そんなみきちゃんが、骨董品を探したり、謎のカリスマの本性を暴いたり、ストーカーを追ったり…大奮闘!そして、少しずつ明らかになってゆく、みきちゃん“出生”の謎とは…?多彩な作品群で話題の小説家・平山瑞穂と、ポップ&ワンダーな作風で知られる漫画家・阿部潤が強力タッグ!小説の中にイラストを大胆に組み込んだ、驚異のオルタナティブノベル&コミックがここに誕生。
大好きなのに、いつまでも一緒にいたいと思ったのに、ぼくの心を一瞬で奪った君は“消えてしまった”。君の存在を証明するのはたった数分のビデオテープだけ。それが無ければ、君の顔さえ思い出せない。世界中の人が忘れても、ぼくだけは忘れないと誓ったのにー。避けられない運命に向かって必死にもがくふたり。日本ファンタジーノベル大賞受賞作家による、切ない恋の物語。
婚約破棄、リストラ…不幸のどん底に落ちた氏家譲は、ロック・スターになったという旧友・阿久津武蔵に再会し、彼の愛人の相手をするよう命じられる。さらに、武蔵が経営する怪しげな会社「ハピネス計画」で働くことになった譲は、ある謎めいた女性に遭遇して-。
たとえ世界中の誰もが君を忘れてしまっても、ぼくだけは君を憶えてる!君の存在を証明するのは、ぼくの手元に残されたたった数分の映像だけ。高校時代。優等生だったぼくの心を一瞬にして奪い去った君。大好きで、いつも一緒にいたくて仕方がなかった。なのに、いま、ぼくは君の顔さえも思い出せないんだ…。いったい、なぜ?君はホントに存在したの?-時の裂け目に消えゆく少女と、避けられない運命を変えようと必死にもがく少年の恋を描いた、激しく切ない恋愛小説。