著者 : 幸田真音
藤崎翔は外資系のクレジット・カード会社に勤務する27歳。米国本社の意向による大幅な組織改革=大規模なリストラ計画に飲み込まれた翔は、信頼する上司や同僚たちとともに会社を去り、ベンチャー企業を立ち上げる決意をする。5人でスタートした新会社は「エキノックス」。既成の概念から抜け出した新しいビジネス展開を模索する翔たちだが、なぜか最年少の翔が社長をすることにー。
かつて外資系証券会社の腕利きディーラーだった孝男は、元同僚だった冴子と十年ぶりに偶然再会した。遠い日のニューヨークでかわされた、いまだ実現していない約束。コインの裏表に託したふたりだけの運命が再び動き出した時、9・11WTCへのテロが…。著者が新境地に挑んだ、せつない大人の恋の物語。
「茶碗作りをやってみようと思っているんや」ずばぬけた商才で、近江の呉服古着商「絹屋」を瞬く間に大店に育て上げた半兵衛だったが、突然、京で大流行の磁器の製造販売を思い立った。窯も職人も販路も藩許もない。賢夫人と評判の留津は当初は猛反対していたのだが…。幕末の近江を舞台に、商人の清々しいロマンと豊かな夫婦愛を描く感動の傑作歴史長篇。
半兵衛が心血を注いだ窯は、彦根藩に召し上げられた。半兵衛は嘆願書を提出し、一縷の望みに賭ける。接収は、無償か有償か、代償はあるのか、役人との最後の大勝負が始まる。一方、井伊家十四男の鉄三郎が直弼として藩主となった。時は幕末の動乱期、譜代筆頭井伊藩は否応なく歴史の奔流に呑み込まれていく。近江商人と藩政の衝突を通して壮大な人間ドラマを映し出す傑作歴史巨篇。
財前有利子は、ふたば証券に勤める投資アドバイザー。ペイオフ解禁を機に、個人金融資産の貯蓄から投資へという流れの中、個人客の投資相談に取り組んでいる。「自分の顧客には絶対に損をさせたくない」という信念で、上司や先輩社員も一目置く存在だ。ある日、一人の老人が持ちかけた「二五〇〇万円を一週間で倍にしてほしい」という相談に、有利子の答は…。個人資産運用の世界を描くコミカル・エンターテイメント経済小説。
将来を嘱望されていた大手邦銀NY支店のディーラーが、滞在先のNYのホテルから飛び降りた。彼は、死の前日に偶然旧友の芹沢と再会を果し、謎のメッセージを残した。あまりに突然な友の死に衝撃と責任を覚え、死の真相を探ろうと決意した芹沢の前に、辣腕家としてウォール街でその名を知られた有吉州波が、そのまぶしい姿を現したー緻密な構成とスピーディな展開の金融ミステリー。
相次ぐ金融不祥事を傍観するだけの政府、ひたすら保身を図る大蔵官僚、すべてをひた隠しにして自分らだけの生き残り策を弄する邦銀重役たちー恋人の復讐を誓い、真相を公にしようと、州波は芹沢と力を合わせてある計画を実行に移す。それは彼女の知識も人脈も経済力も、すべてを賭けた途方もない秘策だった。著者がその専門知識を駆使して、日本金融界の闇を告発する衝撃作。
果てしなく続くゼロ金利政策。しかし、ペイオフ解禁を目前に控えた金融市場では、密やかな兆しが現われていた。暴れる市場をいかに飼いならすか-量的緩和を巡る暗闇の中、美貌の日銀副総裁・笙子は空前絶後の秘策を打った。日銀奥の院に徹底取材、その政策決定を通して国際市場の動向を予見する経済大作。
eビジネスで成功し時代の寵児となった男は、なぜ大銀行のビルから飛び降りようとしたのか。安値更新していた株が急騰、最新設備を誇る外資系通信会社で何が起こったかー証券会社を辞め、警備会社に再就職した中年男が直面する事件の数々。刻一刻と進化する経済社会を生き抜く人間たちを熱く描いた傑作。
日本国債のディーラーが遭った不審な交通事故。直属の部下・朝倉多希が任された翌週の入札で異常事態が発生した。未達ー国の募集総額に対し応札額が大幅に不足。「この国が破産する」未曽有の危機の背後には壮大な罠が。膨大な取材と卓越した視点が冴える迫真の経済小説。最新データによる待望の改訂版。
日本国債の未達に始まる大混乱は世界に拡大した。入札価格の不審な書き換え、事故に遭った上司が出入りしていた謎の団体。疑問を抱いた朝倉多希は、日本経済全体を揺るがす計画の存在を知る。官邸をも巻き込んだ破局のシナリオの行方は。その後、現実に起きた危機を予見し、大きな反響を呼んだ経済ドラマ。
江戸末期、京で流行る染付磁器は当時の最先端産業だった。この華麗な藍色の器に魅せられた男が妻の助けも借りて「湖東焼」という新事業を立ち上げる。藩主・井伊直弼も巻き込んだこの新しい挑戦に勝機はあるのか!?商いの醍醐味、職人の誇り、官と民の闘い、そして夫婦の情愛を丹念に描いた、著者初の経済歴史小説。
絹屋半兵衛が興した「湖東焼」は、職人の技術向上で素晴らしい器が焼きあがる。しかし販売ルートを牛耳る有田・瀬戸の巨大ブランドが大きな壁に。さらに融資の見返りに窯を藩に召上げられ…。幕末のベンチヤー・ビジネスは時代の荒波に翻弄される。現代日本にも通じる商売の駆け引きをダイナミックに描き出す、著者入魂の人間ドラマ。
「損失先送り商品」「サービサー」「バルク買い」-綿密な現場取材をもとに描き出した、不良債権に群がるカネの亡者たちの凄絶な闘いと日本経済の闇。不良債権の内幕小説。
邦銀ニューヨーク支店の花形ディーラーが高層ホテルから身を投げた。その死の直前「N.U.H.」というメッセージを受け取った旧友、芹沢は、真相を探るうち、ウォール街で辣腕を振るうトップセールスウーマン、州波に出会う。「あんな銀行なんかつぶれればいい」。彼女は邦銀に深い恨みを抱いていた。日本金融界の闇を抉る問題作。