著者 : 斎藤栄
雪の夜、新進作家の山路昌夫が妻ともども惨殺死体となって発見された。山路は聖徳太子ガン死亡説をめぐる殺人事件をテーマにした作品を書きあげていた。容疑者として浮かんだ人物は、山路と対立していた先輩作家・吉岡だったが、吉岡には鉄壁のアリバイがあった。-アリバイ・トリックと暗号を駆使して存分に本領を発揮した著者会心の代表作。
死体の傍にあったゲーテの詩は犯人を告発するダイイング・メッセージなのか?タロット占いをしていた二階堂日美子は彼女自身が死者になって驚く。身辺に何か不吉な犯罪を予感したとたん今度は親友門田京子が自宅密室で殺されたとの報せが。ゲーテの詩ファウストが事件の鍵をにぎる本格長編ミステリー。
いぬ語、ねこ語を自在に操る犬猫先生こと大苗吾郎は、教え子のモッペルこと小山田基夫と犬のスージー、猫のトミーを連れて大洗水族館へピクニックへ出かけた。夜遅く戻ってくると、居間には見知らぬ若い女が倒れていた。女は何者?そして何の目的で入りこんでいたのか?(「悪女の口の中」より)。他に珠玉の連作4編を収録した本格ミステリー集。
夫に内緒でセールスマンの投資勧誘に乗った多恵子は、三カ月後相手会社の倒産を知って愕然とする。そしてセールスマンの自宅を突きとめてみると、その男は殺されていた。幸せな妻の座から転落し、離婚寸前の多恵子だったが、事件は意外な方向へ進んだ…。本格ミステリーの秀作集。
産院から新生児が看護婦付きで誘拐される。わが子を奪われた母親は友人の二階堂日美子に助けを求めた。日美子のタロット占いはどう謎を解くか?捜査陣と犯人との息づまるかけひきのなか、誘拐交渉請負い人や私立探偵まで介入して思いがけぬ展開をみせる。人気の日美子シリーズ会心長編。
“殺人鬼”とサインされた脅迫状が鎌倉市長に届いた。「福祉予算を倍増せよ、さもなければ犠牲が出るだろう」と書かれてあった。最初は悪戯かと思われたが、インコ、猫、犬と殺されるにつれ事態は深刻になった。いぬ、ねこ語を話せる犬猫先生としては犯人探しに乗り出さざるを得ない。その捜査半ば、ついに恐れていた殺人事件が発生してしまう…。
横浜、神戸、函館、そして門司。港町を選んで連続殺人事件が起こった。港町探偵・ポートアイを名乗る旧友の遊佐るりと日美子は捜査を始める。二人の明晰な推理でそれぞれ犯人を割り出し、事件は落着するかに思われたが、門司の事件で犯人が身につけていた淡い紅花で染めた布から恐るべき真相が浮かび上がった。
いぬ語ねこ語を自在に操る犬猫先生こと大苗吾郎は、鎌光学園の教え子でモッペルこと小山田基夫の家に同居している。9月8日の満月の夜、すすきを採りに源氏山へ行ったモッペルは、西の空に飛び去った明るい炎の玉を見た。報告を受けた犬猫先生が現場に急行してみると、そこでさらに奇怪なできごとに出くわす。-巨匠が放つ異色SFミステリー。
日美子は友人の皆川昭子に招かれた。タロット占いのお礼にご馳走したいという。ところが昭子は何者かに刺し殺されていた。数日後、昭子から1枚のタロットカードが届いた。調べてみると歌麿の筆によるものらしい。さらに昭子の夫・治郎の許に脅迫状が、そして治郎も…。友の死に迫る日美子の名推理。
新婚旅行中、誘拐された妻を救出に、南アルプスの八紘嶺に向かった医師・武宮章吾は、無事妻を救出。誘拐犯は山中から変死体となって発見された。一方、川崎ではホステスが自宅ベランダから転落死していた。山中での変死体と疑惑の転落死。二つの事件の同一線上に浮かんだ一人の男とその殺意。完全なアリバイに守られた男の才略を打ち砕くため、章吾は不審死を遂げた女が残したメモを頼りに事件を洗い直すが…。
最先端の医療設備を誇る南川病院で、診療ミスによる死亡事故が発生した。この事故で妻を亡くした社会学者の阿相は、ミスを隠す病院の態度に疑念を抱き、毎朝新聞の記者・梶とともに責任追及に乗り出す。だが、健康な子宮を奪われた被害者の間から病院糾弾の気運が高まる中、執刀医の寿山が殺されてしまった。下半身剥き出しで、体の上に玩具のネズミを置かれた異様な姿で…。病院への復讐か。被害者同盟へ向けられる容疑。しかし、有力容疑者・阿相は失踪し、次いで第二の殺人が…。
乱診乱療の糾弾に揺れる南川病院の理事長が殺された。全病経協議会へ出席した九州の宿泊先でのことだった。しかも、その口にはサボテンがねじこまれて…。サボテンとネズミの意味するものは?失踪した阿相からの電話に混乱する捜査陣をよそに、連続する関係者の死。南川の過去に何が…・さらに犯人の魔手は女医・福田麻紀を殺め、死体の口に謎の玄米粥をつめこんだ…。人間の内にひそむ愛憎を宏大なスケールと絃密なトリックで描いた、シリーズ堂々の完結篇。
京都の旅荘八十八で、有名カメラマンが刺殺された。手掛かりは、死体の傍らにあった芥川龍之介の名作『羅生門』と、紫色の可憐な花〈羅生門蔓〉の栞だった。このツアーを企画した夏木梨香は、姉の香奈を通して警視庁の小早川警視正に助けを求めた。だが、解決の糸口が見つけられぬまま、伊豆の蓮台寺で第二の殺人が起こった…。現場に残されていた『羅生門』と栞の意味は?さらに第三の殺人はあるのか?ミステリーの名手が贈る旅情あふれる本格推理。
タロット占いの名手・二階堂日美子の友人・京子が、柳島ロミを連れて日美子を訪れた。ロミが信仰する〈日本精霊教〉教祖の戸田芳香が不吉な予言をしているというのだ。日美子の占いでも同じ結果が出てしまった。その数日後、ロミが失踪し、日美子は名古屋の精霊教本部に教祖を訪ねるが、何ら手がかりは得られなかった。が、ロミから京子に宛てて助けを求める手紙が…。タロット日美子シリーズ、書下し長篇。
神奈川県警二階堂警部とともに、“奥の細道3百年”で沸くみちのく温泉旅行を計画していた日美子に友人梅枝葉が訪れた。葉の娘真理の旅の安全を占ってほしいという。真里もまた〈サンタ芭蕉〉の企画でサンタの一人に当選し、東北旅行を予定していた。東北の知人へのプレゼントを配達するこの〈サンタ芭蕉〉の旅を日美子はタロットで占ったが、カードは非情にも不幸を予言!あえて旅に出た真里を襲う魔の手。さらに芭蕉の足跡をたどる〈サンタ芭蕉〉のメンバーが次々と殺されて…。二階堂警部の必死の追跡がはじまる。名作『奥の細道殺人事件』を凌ぐ著者会心の書下ろし長編推理。
横浜のマンションで大学浪人生がガス自殺を図った。その数日後、浪人生の保険を査定していた岩佐が、何者かに殺されたうえに住まいを放火された。この火災は、さらに隣室の主婦をも巻き込み、彼女は重傷を負ってしまう。毎朝新聞の梶三郎は、避難梯子の欠陥によって主婦が怪我をした事に注目し取材を開始するが、そこには岩佐殺害に関わる謎と意外な人間関係が浮び上ってきた。
焼却炉の中から死体で発見された女が残した1枚の手紙。そこから判明した消防士・有本の殺人動機。だが有本は、湘南で起きたLPG運搬車爆発事故で多くの人命を救い、現場に居合わせた梶の記事もあいまって、一躍英雄として注目される。捜査陣の困惑をよそに続く“火”の惨劇と連続殺人。狂気の炎はさまざまな人間の愛憎を巻き込み、事件はクライマックスへと燃えあがる。大河ミステリー第2部完結篇。
横浜の分譲マンションの地下受水槽から、若い女性の腐乱死体が発見された。そして、時を前後して起きた幼女誘拐事件。新聞記者・梶は、一見何ら関連性のない二つの事件に〈水問題〉が絡んでいる事に着目し、一人調査を開始する。だが、二つの事件は交錯しえないばかりか、関係者に失踪・変死が相次ぎ、混迷の様相を呈してきた…。著者の代表的長篇推理三部作の第一弾。(全二巻)