著者 : 新井素子
澪湖は大学三年生。父の妹の和を幼少の頃から母親より慕っていた。その叔母が、最近、どこかおかしい。叔母夫婦はようやく恵まれた愛娘を生後五カ月で亡くしていた。それで、精神に変調を来したのだろうか。大きな悲嘆が彼女を壊してしまったのか…澪湖の疑惑は深まるばかり。不安な彼女を支えてくれたのは、オタク青年木塚くんだったー独自の文体で、人格変容の恐怖を探る長編。
あたし=新井素子の小説のキャラクターたちが現実世界に実体化して以来、驚愕の事態の連続。自宅全焼に誘拐騒ぎ、宇宙人に命を狙われたり。その上、人間に虐げられた動物に同情したキャラクターたちが動物革命を起こす。猫やライオン、カラスにゴキブリの大行進。この混乱の原因は素子にあるというけれど…いたいけな少女が偶然引き起こした絶句すべき大事件の行方は!?番外篇「すみっこのひとりごと」と新あとがきを収録。
全世界で、あるいは全宇宙で永遠に読み継がれるべきマスターピース集。これ1冊で、星新一作品世界のすべてがわかる。星チルドレンの旗手・新井素子が選ぶショートショートの最高傑作54。
本書は、日本SF作家クラブが中心となって企画された初めてのオリジナル・アンソロジー。新しい世紀の始まりにあたって、稀代のSF作家たちが提示する、全篇新作書き下ろしの競演。いわばミレニアム特別企画として、発案された。その結果、ベテランの作家から新人まで、いずれも力作が集まった。さまざまな主題と問題作が共存するこのSF世界は、二十一世紀に開かれた科学文明の世界観にわたる夢を織り込んでいるといっても、過言ではあるまい。
ぼくはわにわに。素子さんちに棲む、400人(ぬい)余りのぬいぐるみの中でも名門の“わに族”出身なのだ。白くてチャーミングなボクに、原稿依頼がきて、一族は大騒ぎ。事件にはこと欠かなしい、張り切って書きました。仲間たちと素子さんとダンナとその愛猫ファージの、十二の楽しいお話です。
あなたがとっても好きだから、あたしは自分がわからなくなる。あなたのことだけを考えていたいのに。あなたは今夜も、まだ、帰らない…。三津子と忠春は結婚七年。旦那様は会社で出世頭だし、夫婦仲も円満で、三津子は絵に描いたように幸せな専業主婦。なのにー愛する人のことを想うひたすらな心を静かに蝕んでいく孤独の闇。日常生活に潜む正気と狂気の狭間を描くサイコ・ホラー。
本来ならば〈高貴なる血〉をひく者として王位に就く筈だった王女ディアナ。幼くして父の国王を失ったため、叔父のカイオスが暫定的に王に。ディアナが王位を継承するには同じディアを持つティークと結ばれる必要があった。〈運命〉に導かれるように恋に落ちる二人。が、カイオスの陰謀によりディアナは将軍ムールの許へと嫁がされてしまう。ディアナがティークの不義の子を身篭ったことから悲劇が始まった…。
小学4年生になっても、ぬいぐるみの「くますけ」と片時も離れられない成美は、交通事故で突然両親を亡くして、ママの親友の裕子さんに引き取られた。裕子さんはとても優しい人だけれど、成美には誰にも言えない秘密があるから、くますけ以外は信じることができない…。正常と異常、現実と非現実の境界にある閉ざされた少女の心の内面をモダン・ホラーの手法で描く異色の長編。
高貴なる血を受け継ぐディアナ。白い花の館で、狂気の中で生きるディアナ。彼女の息子である、将軍リュドーサ-ムール5世-が戦死した。カトゥサ、26歳の時であった。彼もまた、父こそ違うがディアナの子。出生の秘密ゆえに王への道ではなく、大神官への道を選んでいた。しかし、運命の血は、それを許さなかった。将軍カトゥサ-ムール6世-。〈運命〉は流れ出したのだ。王となるための…。数奇な運命を歩んだディアナ、ムール帝国の始祖、カトゥサ・ディア・ムール。その若き日の苦悩と悲劇を描く壮大な物語。
村で6年に一度の大祭の夜ー。神へのいけにえとして選ばれた娘たち。軍神ラーラの申し子で勇敢なサーラと英知の神デュロプスの申し子で賢いトゥード。神はいけにえを生きたまま喰うという。しかし神を殺すか、うまく逃げることができれば…。二人の美少女、サーラとトゥードは、神と闘うべく、神の館〈迷宮〉へ…。