著者 : 早乙女貢
美濃国主土岐氏に連なる明智光秀は、浪々の身となり諸国を流れ巡り、やがて尾張の織田信長のもとで働くことになる。歌道、故実式目、軍学を究めていた光秀は瞬く間に織田家の出世頭に駆け上がり、城持ち大名となる。しかし、遂に信長を討つべく立ち上がった。本能寺の変の後、光秀が辿った数奇な運命とは!
会津藩士の三男坊・佐々木只三郎。精武流の剣と宝蔵院流の槍を学び、立身を夢見て江戸へ。やがて京へ上った只三郎は、その剣技と知謀を認められ、京都見廻組与頭となる。討幕を呼号する尊皇過激派の跳梁跋扈が熾烈化すると、まず尊皇派の清河八郎を暗殺、そして坂本竜馬を狙い…。表題作他、激動の幕末を至純な情熱で駆け抜けた若者たちと、彼らを愛した女たちの切なく哀しい生き様を描く全七篇。
江戸。幕閣は公然と賄賂を取り交わし、行政治安は紊乱を極める田沼時代。御家人として世を捨てた暮らしの斑塔十郎は、自害を願う女と出遭う。仔細ありそうなその女は、塔十郎の情けによって思いとどまったと見えた。だが、大商人山崎屋の寮に田沼意知が訪れた夜、女は全裸で殺されるー。ニヒルな塔十郎の剣が、圧政に苦しむ庶民を助けて悪を斬る!傑作時代長編。
三国峠の戦いで勝利した西軍は越後路へ雪崩れ込み、会津藩の飛地小千谷を占領した。越後口の要衝である長岡藩の家老河井継之助は、藩の命運を賭けて、懸命に西軍の軍監岩村精一郎らに会見を申し入れる。しかし、錦旗を振りかざす岩村は、これをにべも無く一蹴。河井は、ついに西賊撃攘を叫び、長岡藩兵を率いて行動を起こす。吉川英治文学賞受賞作品。
逆賊の汚名を被せられた会津藩主松平容保は徳川慶喜から帰国を命じられ、江戸を発った。その後、会津藩士たちが藩邸引き払いの作業を急ぐ江戸の街は、東征軍への不安から治安が悪化していった。そんな中、浅草本願寺で旧幕臣たちが彰義隊を結成し、会津藩士鮎川兵馬らもそれに加わった。士道に殉じ“義を彰す”彰義隊は、上野の山に拠って官軍に対することになる。吉川英治文学賞受賞作品。
身分違いの大名のお姫さまに一目惚れして失恋した次郎吉は、生来の敏捷さを買われて火消し人足になった。屋根瓦を音もなく走る練習を重ねながら、火付けで材木の高騰を狙う悪徳商人を懲らしめたこともあった。正義感が強かったのである。その次郎吉が、大名屋敷専門の盗っ人に身を落とした理由は…。ご存知“鼠小僧”誕生までの痛快時代娯楽。
関八州取締役の渋谷和四郎は、酒の上の些細なことから上役を斬り、江戸を出奔した。旅先で生きるために博奕打ちの用心棒になり、親分の娘に惚れられる。和四郎に殺された上役の妹おそのは、兄の仇を討つべく和四郎の後を追うが、彼女もまた和四郎に想いを寄せていた。-サムライを捨てて旅鴉になった和四郎の前に展開する恋と剣の長編時代娯楽。
“関が原の戦いに敗れ、六条河原で斬首されたのは、ほんとうに石田三成だったのか?”-本多正信は黒い疑惑にとらわれた。“敗軍の将たる者が切腹もせずに、縄目の恥辱を、ああもやすやすと受けるものか?それに助命をこうにしてはあまりにも尊大な態度だった。もしや…?”歴史の常識に挑戦する巻頭の「望蜀の炎」ほか、全7編。戦国にあやなす、武将たちのくろぐろとした欲望を鮮やかに描ききった傑作短編集。
剣の腕は東軍流免許皆伝。男っぷりは当代の人気役者・尾上菊五郎そっくりの御家人高木左京。何が不満なのか世をすねての強請り、騙りの毎日だが、根は気のいい正義漢。その左腕には脅しを効かせるための無数の刀傷。人呼んでうでの左京。そんな左京をつけ狙う岡っ引や、気っぷと男っぷりに惚れ込んだ水茶屋の女、花魁などが入り乱れる痛快時代巨編。
時は戦国、幻術使い果心居士に導かれてその非情な人格を形成した少年赤丸は、貧困放浪の幼少時代から強奪、放火、殺人と残虐の限りをつくす。長じて彼は、畿内掌握の野望に燃え、無類の権謀術数を発揮して主君三好長慶を自在にあやつり、ついには将軍足利義輝をも弑して実力大名にのしあがった。乱世が生んだ下剋上の武将松永弾正久秀の悪の生涯を描く会心の長編。
世界最大の豪華客船クイーン・エリザベス2世号(QE2)。地中海をゆっくりと周航する船内で、カメラマンの星五郎は、各国の美女を相手に情事の限りをつくしていた。が、その背後では、出航前に偶然撮影した一本のフィルムを狙って、正体不明の一味の影が…。時代小説作家として知られる著者が放つ、異色の長編サスペンス。
幕末・維新前夜、動乱の時代を過激に生きた男たち。-土佐藩・吉田東洋を斬った那須信吉をはじめ、寺田屋騒動の首謀者・吉村虎太郎、薩摩隼人・美玉三平、赤穂の山下鋭三郎、人斬り以蔵…。時の流れの急先鋒となった下級士族たちの半生を描く異色時代小説。