著者 : 朝倉かすみ
日雇い派遣、早期退職、天涯孤独、シングルマザー… 幸せかどうか分からないけど、生まれてきたから生きている 明日への諦念と今日への執念を抱える人々の生きざま 令和枯れすすき ドトールにて もう充分まじで 非常用持ち出し袋 みんな夢の中
本を読み、人生を語る。 人が生のままの姿になり言葉が溢れだす。 そんな幸福な時間をぎゅっと閉じ込めたい、という願いが込められた物語です。 * 小樽の古民家カフェ「喫茶シトロン」には今日も老人たちが集まる。 月に一度の読書会〈坂の途中で本を読む会〉は今年で20年目を迎える。 最年長92歳、最年少78歳、平均年齢85歳の超高齢読書サークル。 それぞれに人の話を聞かないから予定は決まらないし、連絡は一度だけで伝わることもない。 持病の一つや二つは当たり前で、毎月集まれていることが奇跡的でもある。 なぜ老人たちは読書会を目指すのか。 読みが語りを生み、語りが人生を照らし出す。 幸福な時間が溢れだす、傑作読書会小説。 第一章 老人たちの読書会 第二章 いつかの手紙 第三章 ご返事ご無用 第四章 恋はいいぞ 第五章 冷麦の赤いの 第六章 一瞬、微かに 第七章 おぅい、おぅい
憧れ。束縛。楽しい思い出。恐怖の記憶。一枚の布が、さまざまなかたちで波風を立てる。九人の人気作家によるスカートモチーフの新作短編集。
北海道で独り暮らしをするおもちさん、83歳。夫は施設に入り、娘は東京から日に二度電話をくれる。実は持病が悪化して、家族がおもちさんの生活のすべてを決めていくことに。不安と苛立ちと寂しさと、懐かしさと後悔とほんのちょっとの幸せと、揺れては消える老境の心情が、静かに切々と迫ってくる。ベストセラー『平場の月』の著者が、ひとりの老女の内面に寄り添う、新たな代表作。
年の瀬の迫った北の街。29歳の堅物女・テンコはかつての同居人“ リコ” の元カレ・根上と再会する。ふいにテンコの前から消えたっきり行方知れずとなったリコはいま、どこでだれと過ごしているのか。追いかけても掴めない、リコの面影をさがす一歩一歩の道のり。 私たちはどこからきて、どうしていまここにいるのか。優しい出会いの物語が、再び始まる。
小学校の帰り道に拾った光る欠片。敵と闘って世界を救うヒロインに、きっとあたしたちは選ばれた。でも、魔法少女だって、死ぬのはいやだ。(表題作)など、少女たちの日常にふと覘く「ふしぎ」な落とし穴。
人生を八十年とし、それを四で割ってみた。 四は四季の四である。 すると、今年五十のわたしは、秋の真んなかにいたーー。 どこにでもある日々が、ここにしかない物語に変わる。 山本周五郎賞受賞&直木賞候補作『平場の月』の著者による、 大人の心に寄り添う、切なく優しい短編集。
大学生・茶谷は、結婚式場でのバイト中、美しい花嫁・眉子に一目惚れをした。彼女を分かってあげられるのは僕だけだからと、夫の会社に潜り込んで近づいていく。しかし、人を喜ばせることに依存して生きる眉子には、その過剰な自意識すら満たすべき対象となっていたーー。過去の記憶も呼び起こし、思いのすれ違いが生んだひずみは、--暴走を始める。
奇妙で可愛く、時におぞましい植物たちは、どこか人間と似ているーー。他の植物にくっついて生きるコウモリランは、若い男性を家に住まわせる年配の女性と。条件に恵まれると繁殖するホテイアオイは、とある家に住みつき妊娠する少女たちと。日陰が必要なシッポゴケは、自身の女性性を憎む少女と。人間の不可思議な行動を植物の生態に仮託して描く、アサクラ版・植物誌全七作。
「時をまたいで仕掛けた、あの恋のつづき」 亡くなった祖母の思い出がたっぷりと染み込む家で、突然の思いつきで始めた「タイム屋文庫」。 タイムトラベル専門の貸本屋というアイデアは、実は、かつて置き去りにしてしまった恋のつづき。 そこで彼女はたった一人の客を待つつもりだったのだが………。 考えなしでヌケ作の三十路女性が、心機一転をはかって繰り広げるラブストーリー。その結末は!?
「おまえ、あのとき、なに考えていたの?」 「夢みたいなことだよ。夢みたいなことをね。ちょっと」 朝霞、新座、志木ーー。家庭を持ってもこのへんに住む元女子たち。元男子の青砥も、このへんで育ち、働き、老いぼれていく連中のひとりである。須藤とは、病院の売店で再会した。中学時代にコクって振られた、芯の太い元女子だ。 50年生きてきた男と女には、老いた家族や過去もあり、危うくて静かな世界が縷々と流れるーー。心のすき間を埋めるような感情のうねりを、求めあう熱情を、生きる哀しみを、圧倒的な筆致で描く、大人の恋愛小説。
小学4年生の朝日を中心に、マイペースな父、母代わりのしっかり者の姉、愛猫のくろちゃん、そして家族を取り巻く個性豊かな人々。 ともに笑い、泣き、怒りながら家族の絆は強くなっていく。 アットホームな家族の予想外の結末!あなたの目頭はきっと熱くなる。
愛する人との内縁関係を貫いた曾祖母、族のヘッドの子どもを16歳で産んだ祖母、理想の家庭像に邁進しすぎる母という、強烈な女系家族に育つ女子高生の若菜は、自分のキャラのなさに悩んでいた。文学少女キャラの友人・高橋さんと家出をしてみたり、彼女の初恋や家族の恋への助太刀を決め、名脇役を目指してみたり。はたして若菜は自分のキャラと、皆の幸せを めるか。かしまし迷走青春劇。
羽衣子の親友・みえ子が遊佐家に四週間ほど居候することになった。みえ子は異様な容貌だが、大富豪の娘。美しく貧しい家庭で育った羽衣子とは正反対。二人で支え合ってきたが、やがて羽衣子は「まともな家庭」を手に入れる。その遊佐家に住み始めたみえ子は家族の心を掴み、完璧だったはずの家庭に徐々に綻びが見え始め…。二人の女の歪な友情が家族に与えたものとは?
ご近所さん、同級生、バイト仲間や同僚ー。夢とか恋バナとか将来を語ることもあるけど、ほんとうに大切なことはそんなに話してないかもしれない。女同士ってちょっとむずかしい。でもたった一人は寂しいからやっぱり「おともだち」は必要だ。仲良しとは違う微妙な距離感を描いた短編集。書き下ろし「最後の店子」「百人力」を加えた10作品を収録。
自分がまがいものであることは承知の上で、スーパースターになって2010年代を疾走することを夢想する堂上弥子(どうのうえやこ)。耳の中で鳴る音に連れられ、どこかに行きたいというきもちがつねにうねっていた鈴木笑顔瑠(すずきにこる=ニコ)。 北海道の小さな町で運命的に出会ったふたりの中学生は、それぞれ「ここではないどこか」に行くため、一緒に「仕事」で有名になることを決める。その方法は弥子が後ろに回り、ニコが前面に出るというもの。最初の仕事は読書感想文コンクールでの入選。弥子が書いてニコの名前で応募した感想文は見事文部科学大臣奨励賞を受賞、授賞式にはニコが出席した。 ふたつめの仕事は、史上最年少で芥川賞を受賞すること。ニコの曽祖父の遺品の中にあった小説を弥子がアレンジして応募した小説「あかるいよなか」は、芥川賞の登竜門となる文芸誌の新人賞を受賞する。作品はその後順当に芥川賞にノミネートされるが、それは「てらさふ」仕事を続けてきた、ふたりの終わりのはじまりだったーー。 てらさふーーとは「自慢する」「みせびらかす」こと。「てらさふ」弥子とニコがたどり着いた場所とは? 女の子の夢と自意識を描きつくした、朝倉かすみの野心作。
朝倉かすみが挑む少女×ふしぎの物語。表題作のほか「留守番」「カワラケ」「おもいで」「へっちゃらイーナちゃん」の全5話。少女たちの日常にふと覘く「ふしぎ」な落とし穴。
もう若くない、まだ若い、そんな複雑な気持ちを抱えた、人生の折り返し地点にきた女と男が抱える様々な問題ーー家族、仕事、そして恋愛ーーを切り取る、短編集。「たそがれどきに見つけたもの」「その日、その夜」「末成り」「ホール・ニュー・ワールド」「王子と温泉」「さようなら、妻」 「たそがれどきに見つけたもの」--SNSで高校時代の友だちに久しぶりに再会。彼女はまだ、そのときのことを引きずっているようで。 「その日、その夜」--きむ子は思った。(お尻、出したまま死ぬのはいやだなあ)と。 「末成り」--ちょっと話を盛りすぎちゃったかな……ゼンコ姐さんー内田善子は家に帰って、服を脱ぎ濃いめのメイクを落としながら考える 「ホール・ニュー・ワールド」--コンビニのパート先でちょっと話すようになった朴くんに、淡い恋心を抱く智子。朴くんも、やぶさかではないんじゃないかと思っている。 「王子と温泉」--結婚して、子どもが生まれてから初めてのひとり旅。夫と娘に送り出されて行った先は、贔屓にしている”王子”との温泉ツアーだった。 「さようなら、妻」--1985年、6月。妻と初めてふたりきりで会った日。彼女はあじさい柄のワンピースを着ていた。 「たそがれどきに見つけたもの」 「その日、その夜」 「末成り」 「ホール・ニュー・ワールド」 「王子と温泉」 「さようなら、妻」