著者 : 朝比奈あすか
児童養護施設で暮らす高校生のななみ。「馬鹿にされちゃアいけない」と小学生の頃から祖母に言われ続けた言葉を胸に、医学部進学を目指して受験勉強に励む日々を送っている。進学費用のための懸命なアルバイト、ダンス部仲間との最後の文化祭、初めての彼氏…など、高校生活を色濃く過ごすなか、高三の夏、ななみが自分の意志で選びとった道とはー。新たな世界へと踏み出す少女の心許なさを掬いとりながら、前途を温かく照らす感動長編。
専業主婦、有泉円佳の息子、翼は、小学二年生。興味本位で進学塾の全国テストを受け、中学受験に挑戦することになる。最大手の進学塾「エイチ」に入った翼は、男子四天王といわれる難関校を狙う。中高一貫校を受験した経験のある夫真治と、それを導いた義父母。中学受験にまったく縁のなかった円佳が、塾に、ライバルに、保護者たちに振り回され、世間の噂に、家族に、そして自分自身のプライドに絡め取られていくー。過熱する親の心情を余すところなく描いた、凄まじき家族小説。
六年三組の調理実習中に起きた、洗剤混入事件。犯人が名乗りでない中、担任の幾田先生が放ったその残酷な言葉は、子どもの世界に終わりと始まりを連れてきた。いじられ役、優等生、『問題児』、クラスの女王の親友。教室での立ち位置がまったく違う4人は、苦悩と希望を抱えながら自分の居場所を必死に探し求めていて…。教室というちっぽけな王国の先に、本当の世界が待っている。
中高女子校で共に過ごした潤子、みさ緒、礼香。ただいま34歳。「彼氏いない歴=年齢」だった礼香が、見合い結婚することになった。潤子はにわかに焦り、結婚相談所に入会、みさ緒もダメ男と手を切ってマンションを買おうとする。ありがちな選択をした彼女たちが紡ぐ、ありがちではない自分だけの婚活ストーリー。
「わたしは人間タワーには反対だけど、人間タワーをやらないことにも反対」無数の人々の思いを巻き込んで、想像を超えた結末が訪れる…幾何学のように精緻に組み立てられたノンストップ群像劇!組体操をめぐって展開する人間たちの物語。
中学高校の同級生だった洋美とリラは乳児の予防接種会場で偶然に再会。育児に悩む洋美にリラは手を貸し、二人は“ママ友”となった。やがて洋美の子・敏光とリラの子・光鳥は同じ幼稚園、小学校へと進むが、“問題児”の敏光の乱暴がひどくなり、その対象は光鳥に。リラはついにあることを決断する…。母親の無力感、悔しさ、葛藤を浮き彫りにする著者会心の長編!
親友のばんちゃんが死んだ。以来、俺は口を閉ざすようになった。そんな態度がうざいという裏掲示板の書き込みをきっかけに、刃のような言葉が飛び交う。あの夜、ばんちゃんに対して俺が密かに計画していたことは、誰も知らないー。トンとあだ名をつけて蔑んでいた男の子。あたしのことが好きだったらしい。中二の冬、突如この世からいなくなった。中学を卒業して10年、夜の街で働くあたしは壊れそうになる「心」の守り方を、かつてトンから教わったー。表裏一体の二編から立ち上がる、未熟な魂のあやうさときらめき。
新人採用プロジェクトを完遂せよ。アラフォーの川俣志帆子はそのチームリーダーに突如指名された。ネットの裏工作や学生との心理戦を制し、成果を上げるが、なぜか心は満たされない。同居する男には惑わされ、猫カフェの猫ザビーだけが癒やし。このままでいいの?独身女性の働く辛さをリアルに描く!
「次は女の子を産むわ」そう宣言して産み分けに躍起になる妻。そんな妻の決断に淡い違和感を抱く夫。互いに心揺れる日々を経て、夫婦がたどり着いた先はー。思いがけないラストが深い感動を呼び起こす表題作「憧れの女の子」。男女の心の行き違いから浮かびあがる人間の本質を鮮やかに掬いとった物語、全5編収録。
バブル崩壊後の1993年、出版社に就職したひとみの半生は変転の連続だった。不本意な配属、失恋、プロポーズ、予期せぬ妊娠、離婚…。時に家族や友人を裏切ってまで仕事に貪欲であり続けたひとみの20年間を、人と人をつなぐツールの変遷や、移りゆく世相を巧みに織り込んで描き出す。女の狡さと黒い本音全開のこの物語は、あなたの魂を捉えて離さない
新進IT企業「クレイズ・ドットコム」の採用プロジェクト・リーダーに抜擢された志帆子。「ブラック企業」の汚名を返上して学生を確保すべく、情報戦と心理戦を駆使して成果を上げていく彼女だったが…。「就活」の裏側を超リアルに描く注目作!
仕事に生きてきた洋美と専業主婦のリラは、乳児の予防接種会場で再会した。同級生だった彼女がまさか自分と同じ時期に同学年の男の子を産んでいたなんて。頼もしいママ友ができたと好ましく思っていたが、こども同士の諍いをきっかけに、悩み苦しみ傷つき葛藤する。やられるばかりの息子が歯がゆい、乱暴な息子を愛せない。女たちの心の叫びを描く、著者会心の書下ろし長編。
長女・征子は百貨店の幹部社員。独りで生きると決めてマンションを購入した。次女・月子は専業主婦。幼い娘を放り出しブログの世界に逃避している。三女・凪子は姉たちにも告げていない体の秘密を抱えたまま結婚した。母・佐喜子は夫と姑への我慢が限界に達し、ついに家出をする。三人姉妹と母親、それぞれの傷を抱えて生きる四人の女性の哀しみを包み込む物語。
東大卒、有名企業に就職し、弁護士の夫を持つ29歳の私。結婚して仕事は辞めたけれど、優しい夫と安定した生活がある。なのになぜこんなに腹が立つんだろう?ある日再会した、かつて神童と呼ばれた同級生。その話に動揺した私は、まだ自分に何かを期待しているのだろうか。第49回群像新人文学賞受賞作。