著者 : 村上博基
エジプト・アメリカ合同軍事演習「ブライト・スター」は両国大統領の観閲の許、平穏裡に挙行される筈だった。だが、リビアの密使が放った両大統領への銃弾が「演習」を「紛争」へと急転させた。直ちにエジプトはリビアへ侵攻、〈限定報復〉を試みるが、事態はソ連による化学兵器の使用にまで拡大。米軍演習部隊は緊急展開を開始するが…。コイルの緻密な筆致が冴える迫真の軍事フィクション。
ヨーロッパ各地で頻発する、ユダヤ人を標的としたアラブの爆弾テロ。その黒幕を追及するイスラエル情報機関は、イギリスの女優チャーリィに接触し、ある秘密作戦への協力を依頼する。その作戦とはー。イスラエル側が拉致したアラブ人テロリストの恋人になりすまし、テロ組織に潜入して情報を入手するというものだった。架空の人格を緻密につくりあげたチャーリィは、女優としての全才能を賭けて危険な演技に挑んでゆく。
イスラエルとアラブとの熾烈な諜報戦の渦中に身を投じたチャーリィ。テロ組織の一員になることを申し出た彼女は、軍事訓練を受けるべくパレスチナの難民キャンプへ送り込まれた。そこで彼女が見たものは、果てしなき暴力と憎悪の応酬を続ける二つの民族の悲劇的な姿だった。やがて訓練を終えたチャーリィに、イスラエル要人暗殺の任務が与えられるが…。巨匠がスパイ小説に託して中東問題の本質に鋭く迫った衝撃の巨篇。
陰謀と紛争のただなかに、常に英国情報部の男たちはいた。ソ連への抵抗に燃えるラトヴィアに、共産党支配下のポーランドに、テロが炸烈するベイルートに、クメール・ルージュの虐殺が続くカンボジアに-。東西新時代を迎えた今、引退した冷戦の老戦士ジョージ・スマイリーと新人研修所チーフのネッドが語る、情報部の知られざる闘いの年代記。エスピオナージュの第一人者が、オールスター・キャストで華やかに自らのヒーローを送る、最新傑作。
わたしは口腔外科医のアダムズ。ドクと呼んでもらおう。ケープ・コッドの沖に不審な座礁船を目撃したわたしは、友人のダイバーに偵察を頼むが、翌日、彼は溺死体となって発見された。わたしの余計な好奇心がこんな事態を招いたのか。自責の念に駆られ、わたしは自ら謎の座礁船と友人の死の真相を調べはじめる。海と船を愛し冒険に憧れる中年男ドク・アダムズの活躍を描く、アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀長篇賞受賞作。
夜霧を引き裂く悲鳴を聞いて駆けつけたハマーが見たものは、死の苦悶に足を絡み合わせた、あられもない姿の美女の死体だった。誰かが彼女を縛り上げ、鞭で引っぱたいて殺したのだ…。調査を始めたハマーに伸びる何者かの魔手。執拗な追跡の末に浮かび上がったものは、美女を食い物にする謎の組織の存在だった。残虐な殺しの背後にひろがるどす黒い欲望にハマーの怒りが炸裂するセンセーショナルな問題作、遂に文庫化。
トーニ・コンロイは166分署の婦人警官として、生まれ育ったマンハッタンの下町に赴任してきた。彼女は自分の娘と弟の生命を奪った麻薬に対して復讐戦を挑むつもりだった。だが、ひそかに当時の捜査記録を見て、2人の死が事故ではなく、殺人だったことを知る。トーニは勤務が終わると私服に着がえ、ひとり犯人を求めてジャンキーたちのたむろする街に出る…。異色の警察小説。