著者 : 村松潔
英国グラスゴーの病院で終末期医療を受ける少女レニーは17歳。好奇心旺盛で老人向けのアートセラピーに潜り込み、83歳のマーゴと知り合う。ふたりは自分たちが生きた証として、合わせて100年の人生を100枚の絵にして残すという計画を立て、1枚の絵を描くごとに、絵にまつわる人生の1コマを相手に語ってゆくー。生と死と愛という、人間にとって根源的な重いテーマを正面から取り上げながら、明るく風変わりなふたりの愛すべきヒロインと、個性ゆたかな登場人物が織りなすデビュー作。
独身男のチャーリーは、母親の遺産で最新型アンドロイドを購入した。名はアダム。どんな問題も瞬時に最適解を出すアダムのAI能力を利用して、チャーリーは上階に住む美しい女子学生ミランダと恋仲になる。だが人に言えない過去を秘めた彼女に、アンドロイドのアダムが恋心を抱きはじめる。AIと人間は愛し合えるのか?自我を持った機械に恋路を邪魔されたチャーリーに、アダムを壊す権利はあるのだろうか?架空の1982年を舞台に繰り広げられる、未来の社会問題へのユーモラスな示唆に富んだ長篇。
真冬のニューヨーク。かつての恩師であり、誰よりも心を許せる男友だちが自殺したことで、深い喪失感にとらわれている女性作家。そこに、男が飼っていた巨大な老犬が現れるー。ペット禁止の狭いアパートで、心ならずもこの犬と同居することになった彼女は、主を失った犬の哀しみを抱きとめ、世話をするうち、やがて慰めを得るようになる。次第に衰弱する犬との残された時間。愛や友情のかたち、老いること、記憶や書くことの意味…。深い思索が丹念に綴られた、2018年全米図書賞受賞作。
優しくぼくを見つめる、母と思っていたその人は母ではなかった。ぼくは捨て子だったのだ…。家を追われた8歳の少年レミは、謎の老旅芸人ヴィターリスの一座に加わり、芸をする動物たちとともに巡業の旅に出発する。大都会から炭鉱町まで、時に厳しい荒野を渡り、吹雪を耐え、川を越えーレミは真の幸福を求めて旅を続ける。時代を超えて読み継がれるフランスの児童文学の傑作を完訳!
旅の道中、時に仲間を失いながら出会いにも恵まれるレミ。イギリス人貴族マダム・ミリガンとアーサー母子。弟のように付き従うマティア。レミを家族のように遇してくれた花づくり農家アキャンの一家。国境を超えてイギリス、スイスへと旅を続け、ついに生母の居場所をつきとめるのだがー。レミは永遠に別れることのない本当の家族と巡り会うことができるのか。涙と感動の物語、完結編。
誕生の日を待ちながら、母親のお腹のなかにいる「わたし」。胎盤を通して味わうワイン、ポッドキャストで学ぶ国際情勢、そして父ではない男が囁く愛の言葉と、ある不穏な計画ー。胎内から窺い知る、まだ見ぬ外の世界。美しい母、詩を愛する父、父の強欲な弟が繰り広げる、まったく新しい『ハムレット』。サスペンスと洞察が冴える極上の長篇小説。
裕福な商人の末娘ベルは、とびきりの美貌と優しい心根の持ち主。ある日、父親が見るも恐ろしい野獣に捕えられると、彼女は身代わりを買って出た。ベルに恋をした野獣は、正直さに心を打たれて彼女を家族の許に返すが、喪失の悲しみに身を焦がし、命を捨てようとする。その姿を目の当たりにしたベルはある決意をするー。人生の真実を優しく伝え、時代と国を超えて愛され続ける物語13篇。
仙女の呪いで百年の眠りについた美しい王女ー。王子様のお迎えで目覚めたのちの恐怖を描いた表題作のほか、赤頭巾ちゃん、長靴をはいた猫、親指小僧からシンデレラまで。あの懐かしい童話が新鮮な翻訳と美しく読みやすい活字、繊細な挿絵とともに甦りました。不思議でロマンチックで楽しい。そしてちょっとだけグロテスクで残酷…。そんなペローの童話の世界へ、ようこそ!
法廷で様々な家族の問題に接する一方、自らの夫婦関係にも悩む裁判官のもとに、信仰から輸血を拒む少年の審判が持ち込まれる。聡明で思慮深く、しかし成年には数ヵ月足りない少年。宗教と法と命の狭間で言葉を重ねる二人の間には、やがて特別な絆が生まれるがー。二つの人生の交わりを豊かに描きながら、重い問いを投げかける傑作長篇。
大学教授の夫が大学教授の妻を殺害?殺されたとされる史学教授のサンドリーヌ、彼女はその誠実さで誰からも慕われていた。一方、夫の英米文学教授サミュエルは、自身の知識をひけらかし周囲をいつもみくだしていた。彼は無実を訴え、証拠も状況証拠にすぎなかった。しかし町の人々の何気ない証言が、彼を不利な状況へと追い込んでゆく。やがて、公判で明らかになるサンドリーヌの「遺書」。書かれていたのはあまりに不可解な文章で…妻と夫の間に横たわる深く不可避な溝を、ミステリアスに描き出したサスペンス。
英国国教会主教の娘として生まれたセリーナは、ケンブリッジ大学の数学科に進むが、成績はいまひとつ。大好きな小説を読みふける学生時代を過ごし、やがて恋仲になった教授に導かれるように、諜報機関に入所する。当初は地味な事務仕事を担当していた彼女に、ある日意外な指令が下る。スウィート・トゥース作戦ー文化工作のために作家を支援するというのが彼女の任務だった。素姓を偽って作家に接近した彼女は、いつしか彼と愛し合うようになる。だが、ついに彼女の正体が露見する日が訪れたー。諜報機関をめぐる実在の出来事や、著者自身の過去の作品をも織り込みながら展開する、ユニークで野心的な恋愛小説。
撮影現場から姿を消した人気女優とあとを追う老俳優の、奇妙な逃避行。男の脳裏によみがえる、少年時代の禁断の恋。いくつかの曖昧な記憶が、思いがけず新しい像を結ぶー。思い出すたびに色合いを変える、遠い日の禁断の恋の記憶。ブッカー賞、フランツ・カフカ賞受賞作家による最新長篇。
大きな野心から生まれ育った小さな町を憎み、故郷を捨てた青年ルーク。20年後、夢破れて二流の学者となり、講演でセントルイスを訪れた。会場で再会したのはーローラ・フェイ。かつてあの町でルークの家族に起きた悲劇の引金になった女性だった。彼は彼女に誘われ、昔を語り合う。“あなたも故郷を思い出すことがあるのかしら?”その会話は、ルークをゆっくり導いてゆく。知りえなかった女の過去と驚愕の真実に…。
マイケル・ビアードは、狡猾で好色なノーベル賞受賞科学者。受賞後は新しい研究に取り組むでもなく、研究所の名誉職を務めたり、金の集まりそうな催しで講演をしたりの日々。五番目の妻に別れを告げられた後は、同僚の発明した新しい太陽光発電のアイディアを横取りしてひと儲を狙っている。そんな彼を取り巻く、優しくも打算的な女たち。残酷で移り気なマスメディア。欺瞞に満ちた科学界とエネルギー業界ー。一人の男の人生の悲哀とともに、現代社会の矛盾と滑稽さを容赦なく描き切る、イギリスの名匠による痛快でやがて悲しい最新長篇。
教え子エディが悪名高き殺人犯の息子だと知ったとき、悲劇の種はまかれたのだ。若き高校教師だった私はエディとともに、問題の殺人を調査しはじめた。それが痛ましい悲劇をもたらすとは夢にも思わずに。名匠が送り出した犯罪文学の新たなる傑作。あまりに悲しく、読む者の心を震わせる。巻末にクックへのインタビューを収録。
ナチスに蹂躙されたポーランドを離れ、ニューヨークでひっそりと暮らすレオは80歳。だが、彼が60年前に書いた小説も人知れず海を渡って生き延び、幾多の人生を塗り替えていた。その小説の登場人物に因んで名づけられたアルマは14歳。夢見がちな彼女は、母に宛てられた手紙を覗き、小説に登場するアルマはいまなお存在すると信じ込む。自分の名の由来を突き止め、母や弟を救うための冒険は、彼女をどこに導くのかー。
余命短い父を看取るため、二十数年ぶりに故郷の田舎町へ戻ってきたロイ。かつて弟が自殺した事件の真相を探るうち、一生を不機嫌に過した父の秘密を知ることになる。そして町を牛耳る保安官の不審な行動。蜘蛛の巣のような家族と地縁のしがらみに搦めとられるロイは、だが次第に復讐のターゲットを見出して行く。
第一次世界大戦が迫りくるなか、グローニアは5歳で聴覚を失った。家族や世界とのつながりを回復させようとする祖母。現実を受けとめられず、神に祈り医者にすがる母。祖母が根気強く教える言葉の断片が、やがて世界へつながっていき、聾学校で学んだ手話が彼女の新しい人生を切りひらく。音楽好きの青年ジムとの出逢い。そして、結婚。しかし、つかのまの幸せを残し、夫は戦場へと旅立っていくー。
1912年4月10日、豪華客船タイタニック号は、英サウサンプトン港から処女航海に出発した。船の楽士たちは、この航海のためにヨーロッパ7カ国から集まった。様々な生い立ちを持つ彼らの共通点は、音楽を愛し、この道を選んだ宿命を受け入れていること。年齢も出身も異なる彼ら一人一人が明かす、数奇な物語ー発表されるや大反響を呼んだ、弱冠25歳のノルウェイ人作家による話題作。