著者 : 松浦寿輝
1941年11月、日本軍政前夜の香港。暗い過去を秘めた日英中の男3人がペニンシュラ・ホテルに集い、飲み、食らい、語り合う。やがて夜は更け、歴史が動き始めるー。守るべきは祖国か、個人の矜持か。時代の狂風に翻弄される男たちの愛と友情と苦悩を、哀切を込めて描きあげる、新たな傑作!
失われた駒を求めて、東京からシンガポール、マレーシア、アメリカへー。旅の終わりに竜介がたどり着いた真実とは?戦死した駒師が遺した傑作はどこへ?棋士の夢破れた青年が、再起をかけてその行方を追う!幻の将棋駒をめぐる希望と再生の物語。
神か、けだものか。アラカシの枝の股から滲みだし、四足獣のかたちをとった「それ」は、予知と記憶のあいだで引き裂かれながら、荒廃した世界の風景を横切ってゆく。死体を満載した列車、空虚な哄笑があふれるカジノ、書き割りのような街、ひとけのない病院、廃墟化した遊園地。ゆくてに待ち受けるのは、いったい何か?世界のへりをめぐるよるべない魂の旅を描く傑作小説。
あの子がさらわれた! 囚われの身となったゴールデン・レトリーバーのタミーを奪還するべく、 クマネズミのタータとチッチをはじめとする大小7匹の動物混成部隊が、東京大横断の旅に出たーー 大人気を博した「小さなネズミ一家の大きな冒険譚」、 あの『川の光』の仲間たちが、今度はまさかの事件に巻き込まれる。 フリスビー盤での川下り、ベランダを伝った高層マンションからの脱出、 地下ギャングとの闘い……ある時はタワーに昇り、ある時は空を飛び、 友だちのために何ができるかだけを考え、にわか救出チームは東京中を駆け巡る! 本書で大奮闘する“7匹のサムライ” マクダフ:チームリーダーの小型雑種犬 、キッド:誇り高い、若きクマタカ、タータ&チッチ:川に住むクマネズミの兄弟、ビス丸:おっちょこちょいのシェパード 、リル:気の強いおきゃんなスズメ、マルコ:酒に目のないドブネズミ
あの子がさらわれた! 囚われの身となったゴールデン・レトリーバーのタミーを奪還するべく、 クマネズミのタータとチッチをはじめとする大小7匹の動物混成部隊が、東京大横断の旅に出たーー 大人気を博した「小さなネズミ一家の大きな冒険譚」、 あの『川の光』の仲間たちが、今度はまさかの事件に巻き込まれる。 フリスビー盤での川下り、ベランダを伝った高層マンションからの脱出、 地下ギャングとの闘い……ある時はタワーに昇り、ある時は空を飛び、 友だちのために何ができるかだけを考え、にわか救出チームは東京中を駆け巡る! 本書で大奮闘する“7匹のサムライ” マクダフ:チームリーダーの小型雑種犬 、キッド:誇り高い、若きクマタカ、タータ&チッチ:川に住むクマネズミの兄弟、ビス丸:おっちょこちょいのシェパード 、リル:気の強いおきゃんなスズメ、マルコ:酒に目のないドブネズミ
暗渠化工事で川辺の棲みかを追われたネズミのタータ親子。夏の終わり、安住の地を求めて上流を目指す旅が始まる。彼らを待ち受ける幾多の試練や思いがけない出会い、はぐくまれる友情……。子どもから大人まで、あらゆる世代をとりこにした物語が、待望の文庫化!小さきものをこよなく愛する著者が、足元で脈動する世界の秘密を描き出した人気シリーズ第一弾。チッチが跳ね、タータが走り、タミーが飛び出す!島津和子氏による挿画も多数収録。
村田喜代子×酒井駒子「手なし娘協会」 長野まゆみ×田中健太郎「あめふらし」 松浦寿輝×及川賢治(100%オレンジ)「BB/PP」 多和田葉子×牧野千穂「ヘンゼルとグレーテル」 千早茜×宇野亞喜良「ラプンツェル」 穂村弘×ささめやゆき「赤ずきん」 6人の作家×6人の画家による夢のコラボレーション 斬新な解釈による大人のための新しいグリム童話集!
ふるさとなんかどこにもないが、生きてやる。おれの名誉と恍惚はそこにある。日中戦争のさなか、上海の工部局に勤める日本人警官・芹沢は、陸軍参謀本部の嘉山と青幇の頭目・蕭炎彬との面会を仲介したことから、警察を追われることとなり、苦難に満ちた潜伏生活を余儀なくされる……。祖国に捨てられ、自らの名前を捨てた男に生き延びる術は残されているのか。千三百枚にも及ぶ著者渾身の傑作長編。
中華街のバーで、二十年以上前に遇った女の幻影に翻弄される男の一夜を描く、事実上の初小説「シャンチーの宵」、芥川賞候補作「幽」、同受賞作「花腐し」ほか全6篇。知的かつ幻想的で、悲哀と官能を湛えた初期秀作群。社会から外れた男が生きる過去と現在を、類稀な魅力を放つ文体で生々しく再現し、小説の醍醐味が横溢する作品集。 無縁 ふるえる水滴の奏でるカデンツァ シャンチーの宵 幽 かすか ひたひたと 花腐し 著者から読者へ 解説 三浦雅士 年譜 著書目録
沙汰のかぎりを尽くし、生身の女の血肉にはもう飽いた、という現代の青ひげ公BBが余生の伴侶として購入した最高級の人工知能を持つ美しい女PP。夫への愛と尊敬のみをインプットされ、世界のことも異性のことも何も知らない真っ白なカンバス地のようなこの女なら愛せるようになるかもしれない、切り刻みたくなったりはしないかもしれない、と密かに思うBBだったが……。衝撃の表題作ほか全9編を収める芥川賞作家の傑作小説集 この女ならおれは愛せるかもしれない──人工知能搭載の最上級の“ヒト型擬體“を余生の伴侶として手にいれた青髭公を描く衝撃の表題作他、またいとこの姉妹と過ごした12歳の夏の夜のひとときを回想する『石蹴り』、病に倒れた旧友を見舞い「記憶」の意味について語り合う『手摺りを伝って』 など、魅惑の9篇を収録する芥川賞作家の傑作小説集。 目次 BB/ PP 石蹴り 手摺りを伝って 四人目の男 ミステリオーソ 水杙 ツユクサと射手座 薄ぼんやりと、ゆらりと二つ T字路の時間 目次 BB/PP 石蹴り 手摺りを伝って 四人目の男 ミステリオーソ 水杙 ツユクサと射手座 薄ぼんやりと、ゆらりと二つ T字路の時間
冥界への入り口に咲くというあやめの名を持つスナックで同級生との再会を待ち望む男。酒宴のために仕入れた鰈を詰めたアイスボックスを抱えたまま地下鉄から降りることのできない男。横たわる妹のひかがみに触れた手が噛み千切られる妄念に陶然となる男。妖しく絡み合う三つの物語。木山捷平文学賞受賞作。
勤めていた大学に辞表を出し、寂れた島に仮初の棲み処を求めた迫村。月を愛でながら己の影と対話し、南方から流れついた女と愛し合い、地下へ降りて思いがけぬ光景を目にし、現実とも虚構ともつかぬ時間が過ぎていく。この自由も、再生も、幻なのか?耽美と迷宮的悦楽に満ちた傑作長篇。読売文学賞受賞作。
闇は深く、不吉な雨はやまず……芥川賞受賞作! 希望を失い、にわか地上げ屋となった中年男。路地裏の古アパートに居座る奇妙な男と酒を飲めば、喪失感に満ちた過去へと意識は引き戻される。死んでしまった同棲相手や裏切られた友人。陰々滅々とした雨の向こう側に、生の熾火(おきび)は見えるか。第123回芥川賞受賞作。受賞後第1作「ひたひたと」を同時収録。
冥府の淵に咲く花“あやめ”。その甘い馥りが妖しく誘う。腐敗していく“鰈”の重さ。酩酊と覚醒のレールを地下鉄は走る。白い肉の深部の“ひかがみ”。その魔がすべてを食らい尽くす。生と死の間に存在する恍惚のエロス。その果てのない闇に迷いこみ、帰途を絶たれた三人の男。
男の暴力性を誘発してしまう己の生理に怯える伊子(よしこ)。20年も前の性の記憶と現実の狭間で揺蕩う(たゆたう)國子。分別ある中年男杉尾と二人の偶然の関係は、女達の紡ぎ出す妄想を磁場にして互いに絡み合い、恋ともつかず性愛ともつかず、「愛」の既成概念を果てしなく逸脱してゆく。 濃密な文体で、関係の不可能性と、曠野の如きエロスの風景を描き切った長篇。谷崎潤一郎賞受賞。 男の暴力性を誘発してしまう己の生理に怯える伊子(よしこ)。20年も前の性の記憶と現実の狭間で揺蕩う(たゆたう)國子。分別ある中年男杉尾と二人の偶然の関係は、女達の紡ぎ出す妄想を磁場にして互いに絡み合い、恋ともつかず性愛ともつかず、「愛」の既成概念を果てしなく逸脱してゆく。 濃密な文体で、関係の不可能性と、曠野の如きエロスの風景を描き切った長篇。谷崎潤一郎賞受賞。 槿 著者から読者へ 年譜
昭和十年に始まった芥川賞が百一回を迎えたのは、日本近代文学の流れによりそうかのように、奇しくも時代が昭和から平成へと移ったときでした。第百回までの全受賞作を収録して好評を博した第一期・第二期十四巻に引き続き、文芸春秋八十周年記念出版として刊行される芥川賞全集第三期五巻は、新時代の文学の息吹を生き生きと伝える第百二十五回までの受賞作二十九篇を収録、既刊同様、選評、受賞者のことば、自筆年譜を併載しています。