著者 : 柴田錬三郎
徳川の世となって間もなく、豊臣家の恩顧を忘れ、徳川方についた大名の夫人や娘たちが次々に犯されていった。女たちの下腹には必ず奇妙な文字が記されー。服部半蔵と母影の血をひく若き忍者“影”の復讐を描く時代伝奇(「南国群狼伝」)。大岡忠相の片腕・南町奉行の与力・石子伴作、蝋燭ざむらいと称する男、闇法師を名乗る男…いずれも異能の男たちが江戸市中で巻き起こす事件はー。推理手法で描く痛快時代小説。(「私説大岡政談」)。
徳川の治政定まって二百有余年、泰平を謳歌する頃、下級幕臣の困窮ぶりは目を覆うばかりだった。切羽詰った直参旗本の中に、武芸才覚に覚えのある者たちは結局、無頼の道を選ぶことになる。平山子龍道場で竜虎と並び称された狩野弥太郎と井部鉄之助は、賭場を荒しに行ったことから流浪の剣鬼・修喜寺左膳と乱刃を交え…。艶美な女性を配しながら描く傑作長篇時代小説。
江戸時代も中期を過ぎ、困窮した旗本小普請組の中でも、剣に優れた男たちがいた。無頼に走る彼等の中で、天保和寇党を結成した古城進八郎は、狩野弥太郎、井部鉄之助等を誘って江戸城大奥を襲い、また怪盗・庄吉と組んで佐渡金山から回送される御用金を狙うが、公儀隠密に知れ…。やるかたなき泰平の世に憤った若者たちを、官能の世界を織り込みながら描く長篇時代小説。
納屋浩ー城南大学2年。酒に強く真赤なM・Gを乗り回すニヒリストで度胸抜群。松村俊夫ー浩の親友。大牧場主の息子で勉強以外なら天才的ヒラメキがある。綾小路和正ー伯爵家の4代目。殿様と仇名される程応揚な性格。女性にめがない。野間健太郎ー浩たちを教える城南大の俊才。型破りの性格でリーダー格。ほかに毒子こと悳子、新子を加えた面々は、財界の重鎮佐倉一郎のメモをめぐって奇怪な事件に巻き込まれたー。痛快な青春冒険小説。
城南大学2年の納屋浩は、ふとしたことから、大金持の娘の誘拐事件に巻き込まれてしまう。親友の綾小路和正、松村俊夫たちと、軟禁されているその娘を助けたがー。その後、娘の父・加納豪太郎が何者かに殺される。加納は戦中から悪辣な事業をやっており、麻薬密輸にも関わっていたようだった。個性豊かな若い男女が、事件解決に乗り出す、痛快青春小説。
藩魂を貫いて壮絶な死闘を挑む会津白虎隊。寛永寺で一夜にして敗れ去ったが、三河武士の骨法を示さんと決起した上野彰義隊。1人の若き俊英が天狗に一撃されたために起きた水戸天狗の反乱。カラフトの隠密・間宮林蔵。西郷隆盛摩下の猛将・桐野利秋…。コップ酒を呻りながら等々呂木仙神翁が語る10の史譚。いずれも日本男子の面目躍如たる時代伝奇小説。
好漢が手を結べば天地をゆるがすー。茫々たる大湖に立つ、難攻不落の寨、梁山泊は、いまや一国の軍勢に比敵した。義のため、威風堂々、八千余の軍勢は、寨を降り、湖を渡った。迎えるは精鋭1万2000の官軍。幡なびき軍鼓鳴る!猛獣躍り、風呼び雨おこす妖術とびかう!阿修羅のごとく激闘続く、全4巻完結篇。
好漢は好漢を知る。不運にも官を追われた宋江の行くところその好漢ぶりを慕い、危急を救う男がいた。例えば正直者だが、喧嘩早い巨漢、李逵、弓の達人花栄、戴宗…。一騎当千の豪男たちは青州をかき回し、梁山泊に合流した!再び卑劣漢の江州長官に闘いを挑む。いかなる闘いだったかーまだまだ疾風篇。
へつらいと騙し合いの文武百官のワナにおち、あるいは奸婦の毒牙にかかり罪を犯した好漢たち。少華山に朱武、桃花山に李忠が、二竜山に楊志・魯達が。ついに梁山泊に、晁蓋を首領に呉用を軍師に、林冲ら11人は義軍たる面目をかけ立ち上った!宋江・武松も登場し、往くところ風雲を呼ぶ、波乱万丈の疾風篇。
花魁道中のさきがけをした遊女松笠、寺僧たち1000人と契ろうとした於梅、保科正之の側妾であったお万、四谷怪談のお岩、姐己の於百、高橋お伝…歴史上、稀代の毒婦と伝えられている女性たち10人の生涯を、独特の視点から描き、時代伝奇小説の面白さを満喫させる傑作集。