著者 : 植松三十里
明治初期、近代国家としてスタートしたばかりで、東洋の小国に過ぎなかった日本にとって、国際的地位の向上は急務だった。 公家の娘として生まれた榮子(ながこ)は、岩倉具視の長男に嫁ぐものの、若くして死別。最後の佐賀藩主で侯爵、外交官だった鍋島直大と再婚し、その美貌と気品で「鹿鳴館の花」と讃えられるほど、外交面で活躍する。 しかし、鹿鳴館外交は条約改正に至らず、榮子は自分の役目を模索しーー
下着デザイナーとして一世を風靡した鴨居羊子。鬼才の画家・鴨居玲。姉弟が稀有なる才能を発揮し、活躍していくまでの野望と挫折の軌跡を、盟友・司馬遼太郎との友情を交えつつ描く渾身の書き下ろし!
戦国を勝ち抜いた男の外交戦略がこの国を平和に導いた。西欧諸国の思惑、朝鮮との国交回復…ウィリアム・アダムスと朝鮮貴族の娘・おたあの視点を交えて、徳川家康の知られざる姿を描く感動の歴史小説。
株で大損、妻を担保にアメリカへ…… それでも、この男はすごかった! 奇想天外なアイデアと並外れた行動力、そして内助の功と多彩な仲間たちーー “別府観光の父”と呼ばれた男の、感動の生涯を描く力作長編。 明治維新の五年前、伊予国(愛媛県)宇和島に生まれた油屋熊八は、大阪で経済記者をするかたわら株で大儲けし、一時は「油屋将軍」と呼ばれるほどだった。だが日清日露の戦争後に読みを誤り、財産を失う。妻のユキの助けもあり、熊八は再起を懸けてアメリカへ行くも、思うような成果は得られなかった。 しかし四十八歳の時、大分県別府で宿屋を始めたときから、熊八の第二の人生がスタートする。 これまで日本になかったような温泉観光地をーー地元の反対、資金不足など、様々な困難に遭うも、「万事オーライ」の精神で乗り越え、仲間や妻とともに別府を日本一へと導くまでの奮闘を描いた感動の長編小説。
冬枯れの中、真っ先に咲く花とならんーー 新5,000円札の肖像で話題! 津田塾大学の創設者・津田梅子と、その父・津田仙の波瀾の生涯を描いた感動作 佐倉藩士として生まれた津田仙は、幕府通詞として福沢諭吉らとともにアメリカへ派遣されるなど将来を目されていたが、幕府瓦解後は西洋野菜の栽培などを手掛けながら、日本の農業の改革を志していた。自身の夢を託すべく、男子の誕生を待ち望むも、生まれたのは女の子で、仙は子供の名前も付けないほど落胆する。やがて、仙は開拓使長官・黒田清隆に呼び出され、出仕することに。そこで女子留学生を渡米させる計画を聞いた仙は、聡明さの片鱗を見せていた、わずか6歳の娘・梅子を推薦する。 日本初の女子留学生として、最年少で渡米し、17歳で帰国した津田梅子だったが、すでに日本語を忘れており、日米の文化の違いや周囲との軋轢、そして父との葛藤に悩むことになる。 山川捨松や伊藤博文らと交流を結びながら、苦闘の末、女子教育の先駆けとなった津田梅子と、その父の人生を描いた感動の歴史小説。
辰巳芸者のおたみは、呼ばれた席で幼馴染みの勝麟太郎と再会。蘭学を修業中の麟太郎は、おたみに惚れて一緒になろうと口説いてくる。旗本との結婚など無理な話と諦めていたおたみの所に、麟太郎の父小吉がやってきた。小吉に気に入られ、姑となるお信にはいい顔をされなかったが、二人は祝言をあげ、溜池のあばら家で新生活を始めたが…。蘭和辞典「ヅーフ・ハルマ」を高額で借り受けて一年かけて二部筆写するという作業のため、収入は途絶え、天井板をはがして薪代わりに燃やすという、貧乏生活に突入!勝海舟夫婦の波瀾万丈の生涯を描く、シリーズ第一作!
2020年の大河ドラマの主人公・明智光秀の謎に、豪華作家陣が迫る 若く野望に燃えていた青年期を経て、織田家での異例の出世、そして本能寺の変へーー。 かるたの札に絡めて、謀反の理由へ大胆に迫った「純白き鬼札」(冲方丁) 事実と虚構を見事に切り分け、謎多き光秀を独自の解釈で描いた「一代の栄光」(池波正太郎) 叛逆者の娘・珠の、ある願いと悲劇の選択を描く「ガラシャ」(植松三十里) など、人気歴史作家による名作短編六編を収録した豪華アンソロジー。 文庫オリジナル。
高須藩の六男に生まれ、会津松平家の養子となった容保。初代藩主保科正之が定めた会津藩家訓による徳川将軍家への絶対随順を、精神に叩き込まれる。幕末の動乱期、家老たちの反対を押し切って京都守護職を拝命。京都の治安に尽くし孝明天皇の信を得る。だが、戊辰戦争で朝敵の汚名を着せられ…。信じた正義のために潔白を明かそうと、信念を貫いた武士の誇り高き人生を描く書き下ろし歴史小説。
「かたちあるものは必ず滅す。しかし、かたちを成すために命をかけた人々の志は、本書によって神々しく蘇る」阿川佐和子氏推薦! 帝国ホテルライト館建築をめぐる熱き男たちの物語 世界的建築家、フランク・ロイド・ライトの飽くなきこだわり、経営陣の追及…… それでも彼らは諦めなかった! そして関東大震災がーー 1923年(大正12年)に完成した帝国ホテル2代目本館、通称「ライト館」。 「東洋の宝石」と称えられたこの建物を手掛けたのは、20世紀を代表する米国人建築家、フランク・ロイド・ライトだった。 明治末期、世界へと開かれた日本において相応しい迎賓館が必要だと気づいた大倉喜八郎と渋沢栄一が、ニューヨークで古美術商として働いていた林愛作を帝国ホテル支配人として招聘したことから、このプロジェクトは始まった。 しかし、ライト館完成までの道のりは、想像を絶する困難なものだったーー。 ライト館の建築に懸けた男たちの熱い闘いを描いた、著者渾身の長編小説。
明治3年春、渋谷栄一の義兄、尾高惇忠は渋沢に富岡製糸場の初代工場長に就任するよう懇願される。当時、日本の生糸は輸出量が急増した結果、悪徳業者がはびこり、粗製濫造が横行した。世界遺産富岡製糸場誕生には、上野・彰義隊の秘話が深く関わっていた。工場が軌道に乗るまでを赤裸々に描く傑作小説。
「勤、大和の誇り忘れるべからず」師は13歳の今村勤三にそう書き遺し、天誅組と共に散った。やがて明治。維新を先駆けたはずの奈良県は廃藩置県を経たのち大阪府へと吸収され、災害復興も後回しの屈辱的地位に置かれた。議員となった勤三は師の無念と民の怒りを受け、大和の再独立のために立ち上がる。
佐賀藩主・鍋島直正は、日本を欧米列強の従属国にさせないために、反射炉の建設、鉄の鋳造、大砲の製造、蒸気船の建造といった事業に藩をあげていどんだ。いくつもの難関をのりこえて手に入れた最新の軍事力は、幕府側と倒幕派双方から恐れられ、求められた。開国を迫る欧米諸国と攘夷を叫ぶ諸藩が戦火を交える中、新しい時代のために、直正は徳川慶喜との会見に臨む。
白虎隊士でひとり蘇生し、行き場を失った貞吉を楢崎頼三が長州へ誘う。敵地で生きようともがくが…。明治期、生き残りと謗りを受けた男の苦難の人生を誇り高く描く書き下ろし歴史小説。(解説/中村彰彦)
文久三年(一八六三)、帝の行幸の先ぶれを命じられた公家・中山忠光は、勤王志志らと大和で挙兵した。五条の代官所を襲撃し新政府樹立を宣言するが、親幕派の公家や薩摩藩などにより一転、朝敵とされ討伐軍を差し向けられる。満身創痍で深き山々を駆ける志士たちの運命は!?名手が描く、天誅組の志の輝きと四十日間の光跡。
彦根藩士の子、賀川玄悦の生みの親は、おなかの子が出てこられずに亡くなってしまう。医者を志したが許されず、独力で鍼や按摩の技術を習得し京都に出る。ある日、お産で苦しむ隣人の女性を自らの技術で救った。その技術は評判となり回生術と名付けた。その後、玄悦は難産でひどい扱いをされている商家の妾・お糸を引き取った。次第に、お糸に特別な感情を抱くようになる。三人の子供との関わりや妻のお信とお糸のことに悩みながらも、多くの命を救った。山脇東洋を始め、一流の医者たちからもその技術を認められた男。
江戸期に十二回来日した朝鮮通信使の受け入れは、国を挙げての一大イベント。版元「荒唐堂」の三兄弟は、公認絵図の出版に向けて立ち上がるが、長男の意気込みをよそに、次男は仕事に追われ、三男は町をふらつくばかり。そして次々と難題が降りかかる!抱腹必至の長篇時代小説。