著者 : 植松三十里
帝都叛乱の二月二六日、彼らはそれぞれの夜を過ごしていた…。義弟が身代わりとなり落命、やがて第二次大戦の終戦に尽力した、当時の首相の岡田啓介。妻のタカが夫へのとどめを制した、終戦内閣の総理・鈴木貫太郎。弘前から上京した、青年将校が要と仰いだ秩父宮。襲撃を受けながらも祖父を守り、父・吉田茂を助ける存在になった麻生和子。事件当時に歩兵部隊におり、やがて『ゴジラ』の監督になった本多猪四郎。日本の平和に関わった彼らの「その後」に繋がる、「この一日」
水野忠政の娘お大は、松平広忠に嫁ぎ家康を生むが、離縁され久松俊勝に再嫁。しかし、陰から家康を見守り、武士としての成長を支えた。家康を天下人にした慈母の波乱万丈の生涯。(解説/伊東 潤)
西郷隆盛を生涯愛した“島妻”の物語 薩摩藩から奄美大島へ送られてきた西郷隆盛。不遇な身の上の西郷を世話することになった愛加那。お互いの文化の違いから当初は反発し合うが、やがて愛し合うようになり、愛加那は西郷の“島妻”となる。二人の子供にも恵まれるが、愛加那は国のために活躍する人物だと信じて、再び藩から呼び出しを受けた西郷を見送った。そして、島にいるだけの人生を送って欲しくないという思いから、子供たちも鹿児島の西郷の元へと送り出した。 しかし、時代の激動が西郷と子供を襲う。西南戦争で、西郷は首謀者として先頭に立ち、最後は自決。参戦した息子の菊次郎は右足を切断して、愛加那のところへ帰ってきた。そして、鹿児島へ陳情に行った奄美の男たちの多くが戦争に参加して亡くなっていた。一転して、奄美の人から後ろ指をさされることになった愛加那だったが……。 生涯奄美大島を離れず西郷を信じた、愛加那を描いた恋愛歴史小説。 待望の文庫化。 【編集担当からのおすすめ情報】 解説は、作家の西條奈加さんです。
リタは、婚約者を第一次世界大戦で亡くし、医者だった父も喪って、失意のなかにいた。その頃、妹が通うグラスゴー大学の留学生竹鶴政孝と知り合う。日本でウイスキー作りをするため、イギリスまで学びにきた政孝に、驚きながらも惹かれていくリタ。だが、国際結婚を決意した二人は家族の猛反対に遭い…。夢の実現に邁進する夫と、献身的に支え続けた妻。ウイスキー誕生のため生涯を賭けた夫婦愛。
鎖国下の日本近海に異国船が頻繁に姿を現し、材木商・片寄平蔵は木材需要の儲け話を耳にする。が、江戸湾に来航したペリー艦隊には、「燃える石」が燃料として渡されたと聞き、平蔵は常磐炭坑開発に取り組む。
江近の戦国大名浅井家に美人姉妹と名高いお茶々、お初、お江が生まれた。姫達は、伯父信長に父を滅ぼされ、信長が討ち死にした後は、猿と蔑む秀吉の庇護を受ける。やがて、勝ち気な末娘お江が、水軍の将・佐治一成に嫁ぐ…。愛する男と無理矢理引き裂かれた姫は、運命に翻弄されながらも、水の如くしなやかに生き抜いていく。熱い想いを秘め徳川将軍家正室に上りつめた女の恋物語。書き下ろし歴史小説。
幕府海軍の設立から、その終焉まで立ち会った男、矢田堀景蔵。幕府学問所で秀才の名をほしいままにした景蔵は、阿片戦争の波及を恐れた幕府の命により、長崎の海軍伝習所に赴任した。そこでは勝海舟、榎本武揚等、その後の幕府の浮沈を共にする仲間と出会う。幕府海軍総裁まで昇りつめた男の生涯。
安政7年、遣米使節団を乗せ出航した咸臨丸には、吉松たち日本人水夫も乗り組んでいた。歴史の渦に消えた男たちの運命を辿った歴史文学賞受賞作が大幅改稿を経て待望の文庫化。書き下ろし後日譚も併載。
林子平は女彫師のお槇とともに、老中・松平定信の追っ手から逃れ隠れて『海国兵談』の版木を彫り続けるが、お槇を連れた逃避行は日ごと過酷なものに…。二人の魂が彫り込まれた版木の行方は。気鋭が贈る感動の書き下ろし歴史小説。