著者 : 河島英昭
ぼくの叔父さんテッラルバのメダルド子爵は、トルコ軍の大砲の前に、剣を抜いて立ちはだかり、左右まっぷたつに吹き飛ばされた。奇跡的に助かった子爵の右半身と左半身はそれぞれ極端な“悪”と“善”となって故郷に帰り、幸せに暮らす人びとの生活をひっくりかえすー。イタリアの国民的作家カルヴィーノによる、傑作メルヘン。
イタリアの寒村に育った私生児のぼくは、人生の紆余曲折を経て、故郷の丘へ帰ってきたー。戦争の惨禍、ファシズムとレジスタンス、死んでいった人々、生き残った貧しい者たち。そこに繰り広げられる惨劇と痛ましくも美しい現実を描く、パヴェーゼの最高傑作。
裏切りと復讐、自殺と自由、不条理な争い、暴力、弾圧ー。均斉のとれた構造のうちに複雑な内容が秘められた、パヴェーゼ文学の原質をなす“詩物語”全10篇。当時エイナウディ社で働いていたカルヴィーノが遺稿から編み上げた生前未発表の短篇集で、いずれの作品も詩的想像力に満ち溢れ、完成度がきわめて高い。1953年刊。
反ファシズム活動の理由で逮捕されたパヴェーゼ(一九〇八ー五〇)が南イタリアの僻村に流刑されたときの体験を色濃く映した自伝的小説。背後は峨々たる山々、眼前は渺々たるイオニア海。村人たちとの穏やかな交流の日々を背景に、流刑囚の孤独な暗い心の裡を描き出す。
文学の魔術師、カルヴィーノが語る、タロットの札に秘められた宿命とは…?王、女王、騎士、兵士など、城にやってきた様々な人間たちの物語が、タロットの札を並べるがごとく紡ぎ出されていく。世界最古のタロットカードの中に、様々な人間の宿命を追求しつつ、古今東西の物語文学の原点を解読するカルヴィーノ文学の頂点。
十四世紀のヨーロッパを襲ったペストがフィレンツェにもたらした死の影の下で、ボッカッチョは完全な精神の自由を獲得し、過去のくびきから解き放たれて、十日十話、百篇からなる多種多様な物語を書き上げた。ルネサンスの息吹きを伝え、近世小説のさきがけとなった屈指の古典『デカメロン』を見事な日本語に移しかえた名訳。(第七日、第八日は省略)。
十四世紀イタリアのフィレンツェでペストが猛威をふるった時、七人の淑女と三人の紳士が森の館に避難し、毎日交代で面白い物語を話して聞かせることになった。-イタリア・ルネサンス期の巨人が残した世界文学史上不滅の古典に新たな生命を吹きこむ苦心の訳業。本巻には前半の第五日第七話までを収録(第三日、第四日は省略)。
リーザやマリーアグラツィアが発散する中年女性の倦怠の気配。彼女らとレーオとの爛れた関係。レーオは母親から娘カルラに関心を移し、しかもアルデンゴ家の財産一切をわがものにしようと企んでいる。そのすべてが分りながら、何もできない青年ミケーレの絶望。
中世、異端、「ヨハネの黙示録」、暗号、アリストテレース、博物誌、記号論、ミステリ…そして何より、読書のあらゆる楽しみが、ここにはある。全世界を熱狂させた、文学史上の事件ともいうべき問題の書。伊・ストレーガ賞、仏・メディシス賞受賞。