著者 : 海鵜げそ
魔族軍の人族国家への侵攻が始まりました。ですが、聖女認定されてしまった私を含む勇者一行を即座に向かわせましょう…ということにはなりません。まあ、10歳の女児が世界のために魔王討伐に旅立つことに難色を示す方々は多いようで。“勇者パーティー”は保護者同伴なのでした!私はと言えば、旅の役に立つものを召喚しようとして、颯爽と現れた大量の『蛸』を処分するため、タコスルメを作る作業に追われていたのでした。そうしている間にも、北方の最前線の戦闘が激化してゆき、いよいよ私と勇者のノエル君、聖戦士のリック王子が旅立つ日がやってきました。従者、侍女、メイド、騎士団、傭兵団、一般兵士等2000名以上を引き連れて!
魔術学園に入学した私ですが、聖王国王家の一員にして唯一の「姫」であり、富も権力もてんこ盛りな大公家の第一公女、しかも聖女候補ということで、一般生徒の皆さんからは近づいてもらえません。学園入学前からのお友達や4人の従者はいるものの、少し寂しい学園生活を送っていたら、カペル公爵様の領地に招待されました。カペル公爵様と言えば、我がヴェルセニア大公家に何やら含むところがある方ですね。公爵様やその関係者は、私にどんな仕掛けを用意してくれるのでしょう。それに、あのお姉様方と勇者一行もいらっしゃるとか。ドロドロとした汚泥のような悪意のやりとりがとても楽しみですね。
「その絶望を“悪魔”に捧げよ」などと前世で言う厨二病的見得を切って、ベッドで黒歴史に身もだえした私、ユールシアも五歳になります。なんと誕生日は王城と王宮で祝うことになったのですが、そのパーティーでついに会ってしまいました。私が美味しく頂いたアルベティーヌ様の娘である“お姉様たち”に。いきなり真っ赤な果実酒を私にぶちまけてくる悪意に、嬉しすぎて顔が引きつりそう。そして、私に四人の従者が与えられました。まったくやる気の欠片もない怠惰で身勝手で貪欲な人材ばかりです。悪魔である私にとって、なかなかに楽しい日常になりそうですね。
光溢れる世界の夢を見る。家族。学校。友達。電車。バス。映画。本。『私』は光の世界で成長し…最後に白い部屋の中で、闇に包まれていた。夢から覚めると、魔界と呼ばれる世界で小さな一体の悪魔になっていた。「-帰りたいー」『私』の心に広がるのは、夢で見た光の世界への憧れ。そしてある日、目の前に現れた『召喚門』に飛び込む。再び『私』が目を覚ますと、人間の赤ん坊として生まれていた。そこは『聖王国』。「帰りたい」と願った世界とは異なる人間の世界。悪魔でありながら、赤ん坊の力しかない『私』は恐怖する。自分が悪魔だということは隠し通さなければー…。