著者 : 澁澤龍彦
ねむれる森の美女さながら永いねむりについてしまった美しく幼ない姫に魅入られるかのごとく数奇な運命をたどる腹違いのひとりの童子ー中世の京の都を舞台にくり広げられる男と女の不可思議な生涯を物語る「ねむり姫」ほか、実母の生んだ牝狐を愛し命を奪われてしまう男の物語「狐媚記」など、古今東西の典籍を下敷きに構築されたあやかしの物語六篇。
サドの代表的著作、ジュリエットの物語『悪徳の栄え』と対をなす妹ジュスティーヌの物語には三つのバージョンが残存している。本書はその最初の版である「原ジュスティーヌ」とでも称すべき中篇である。バスティーユ牢獄中にて書かれ、革命のどさくさに粉れて紛失され、100年ののちに陽の目をみた本書はサドの思索のエッセンスが凝縮された異色作である。
快楽の法則の信奉者、遊び好きなサン・タンジェ夫人と、彼女に教えを受ける情熱的な若き女性ウージェニー。そして夫人の弟ミルヴェル騎士や、遊蕩児ドルマンセたちがたがいにかわす“性と革命”に関する対話を通して、サドがみずからの哲学を直截に表明した異色作。過激で反社会的なサドの思想が鮮明に表現され、読む者を慄然とさせる危険な書物。
ダンディズムと軽さのエレガンスを基調とする渋沢文学の出発を告知する表題作ほか、才能の萌芽が燦たる処女作「撲滅の賦」、功緻で〓@56F5洒な小品「錬金術的コント」の三篇を収録する。著者自らが、死の直前に発掘を予言していた最初期作品集。
「愛し、愛される、これが理想である。ただし、同一人物について、という条件が必要だろう。」-淡い光と影のなかを揺れまどう若者たちの姿を描いたみずみずしい青春小説。原題のLe Grand ´Ecartとはバレー用語で「両脚を広げて床にぴたりとつけること」であるが、幼い少年が一人の青年へと成長していく暗喩にもなっている。
50篇にのぼるサドの中・短篇の中から選び抜かれた12篇ー短篇作家としてのサドの魅力をあますところなく伝える『恋の罪』から3篇、そしてフランス風コントの中にもサドならではの道徳観・恋愛観を窺わせる『小咄、昔噺、おどけ話』から9篇を収録。また最後に収録された「末期の対話」はヴァンセンヌ獄中で書かれた記念すべき処女作であり、「最初の無神論宣言」である。