著者 : 片岡義男
シティポップが生まれた80年代、同時代の日本の「文学」は何をしていたのだろう? 世界のファンがSNSで甦らせたポップ音楽の背後には、同じ時代状況から生まれ、同様に日本オリジナルの発展を遂げた、都会文学の世界が隠されていた──きらめく都会の〈夢〉を優しく紡ぐ、「シティポップの時代」を並走した9つの物語を、いま、ここに。 片岡義男 楽園の土曜日 川西蘭 秋の儀式 銀色夏生 夏の午後 川西蘭 マイ・シュガー・ベイブ 沢野ひとし プリムズをくれた少女 平中悠一 かぼちゃ、come on! 原田宗典 バスに乗って それで 山川健一 テーブルの上にパンはないけれど、愛がいっぱい 片岡義男 鎖骨の感触 【ライナーノーツ】 “時代”の終りと“物語”の始まり──「シティポップ」と、同時代(一九八〇年代)日本の「都会小説」 平中悠一
いつまでも終わらない物語のはじまり 世界を旅してきた写真家が十年の時をまたぎ、フォークランドと広東省で経験した驚くべき偶然とは…… (「スルメと空豆ご飯」) 職を失ったホステスとバンドマンがバーで出会い、店長の話をきっかけに、町に団子屋を復活させようと動き出す…… (「これでいくほかないのよ」) ふとした会話と、少しのつながりから生まれる八編。今なお斬新、最新短編集。 ■六十四年インパラ ■人生は野菜スープ ■スルメと空豆ご飯 ■「今日は三月十二日です」 ■エスプレッソ ■銀座化粧 ■夜景が見えます ■これでいくほかないのよ ■あとがき
三十歳の美しいコミックス作家・川村リリカと、同い年の敏腕編集者・野崎百合子。「俺」「お前」と呼び合う可憐な二人が、喫茶店で、イタリアンで、カツカレーの店で、新作の打ち合わせをする。「それはそのままタイトルになるね」「なるね。メモしとこう」。物語はどのように生まれるのか。創作の秘密が垣間見える連作集。
江國香織さん、陶酔! 小説風に書くと、“「革新的? 確信犯的? なんといっていいかわからないわ、でも、すみずみまでほんとうにおもしろい」と香織は言った。「小説のなかで何度も発生するのね、小説が」そう続け、「それにしても、きび団子」と感に堪えたように呟いて、「こんな小説、片岡義男にしか絶対に書けないわ」と、幸福そうなためいきをついた”のでした。 デビューしたばかりの青年作家・日高は、勝負の2冊目執筆のため、かつて親しかった3人の美女を訪ねようと思い立つ。その間にも、創作の素材となる出会いが次々に舞い込んできて……。 小説はどのように発生し、形になるのか。めぐり逢いから生まれる創造の過程を愉しく描く。 瑞々しい感性を持つ80歳の “永遠の青年”片岡義男、4年ぶりの最新長篇。 1 ラプソディック担担麺 2 裸の彼女を西陽がかすめる 3 笑ってはいるけれど 4 エリカの花、アカシアの雨 5 ため息をつく幸せ 6 発想して組み立てる 付録短編 踏切を渡ってコロッケ
離婚ののち息子を連れて地元に戻ってきた幼なじみの女性と、「結婚」をしないまま新しい「家族」のかたちを探っていく表題作のほか、小説的企みに満ちた「珈琲」をめぐる五つの物語。珈琲にまつわる書き下ろしの自伝的エッセイ「珈琲に呼ばれる人」も収録。
滝口悠生氏推薦! 「カレーのおいしい喫茶店にははずれはない。そこにはいくつもの物語を通り過ぎてきた客や店主が待っていて、席に着けばすぐに小説がはじまる」 あの頃の、奇跡のような「日常」がここにある。 男と男/男と女を巡る7つの物語ーー 【収録作品】 ほろり、泣いたぜ」「ピーばかり食うな」「くわえ煙草とカレーライス」「青林檎ひとつの円周率」「春はほろ苦いのがいい」「大根おろしについて思う」「遠慮はしていない」
あの頃はもうないけれど、その続きを生きることはできる。対峙する男と女、息を飲む人生の瞬間、万華鏡のように混ざり合い、変化していく虚構と現実…。スタイリッシュな八つの短篇。
男と女、女と女、男と男ーそれぞれの人生がすれ違うとき、平凡な日常がドラマに変わる。一瞬のきらめきを鮮やかに射とめる、魅惑の片岡義男ワールドへようこそ。7人の作家を主人公に描く、“最高の小説”のつくりかた。
名探偵とは何者か? 洋の東西を問わず、読者の心をとらえて離さない名探偵の魅力とは? それが推理小説最大の謎! 帆村荘六、半七、フェリシティ、明智小五郎、鬼平、三毛猫ホームズ、金田一耕助、ミス・マープル……。誰もが大好きな名探偵たちが、現代文学の名手13名の筆によって新たな息を吹き込まれた。古今東西の難事件が解決されるばかりではなく、ミステリーのあらゆる楽しみ方を存分に堪能できるアンソロジー。 豪華執筆陣による夢の競演!
著者初の書き下ろし自伝「勤労」小説。大学生時代、3カ月の会社員生活、原稿用紙に鉛筆と喫茶店、バーの日々。あのころのジャズ・歌謡曲・ロックと、作家以前の「僕」の物語がいっぱい。登場する121枚のレコードジャケットをオールカラーで収録。
1970年代、誰もが経験した「昭和の青春」を青春文学の巨匠がみずみずしく描く。 神保町、下北沢を舞台に、ジャズ、酒、文学、そしてタンメンにあけくれた時代のはかない恋と別れを、著者ならではの胸に迫るスイートビターな筆致で感動的に描く。
カリフォルニアの空の下、21歳の私立探偵アーロン・マッケルウェイは孤独な人々に出会うー“マイケルにさようならと伝えて”アーロンの今度の仕事は自殺した女性の最後の言葉を伝えることだった(「ハンバーガーの土曜日」)、郊外の食堂で電話中の少女が凶弾に倒れる現場に居合わせたアーロンが通話相手の依頼を受ける(「時には星の下で眠る」)等、青春の切なさとハードボイルドが見事に融合した青年探偵のシリーズ全11篇。
道端で男に殴られていた女子大生美紀を拾ったバイク乗りの幸雄。奇妙な同居は幸雄が美紀に売春をさせたことで終わったかにみえたが…男女の不思議を描く表題作他、ストリップ劇場で理想の女を見つけた男が彼女を探して旅をする「ひと目だけでも」、会社を辞めた男が故郷で恋人の親友に会う「いつもの彼女、別な彼」等、感情を排した乾いた文章がなぜか通常の恋愛小説よりも深く胸に残る名品7篇を厳選。
東京で生活する美しいがごく普通の女性が名もなき人々を標的に狙撃を繰り返す「狙撃者がいる」、アメリカの食堂で働く少年を通し銃を射つ崇高さを描いた「心をこめてカボチャ畑にすわる」、体験主義の作家が夫の鍵から推理を重ねる「彼女のリアリズムが輝く」他、日常に突如表出する不条理な暴力と謎を鮮烈に捉えた全8篇を収録。スタイリッシュでクール、独創性に満ちた片岡ハードボイルドの傑作を精選。
彼の第三京浜は今日も薄曇り。走っても止まっても、うんざりの毎日へ、類は友を呼んであいつが現れた。ヘッドライトを消すと夜明けが来て、いよいよ朝のどんづまり。わかってない奴らは、これを「青春」と呼ぶ。
一枚の写真。たとえば古いアルバムのなかの。いつ、どこの、どんな物語のひとこまなのか、写っている人にしかわからない。写っているその場面の前後に流れた時間のなかに、被写体となった人たちの人生がある。どれもみな写真のような、二十八篇の物語。片岡義男の一人称によるハワイ小説の、待望の第四作。