著者 : 甘糟りり子
宮下夏子は三十九歳の女性弁護士。子供ができない夫婦の離婚調停に携わっているうちに「卵子凍結」のことを知り、心が大きく揺さぶられる。結婚も出産もそのうちにするものだとぼんやり思っていたら、年齢制限があるというのだ…。妊娠と出産をめぐる七つの物語。いろんな選択といろんな正解がきっと見つかる。
「掌から時はこぼれて」39歳の女性弁護士が、卵子凍結の情報に心を揺さぶられて…。/「折り返し地点」妊娠よりもオリンピック出場を優先してきた女性アスリートの選択は?/「ターコイズ」不妊治療中の女性たちの集いで、卵巣の劣化の話を聞いて愕然となり…。/「水のような、酒のような」独身を謳歌した男が結婚して、不妊治療医院で思わぬ宣告を!/他三編を含む全七話。顕微授精や卵子凍結、男性不妊など、妊娠と出産にまつわる切実なテーマを切り取った物語。
四十歳独身での妊娠に戸惑う桜子、不妊治療を続けるが子どもを授からない三十九歳の重美、初めての妊娠に幸せをかみしめる佐和子…。妊娠・出産をめぐる女性の心の葛藤と人生の選択を描いた八つの物語。悩みや迷いに寄り添い、「あなたが決めたことなら、それが正解」と、優しく背中を押してくれる短編集。
女はいくつまで女でいられるのか、いくつからが中年なのか。やり残したことを探し始めた時?できなくなったことを嘆く時?主婦になり不妊治療をあきらめてカフェのパートに励む千乃、バツイチとなっても義母と同居し二児を託して証券会社に勤務する泉、起業家と結婚し専業主婦として二児を育てる真子、大学時代の友人だった彼女たちがフェイスブックをきっかけに四十七歳の夏に再会した。更年期や子供との関係に悩む一方で、新たな恋や先の見えない恋に陥りながら、女としての残りの人生を考える姿を描く。
緑川有里は、モデル事務所を経営する横溝と知り合い、関係を持つ。すべてを手に入れて人生に飽いたような横溝に、有里は深い憐れみを感じて縛られていく。「他の男とセックスして、おれに報告してくれよ」-横溝の屈折した要求に、有里は身近な男と次々に肉体を重ねる。帰るべき場所を失って哀しく迷走する愛を描き出す秀作。
ポルシェ、グッチ、カルティエ、パークハイアット、東京シティクラブ…、特有の輝きを持つ固有名詞がいくつも、正博の日常にまぎれこんだ。けれど、まだ物足りない。いろいろな物事を手にすればするほど、強烈な飢えが湧いてきた。もっと金が欲しいのか、街での特別扱いなのか、見かけのいい女か、自分が何に飢えているのか、よく判らなかった。きらびやかな都会の表情にはもうすっかり慣れていたはずなのに、正博は、キャンティのドアに気後れしてしまった。東京レストラン・ストーリーズ。きらびやかな都会の夜にちりばめられたあやふやな恋、苦い野心、切ない男と女の物語。