著者 : 田辺聖子
東宮妃として入内を待つ内大臣の娘・月冴。ところが入内が近くなった矢先に東宮は急死。新東宮となった弟宮はまだ幼く、入内は十年先送りに。邸に閉じこもり鬱々としている月冴の前に天狗や化狐が現れ…。あやかし者の力を借りてドラマティックな恋を求める姫君とやんちゃな妖怪たちの王朝ファンタジー。
別れた恋人と食べるアツアツの葱やき、結婚する気のない男との一泊旅行で買った駅弁、恋の悩みを打ち明ける女友だちとつつく焼肉、浮気夫のために作るビフテキ…男女の仲に欠かせない「おいしい料理」と「恋」は表裏一体。すれ違いつつも寄り添おうとする男と女たちの、せつなくてかわいくて、ちょっとビターな9つの恋の物語。
古き代に生まれ、恋し、苦しみ、戦い、死んでいった14人の歴史のスターたち。スサノオ、卑弥呼、持統天皇、紫式部、小野小町、淀君…そんな愛すべき人びとは、歴史の中で何を思い、いかに生きたのか。美しくも、醜くも形作られた主人公たちの生涯をなぞらえ、心に寄せて読み解いていく、古典&歴史文学散歩。
銃後の子供はとにかく体が丈夫でないとあかんのだ。在郷軍人の小父ちゃんが台に上って号令をかけるラジオ体操。歌う唱歌は「敵の将軍ステッセル」。千人針と慰問袋のある戦時下、トキコは高等女学校の入学試験を受ける。出征した男たちは、桜のように散り、人生の花を独り占めし、女はカスの部分をつかまされる。中原淳一の絵を見ては、ちぢれ毛をまっすぐにして下さいと祈る、ささやかな日常の中に戦争が描き込まれた、名連作短篇集。
ヤマトの大王の想われびと、女鳥姫と恋におちた隼別王子は大王の宮殿を襲う。愛と権力を賭けた血なまぐさい叛乱の夢は、大王の前にあっけなく破れるが…。「日本書紀」「古事記」の世界を舞台に紡がれる、恋と陰謀と幻想が渦巻く濃密な物語。
有名な歌人の父・清原元輔に溺愛されて育った海松子。男顔負けの学才を持ちながら、凡庸な夫と平凡な結婚生活を送っていた。そんな海松子の楽しみは、物語でもなく日記でもない草子を書き綴ること。その「春はあけぼの草子」が宮中で評判となり、一条帝の后・定子に仕えることになり…心ときめく枕草子の世界がいまここに!
高貴な生まれにもかかわらず、意地悪な継母に、床が一段窪んだ狭い部屋に住まわされ、一日中縫い物ばかりさせられていたおちくぼ姫。ところがある日、都で評判の青年貴公子・右近の少将が、不幸な境遇の姫の噂を聞きつけて…。美しく心優しい姫君と純愛を貫こうとする少将の平安王朝版シンデレラストーリー!
百合の花束をくれる年下の男・瀬川と、「腹巻きせー」が口癖の年上の男・三杉。二人の間で揺れる牡丹の選択は?(「百合と腹巻」)。著者自身が「大阪物の出発点」と呼ぶ「大阪無宿」など、生き生きした大阪弁と大阪の町の魅力があふれる作品を集めた、恋愛小説集。巻末に著者インタビューを収録。
「いまにして思えば、私は、男と女のちがいにあまりにも無智だった…」(「おそすぎますか?」)。仕事をとるか、男をとるか?できれば選ばず、どちらも欲しいー尽きない悩みのなかで、揺れながらも進む女の姿と戸惑う男の心情を生き生きと描いた、傑作短篇集。巻末に著書インタビューを収録。
共産党員のケイを本気で愛するが、みのらない有以子。傷心を抱えたまま親友のヒロシと旅行にでかけようとするが…(「感傷旅行」)。芥川賞を受賞した表題作ほか、様々な思いを抱え旅に出る男と女の物語を集めた短篇集。巻末に著者インタビューを収録。
7年前に別れた恋人が、ある日突然、あぐりの部屋を訪ねてきた…(「お茶が熱くてのめません」)。終わった恋の苦さを描いた表題作ほか、別れたあとにも続く男女の不思議な関係と、それぞれが抱く微妙な感情を巧みに描いた珠玉の5篇。巻末に著者インタビューを収録。
恋に憧れているのに、恋がこわいー。妹の婚約者に心惹かれる、オクテな姉の心情を描いた表題作(「うすうす知ってた」)ほか、男女が織りなす微妙な心模様を描く、傑作恋愛短篇集。巻末には本書のための著者インタビューを収録。
「日々の喜びを小説の中に書いていきたい」(巻末の著者インタビューより)。食べることも料理をするのも大好きな著者が綴る、食にまつわる5篇の小説。オムライス、いわしのてんぷら、ブイヤベース…。食べものと人が織りなす物語をいきいきと描いた傑作短篇集。
独身生活を満喫していた丹子。ワカッテル男、の佇まいに惹かれて吉市と結婚するが、魔法をかけられていたのでは、と次第に不安になり…(「鼠の浄土」)。一筋縄ではいかぬ男と女の関係を描いた5篇を収めた短篇集。巻末に著者インタビューを収録。
「口では本音言うたらあかんけど、することは本音のしたいこと、したらよろしねん」(「お手紙下さい」より)。男女の心の機微をあまさず描いた、名作5篇を収録した傑作短篇集。小説を読む喜び、至福の時間をあなたに。
35歳の乃里子。剛との結婚解消とともに中谷財閥からも解放されて、仕事も昔の友情も取り戻した。一人暮らし以上の幸せって、ないんじゃない?しかし自分の将来の姿もなぞらえていた女友達に悲しい出来事が。そのとき手を差し伸べてくれたのは…。「誰か」がいるから、一人でも生きていける。
辛く切ない大失恋のあと、剛から海の見えるマンションを見せられて、つい「結婚、する!」と叫んでしまった乃里子、33歳。結婚生活はゴージャスそのもの。しかし、金持ちだが傲慢な剛の家族とも距離を置き、贅沢にも飽き、どこかヒトゴトのように感じていた。「私」の生活はどこにある?田辺恋愛小説の最高峰。
160万人が愛した女主人公(ヒロイン)乃里子が帰って来た! 乃里子、31歳。フリーのデザイナー、画家。自由な1人暮らし。金持ちの色男・剛、趣味人の渋い中年男・水野など、いい男たちに言い寄られ、恋も仕事も楽しんでいる。しかし、痛いくらい愛してる五郎にだけは、どうしても言い寄れない……。乃里子フリークが続出した、田辺恋愛小説の最高傑作。
雑誌編集者の彩子、歌手志望の町子、金儲けが趣味のOL美紀。同居生活を送る三人は、それぞれの恋愛、仕事を通して人間の真理に目覚めていく。軽やかなユーモアをまとって描かれる、恋愛の美しさと哀しさ、自立と結婚、「女の真実」と「男の典型」-人生を謳歌する女たちの姿がさわやかな感動を呼ぶ傑作長編。