著者 : 石田夏穂
大手デベロッパーのエリート社員だった浜地は、とある事情から閑職に追いやられて自己都合退職し、どうにか中堅ゼネコンの契約社員となる。だが、そこで任されたのは、ショッピングモール建設工事現場の安全衛生管理責任者。……俺、未経験なのに!? 浜地の教育担当となった松本は、度を超えた厳しさで安全指導をする男。……バカ真面目すぎる。だが、浜地はやがて知ることになる。松本の行動に隠された本当の目的をーー。ユーモア+苦み+スリルを混合してミキシング! 唯一無二の読後感が待ち受ける工事現場ノベル、堂々完工!
一年中海外を飛び回っている商社勤務の有田ユカリ。 ある日、本社に呼び出されると、出張禁止を告げられた。 理由は、体脂肪率が高いために、万が一があると困るから。 思いがけず日本での暮らしを強いられたユカリは、既婚か未婚かを問われる村社会っぷりにげんなりし、今すぐにでも海外にエクソダスしたい。 そのためにも体脂肪率を下げるべくジムに熱心に通い、狙い通り数字も改善されてきた矢先、あるものを拾い......。
理想を求める中間管理職の奮闘に切り込む、シニカルなボディ・メイキング文学。勤務先で係長に抜擢された後藤は、ボディビルの選手でもあった。ある日、社内の人材の無駄に切り込み組織の代謝を上げると大会に向けて停滞中だった減量も進むことに気づき、身体を仕上げるべくチームの脂肪の除去に驀進し始める。肉体と組織がシンクロしたとき、たたき出されるのはベストパフォーマンスか、それともーー
第169回芥川賞候補作。 鉄鋼を溶かす高温の火を扱う溶接作業はどの工事現場でも花形的存在。その中でも腕利きの伊東は自他ともに認める熟達した溶接工だ。そんな伊東が突然、スランプに陥った。日に日に失われる職能と自負。野球などプロスポーツ選手が陥るのと同じ、失った自信は訓練や練習では取り戻すことはできない。現場仕事をこなしたい、そんな思いに駆られ、伊東は……。 “「人の上に立つ」ことにまるで関心がなかった。 自分の手を実際に動かさないのなら、それは仕事ではなかった。” ”お前が一番、火を舐めてるんだよ” ”お前は自分の仕事を馬鹿にされるのを嫌う。 お前自身が、誰より馬鹿にしているというのに” 腕利きの溶接工が陥った突然のスランプ。 いま文学界が最も注目する才能が放つ異色の職人小説。
「会社の不利益になる人間を採る」 不当な辞令に憤る人事部採用チームの小野は、会社への密かな復讐を始めるーー。 (株)Kエンジニアリングの人事部で働く小野は、不当な辞令への恨みから、会社の不利益になる人間の採用を心に誓う。彼女が導き出した選考方法は、顔の縦と横の黄金比を満たす者を選ぶというものだった。自身が辿り着いた評価軸をもとに業務に邁進していくが、黄金比の「縁」が手繰り寄せたのは、会社の思わぬ真実だった……。 ボディ・ビルを描いた『我が友、スミス』で鮮烈なデビューを果たした著者が、本作では「就活」に隠された人間の本音を鋭く描く! 【著者プロフィール】 石田夏穂(いしだ・かほ) 1991年埼玉県生まれ。東京工業大学工学部卒。2021年「我が友、スミス」が第45回すばる文学賞佳作となり、デビュー。同作は第166回芥川龍之介賞候補にもなる。他の著書に『ケチる貴方』がある。
「冷え性」と「脂肪吸引」。いま文学界が最も注目する才能が放つ身体性に根差した問題作! 主人公の不機嫌さは極端な冷え性ゆえで、よく読むと類型的な「不満持ち」ではない。気まぐれな「親切」が身体に激変をもたらす一夜を経て、劇的な面白さをもたらした。(「ケチる貴方」野間文芸新人賞選評より)--長嶋有 私は寒いとき必死だ。こんなにも必死なのに、何故この身体は頑なに熱を生産しないのだろう。 骨と皮ならまだしもお前はエネルギーの塊じゃないか。私の代謝機能よ。この身体を温める薪ならここに山のようにあるよ。 頼むからケチらず使ってくれないか。(「ケチる貴方」より) 第44回野間文芸新人賞候補となった表題作と 第38回大阪女性文芸賞受賞作を豪華同時収録。 私の脚は、生来、人並外れて太かった。その程度を定量的に示そう。その周囲、五十八センチ。 (中略)私は自分より脚の太い人を、ついぞ目にしたことがなかった。(「その周囲、五十八センチ」より) 自己肯定と自己否定の相矛盾する狭間の中で生きる人の心を描いて大成功している。 (「その周囲、五十八センチ」大阪女性文芸賞選評より)--町田康
【第166回芥川賞候補作】 【第45回すばる文学賞佳作】 前代未聞の筋トレ小説、誕生! 「別の生き物になりたい」。 筋トレに励む会社員・U野は、Gジムで自己流のトレーニングをしていたところ、 O島からボディ・ビル大会への出場を勧められ、 本格的な筋トレと食事管理を始める。しかし、大会で結果を残すためには 筋肉のみならず「女らしさ」も鍛えなければならなかったーー。 鍛錬の甲斐あって身体は仕上がっていくが、 職場では彼氏ができてダイエットをしていると思われ、 母からは「ムキムキにならないでよ」と心無い言葉をかけられる。 モヤモヤした思いを解消できないまま迎えた大会当日。 彼女が決勝の舞台で取った行動とは? 世の常識に疑問を投げかける圧巻のデビュー作。 【著者プロフィール】 石田夏穂(いしだ・かほ) 1991年埼玉県出身。東京工業大学工学部卒。2021年「我が友、スミス」で第45回すばる文学賞佳作。