著者 : 砂原浩太朗
「死んどくれよ」いなくなって欲しいと願ったのは、ほんとうだった。でも…。著者初の「江戸市井もの」苛酷にして哀切、いっそ潔く、清々しい。恋い焦がれ、欲に流され、橋を渡ろうとする女と男。表と裏、感情のひだ、生きようを描き「傑作」と呼ぶしかない全八篇。
18歳の草壁総次郎は、何の前触れもなく致仕して失踪した父・藤右衛門に代わり、町奉行となる。名判官と謳われた祖父・左太夫は、毎日暇を持て余す隠居後の屈託を抱えつつ、若さにあふれた総次郎を眩しく思って過ごしている。ある日、遊里・柳町で殺人が起こる。総次郎は遺体のそばに、父のものと似た根付が落ちているのを見つけ、また、遺体の傷跡の太刀筋が草壁家が代々通う道場の流派のものではないかと疑いを持つ。さまざまな曲折を経て、総次郎と左太夫はともにこの殺人を追うことになるが、果たして事件の真相と藤右衛門失踪の理由とは。
里村五郎兵衛は、神宮寺藩江戸藩邸差配役を務めている。陰で“なんでも屋”と揶揄される差配役には、藩邸内の揉め事が大小問わず持ち込まれ、里村は対応に追われる毎日。そんななか、桜見物に行った若君が行方知れずになった、という報せが。すぐさま探索に向かおうとする里村だったが、江戸家老に「むりに見つけずともよい」と謎めいた言葉を投げかけられ…。最注目の時代小説家が描く、静謐にして痛快な物語。
「-未熟は悪でござる」兄弟の誇りを守るため、少年は権力者になった。神山藩で代々筆頭家老の黛家。三男の新三郎は、兄たちとは付かず離れず、道場仲間の圭蔵と穏やかな青春の日々を過ごしていた。しかし人生の転機を迎え、大目付を務める黒沢家に婿入りし、政務を学び始める。そんな中、黛家の未来を揺るがす大事件が起こる。その理不尽な顛末に、三兄弟は翻弄されていく。時代小説の新潮流「神山藩シリーズ」第二弾!
神山藩で、郡方を務める高瀬庄左衛門。五十を前にして妻を亡くし、息子をも事故で失い、ただ倹しく老いてゆく身。息子の嫁・志穂とともに、手慰みに絵を描きながら、寂寥と悔恨の中に生きていた。しかしゆっくりと確実に、藩の政争の嵐が庄左衛門に襲いくる。人生の苦渋と生きる喜びを丁寧に描く、武家もの時代小説の新星、ここに誕生!
大軍で東進を始めた今川義元を、織田信長が尾張・桶狭間で奇襲。永禄三年五月十九日、三国の太守が寡兵の一撃で落命した。「群雄割拠」から「天下布武」へ。戦国時代の流れを変えたこの変事は、本当に奇跡だったのか、それとも必然か!…戦国最大の逆転劇を、七つの視点で描く、大好評「決戦!」シリーズ第五弾!
非才にして無名。されど見事な生涯。若き浪々の日々も、大名となった後も、常に前田利家に付き従い幾度もその危難を救った男ー村井長頼。桶狭間、長篠、賎ヶ岳…名立たる戦場を駆け抜け、貫き通した忠義の生涯。そして、主君の肩越しに見た信長、秀吉、家康ら天下人の姿ー。