小説むすび | 著者 : 笠間直穂子

著者 : 笠間直穂子

パストラルパストラル

ごろごろする石。乾いた土。ながれる川の、吹いてくる風の、音。土や緑の、山羊や牛の、マッチの、におい。遠くないところで戦争があり、でもここには、べつの戦いがある。べつの剝きだしの生が、ある。 (帯文/小沼純一) 「火でも焚いてみるか?」「あたし、何も持ってない。あんたは?」「あるとも」--山羊の番をする少女のもとに、どこからともなく現れた14歳の少年。風の強い丘の草地、赤い燐マッチで火を熾した二人は隣どうし寝そべり、小石なみにカチカチのチーズを炎でとろりとさせパンにぬって食べる……。夕暮れどきの情景が、香りと音をともない彩り豊かに立ち現れる(表題作「パストラル」)。規範的なフランス語と異なるスイス・ロマンドの地理に即した文学言語をもちい、恋、老い、農家のくらし、山の民話など、人間と、人間を取り巻く世界の根源的な姿を映し出す20作品。 パストラル 農村の年寄り 湖の令嬢たち 日照り 使いの者 居酒屋の老人たち 香具師一家の休息 助けを求めて 野生の娘 山にひびく声 フォリー姿の物狂い 森での一幕 眠る娘 恋 三つの谷 田園のあいさつ 漁師たち ぶどう作り 恋する女の子と男の子 農家の召使い

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