著者 : 笹倉明
荒川の河川敷で女性のものとみられる焼け焦げた人骨が発見された。同じ日に新宿で見つかった変死体は、その着衣や所持品に不審な点が多く、身元の割り出しが難航。だが、二つの事件は意外な一点で結びつき、岩海警部補ら警視庁捜査一課は所轄各署との共同捜査に乗り出した。やがて捜査線上に、地下社会に蠢く男たちの悪に運命を翻弄された女の姿が浮かび上がる。直木賞作家が放つ、愛と哀しみのミステリ。
恐喝事件から派生した殺人事件を取り調べ中の刑事岩海は、手口にからむ容疑者の一言に余罪の存在を嗅ぎとる。相棒の女性刑事坂野と捜査を進めるなか、やがてタイのバンコクを舞台にした保険金殺人が浮かび上がってくる。だが、現地へと赴いた彼らを待っていたのは、夫婦、兄弟、親子といった人間関係に潜む、大河のように深い因果と因縁の絡み合いだった。直木賞作家による待望の長篇書き下ろしミステリ。
あなたのお父様丁大吉さんはご健在でいらっしゃる…。謎の手紙に導かれ、幼いころ失踪した父親を捜しに海峡を渡った唐谷美弥子の韓国への旅。そしてそこで知る複雑な人生の軌跡。日本・朝鮮の歴史の暗部を抉り、太平洋戦争から現代にかけて時代の荒波に翻弄される親子二代を描く、重くて深い感動の小説。
友と学園に別れを告げ、日本を脱出した大学生タケミ。秋の収穫期を迎えたイングランドの農村のファーム・キャンプで働く中で、さまざまな国籍の季節労働者と親しくなり、インドネシア育ちの中国人女性と愛を育てていく。祖国喪失の放浪者の厳しい身の上、人と国家のせつない現実を描く、青春国際ロマン。
「男の人が倒れている」110番通報の女の声には妙ななまりがあったー。逃走した外国人ストリッパーの身に一体何が起こったのか。彼女はなぜ真の素性を偽らなければならなかったのか。法廷での関係者の供述から次第に明らかにされていく、経済大国ニッポンの底辺に生きる女性たちの姿。感道の直木賞受賞作品。
巨大都市TOKYO。男と女がうろたえ、怒り、涙する。なぜ彼らの日常が犯罪になるのか?弁護士だから見つめられる人間の哀しみを背負いつつ、中町公一が法廷をカンバスに人生を描きあげていく。裁判小説の新境地を拓く佳作短篇集。
友と学園に別れを告げ、日本脱出をした大学生「私」と、イングランドのファーム・キャンプに集う季節労働者たちとの出会い。“リンゴ園”に汗する日々のなかで熱い議論と友情が育まれ、愛が生まれた。人と国家の哀しい現実を描く、青春コンモポリタン・ストーリー。
夜ごとあやしげな灯のともる街に群れる飾り窓の娼婦たち。放浪の果てにボン引きをはじめた「私」たちとのあいだに暖かな交流が芽ばえ、ふくらむ。国境をこえた性のかたち、こだわりのない愛の豊かさを描く傑作。他に「砂漠の舟」「72時間の母国」「落日」を収録。
タツミには確かな目標があった訳ではない。たどり着いたのがロンドンだったのだ。ナン焼きのためにケロイドができた左手をいつもポケットに入れて歩くネパール人グルン。子守りとなって挫折してゆく日本人女子留学生ナオコ…。白人から「黄色人」と軽蔑されながらもしぶとく生きる若者達をタツミの目を通して爽やかに描いた「すばる文学賞」入選作。他に「光の休暇」「闇の喜劇」を収める。