著者 : 筒井正明
サイラス・サイラス(上)サイラス・サイラス(上)
本書は、欧米で絶賛を浴びた傑作長篇小説。愛児殺害等の罪で英国市民を震憾させた主人公サイラス・サイラスは超自然的な脱獄をし、後には「自伝」が残されていた。上巻では、インドの賤民としてレイプされた母親から生を受けた幼年期から、バングラデッシュの内戦、フリーセックスを奨励するアメリカのカルト宗教での修行。英国でのフェミニズムの左翼活動と官憲による弾圧までが語られる。愛と悽惨な離別、さすらいと、神秘体験と、性の記録。唯一者への信仰と、東洋的なアニミズムのせめぎ合う坩堝のような哲学、痛烈な社会批判、卓越したブラック・ユーモアとストーリー・テリングが重層的に読む者を眩惑する。
サイラス・サイラス(下)サイラス・サイラス(下)
三人の愛児殺害等の罪で英国市民を震撼させた「今世紀最大の悪漢」サイラス・サイラスが、忽然と独房から消えた後に残した自伝がさらに語る、啓示と絶望と求道と救済の記録。ストーンヘンジでの神秘体験、悪魔崇拝のフリーメーソン活動、つかの間の幸福と喪失、はては冥界巡りと再生まで。インドの賤民として生を受け、救世主として神に選ばれたはずの彼に示される耐えざる貧困、人間同士が騙し合い、虐殺し合う現実、動物虐待…。そうしたこの世の不条理への憤激を創造主に向けて糾弾する。しかし真理を究めた彼を待ち受けていたのはキリストの受難のごとく…。
ランサムランサム
70年代、一人の青年がアメリカを旅立ち、インド、ネパールを放浪し、日本へやってきた。名前はランサム。京都で空手の修業にはげむ寡黙な彼が求めていたものは何か、その秘められた過去が語るものは…。70年代の若者の精神の漂流、そして宿命を、日本を舞台に描いた、ニュー・ロスト・ジェネレーションの作家の自伝的作品。
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