著者 : 萩原ちさと
ルーシーが長年片想いしている大富豪社長マーカスは、彼女を愚かな小娘と決めつけ、顔を合わせればお説教ばかり。だから、今、ルーシーの会社が倒産の危機に瀕していても、惨めな姿をさらしたくなくて、彼にだけは相談できなかった。ある夜、財界の大物が集うパーティに出たルーシーは、会社再建の協力者を見つけた喜びでシャンパンを飲みすぎてしまう。すると、同じパーティに出席していたマーカスに見咎められ、強引に屋敷へ連れて帰られたうえに、突然、唇を奪われた!そしてついに憧れのマーカスと結ばれ、ルーシーは幸せをかみしめたーやがて彼に跡継ぎを作るための“合理的”な結婚を求められるまでは。
幼い息子と質素に暮らすケリーが交通事故を起こしてしまった日、病院に運ばれた彼女の前に、4年前に別れた夫アレックスが現れた。「医師に、僕に会いたくないと言ったそうだね」イタリア大富豪らしい優雅な身のこなしも、挑戦的な琥珀色の瞳も、すべてをかけて愛したあの日のままの彼がそこに立っていた。これまでずっと絶縁状態だったのに、なぜ今になって会いに来たの?離婚原因はケリーが浮気したこととされているが、彼女自身はまったく記憶がなく、実のところ異母姉が仕組んだ罠だった。そうとは知らないアレックスはなおも怒りをたたえ、言い放った!「罪の償いをしてもらう。僕たちは再婚するんだ」
わがままな主人に呼びつけられ、家政婦のカーリーは、屋敷内にあるジムへと急いだ。事故で怪我をして以来、在宅療養している富豪ルイスは不機嫌で、今日も案の定、美人の理学療法士にくびを言い渡した。そして驚いたことに、今後はカーリーが代わりをするよう命じたのだー莫大な報酬と引き換えに。実は彼女は医大に進み、医師になるのが夢だった。だが当時は極貧のうえ父の介護もあり、泣く泣く諦めたのだ。引き受ければ、また夢に挑戦できる。ただ、ひとつだけ、気がかりなのは…ルイスがあまりにもセクシーすぎること。指先が彼に触れただけで、なぜこんなに胸が苦しくなるの?
サンドリンは10歳年上の実業家ミシェルと電撃結婚した。知的で官能的な夫を愛していたが、新婚半年で早くも暗雲が垂れ込める。彼女が4週間海外の仕事をすることに、彼が強硬に反対したのだ。妻を鳥かごに閉じ込めようとするなんて、と若いサンドリンは抗い、書き置きを残してNYを飛び立った。だが仕事でトラブルが発生し、滞在が延びて資金が底をついたとき、長身で黒髪の男性が救世主さながら現れ、援助を申し出たーミシェル!彼は怒りを込めたキスで妻を罰し、投資の対象はきみだと告げる。サンドリンが断れないことを承知で、彼は激しく妻を求めた!
赤ん坊を乳母車にのせて、深夜のロンドンの街をさまようホリー。子供の父親に捨てられ、行くあてもない。このままでは…。物思いにふけるあまり、交差点に近づいていると気づかなかった。次の瞬間、車道との段差に足をとられ、ホリーは転倒した。イタリア人の富豪リオ・ロンバルディはリムジンから飛びだし、頭を打って意識を失った、うら若い女性の姿を目にした。婚約を破棄したばかりの彼は、どうしても妻を必要としていた。この子連れの女性を屋敷に連れ帰り、妻にするのはどうだろうか?
友人の結婚式と仕事のため、異国の地を訪れたキーラ。豪華ホテルでの式が終わり、中庭で披露宴が始まる前のこと。穏やかな低い声がして振り向くと、長身で黒髪の美男が立っていた。これほどの色気を放つ男性に会うのは初めてだわ…。言葉を交わすうち、抗いがたい魅力に惹きつけられ、気づけば彼に唇を奪われていた。ああ、なんということを!娼婦の娘と蔑まれてきた生い立ちから、男性とは関わらないと誓っていた。破滅の予感に怯え、キーラは彼の腕を振り払ってその場を逃げ出した。ところが翌日、仕事の依頼でさる宮殿に足を運んだ彼女を迎えたのは、なんとキスの相手ー現代のマハラジャと名高い実業家ジェイだった!
なんてカリスマ性にあふれた人なのかしら!世界的実業家マノロ・デル・グアルドの屋敷を仕事で訪れ、アリアンは颯爽と現れた長身で黒髪の彼にひと目で魅了された。妻を亡くしてまもない彼は、赤ん坊が泣くたび中座した。生後半年の幼い娘がなつかず、ナニーが辞めてしまったという。その夜ー。屋敷に響き渡る赤ん坊の激しい泣き声が心配で、アリアンは声を頼りに子供部屋へ向かい、懸命にあやした。アリアンの腕の中で安らかな寝息をたてはじめた娘を見て、部屋に入ってきたマノロが驚くべき提案をする。「このまま屋敷に残って、娘の面倒を見てくれないか」。
シャーロットの働く美術館では、ギリシア彫刻展を控えていた。そのスポンサーが、まさかデイモン・ラトゥサキスだったとは!デイモンは、美しい容貌と巨万の富を持つギリシア人実業家で、かつてシャーロットに愛の手ほどきをしてくれた恋人だった。だが身に覚えのないことで責められ、別れたのだ。美術館主催のパーティの夜、二人は4年ぶりに再会する。父親と同じ目をした娘のことだけは、隠し通さなければー不安に震える彼女の緊張をよそに、デイモンは再び誘ってきた。高額の手当と引き換えに、愛人にならないか、と。
ハンナはスペイン人実業家のセクシーで魅力的な夫ミゲルと一緒に、友人の家で開かれたディナーパーティに出かけた。そこでカミーユというフランスから来た妖艶な女性と知り合う。厄介を引き起こしそうな人ねー本能が、ハンナにそう告げた。ハンナとミゲルの結婚は、両家の事業のための便宜的なもの。だから、ミゲルとの生活がどれほど情熱に満ちあふれていても、ハンナは夫に愛されているという自信が持てずにいた。そして、日ごとに募る彼への想いを打ち明けて傷つくのが怖かった。気弱な心を懸命に隠し、社交界の華としてふるまうハンナだったが、それを嘲笑うかのようにカミーユはミゲルを奪うと宣言し…。
ローラは母の日を祝うため、昼食会で得意の料理をふるまったが、家族だけが集まるはずの場に、父の右腕ジェイクが突如現れて驚いた。暴君そのものの父と同じく、この人も冷血非道な男性じゃないかしら。そう疑ったものの、実際の彼は俳優クラスの美貌に機知と朗らかさを兼ねそなえており、惹かれたローラは庭で思わず唇を許してしまう。その後、ジェイクに誘われるまま、毎週土曜の午後7時に、父には秘密でディナーデートを重ねた。やがて数カ月が過ぎたある日、彼が翌週の約束もせずに言った。「今まで楽しかったよ」まるでこれきりみたい…。胸騒ぎを覚えた彼女を、ほどなく衝撃が襲う。ジェイクが彼女の父を訴えたのだ!まさか私、彼に利用されていたの?
今世紀最高の結婚と注目されつつも、花嫁ネルの心は沈んでいた。愛するアレクサンドロスとのこの結婚は、実は契約でしかない。ギリシア人実業家の彼は、経営難に陥ったネルの父親と話をつけ、5千万ポンドと引き換えに、年若く従順な妻を手に入れたのだ。そればかりか、式前日にも彼が愛人と会っていたと知り、傷ついたネルは、初夜にアレクサンドロスを拒んでしまう。憤慨した彼は妻を屋敷に閉じこめ、愛人と逢瀬を重ねるようになる。そんな日々は1年も続き、ネルはついに車で屋敷を飛び出した。だがスピードを出しすぎた車は木に衝突。意識が遠のいていく。わたしは死ぬの…?夫への、愛も純潔も捧げられないまま…。
出張中のはずなのに、なぜ彼がここへ…。ルイーザはいま、丘の上で、別れたあの日以来、一度も会っていなかった夫、アンドレアスに抱きしめられていた。それはわずか2歳で世を去った息子の墓参りのための帰郷だった。17歳の夏。光射すギリシアの地に赴いたルイーザは、大富豪の御曹子アンドレアスと身分違いの恋に落ち、妊娠した。だが、彼が他の女性とベッドにいるのを見てから、二人の幻のような愛は揺れ始め、やがて完全に立ち消えたのだ。それなのに、なぜいま、熱い腕で私を搦めるのー
王家に嫁ぐ姉の結婚式に出るため、王室専用機の搭乗ラウンジで案内を待っていたタムシンは、ギリシアの大富豪ザンとでくわし、絶句した。ウエイトレスをしていた店にザンがやってきたとき、彼のズボンにカクテルをこぼしてしまったことがあったのだ。気まずい再会にもかかわらず、結婚式後のパーティで彼と踊ると、瞬く間に官能に火がつき、その夜タムシンは純潔を捧げた…。それきり音信のとだえたザンが、3カ月後、彼女の前に現れた。大金と引き換えの契約結婚という、屈辱的な提案をたずさえて。
アナにとって裕福なエリート銀行家リュークとの結婚生活は、まさに幸せそのものだったー夫の元愛人の影が射すまでは。不安が募り、耐えきれなくなったアナは逃げるように家を出た。数日間は平穏に過ぎたものの、9日目になって突然、いつも以上に尊大な態度のリュークがアナの目前に現れて告げた。「僕の妻には家に戻ってもらう。僕のベッドに」驚いたことに、夫はアナが妊娠していることを知っており、さらに彼女の父親が会社で不正を働いた事実まで調べあげていた。なんて卑劣なの!妻を脅迫して思いどおりにしようだなんて。
ニーヴは恩人である老富豪の形だけの妻となり、彼を看取った後、まだ十代の反抗的な娘の継母となった。だが世間は“金目当てに老人と結婚した悪女”と責めたてる。いわれなき悪評と娘の反発に憔悴していたニーヴは、ある吹雪の夜、ハンサムなイタリア人実業家、セヴェロ・コンスタンツァと出会う。二人は情熱に流されるまま熱いひとときを過ごすが、翌朝、ニーヴが世間を騒がせている悪名高い未亡人と知るや、セヴェロの表情が一変し、彼は冷たく去っていった。3カ月後、ニーヴは途方に暮れて泣いていた。彼女を金の亡者と信じたセヴェロの子を、身ごもったのだ。
放蕩者の父が亡くなり、清掃人として働きづめだったキャリーは憧れのイタリアへ旅に出ることにした。アマルフィのホテルで出会ったゴージャスな男性、ルカに誘惑されるが、彼女は急に怖くなって拒んでしまう。やっぱり私には火遊びよりも額に汗して働くほうがお似合いね。ファブリツィオ公国のレモン農園で働き始めた彼女は偶然にもルカと再会し、ついに結ばれるーその正体も知らずに。彼が公国の大公だと聞かされたとき、キャリーは妊娠していた。身分違いの小娘が弄ばれただけ…この子は独りで育てるわ。
ロンドン郊外の空港のラウンジで、秘書のナタリーは悩んでいた。傲慢な億万長者のボスに仕えて5年。心身ともにもう限界だった。すると突然、背後から声がかかり、彼女は振り返って仰天した。そこにはナタリーと瓜二つの、身なりのよい女性が佇んでいた。異国の王女だという彼女とナタリーはすぐさま意気投合し、互いの悩みまで打ち明け合ったが、ふと王女が意外な提案をした。45日間だけ、密かに立場を入れ替わってみないかというのだ。私が王女に?承諾したのも束の間、すぐに後悔に襲われる。あろうことか王女の許婚ロドルフォに惹かれ、唇を奪われて…。
サンドリンはフランス人実業家ミシェルと電撃結婚したが、新婚6カ月で、二人の結婚生活には早くも暗雲が立ちこめる。サンドリンが撮影の仕事で家を離れることを、夫が認めないのだ。そんなふうに妻を束縛するなんて、と若い彼女は反発し、書き置きを残して、仕事の待つゴールドコーストへ向かった。ところがトラブルが発生し、サンドリンは帰れなくなってしまう。滞在が延び、資金が底をついたサンドリンたち撮影チームの前に、夫ミシェルが救世主さながら現れ、資金提供を申し出た。彼は怒りを込めたキスで妻を罰し、投資の対象はきみだと告げる。サンドリンが断れないことを承知で、彼は激しく妻を求めた。
ラファエル・ペトリが私を雇いたいというの?ニューヨークのホテル王からの突然の指名に、リリーは驚いた。自宅で企業調査を請け負う彼女にとっては名誉なことだが、一つだけ気がかりなことがあった。人目に触れるのが怖いのだ。14年前、リリーはある事故で頬に火傷を負い、それ以来、恋愛を遠ざけて世間から隠れるように生きてきた。その美貌で女性を虜にできるラファエルには理解できないだろう。リリーは地味なだぶだぶの服に身を包み、髪で片頬を覆うと、傲慢な雇い主のもとへ向かったー愛人になる運命とも知らずに。