著者 : 葉真中顕
ホームレスの老女が殺され燃やされた。犯人草鹿秀郎はもう18年も引きこもった生活を送っていた。彼は父親も刺し殺したと自供する。長年引きこもった果てに残酷な方法で二人を殺した男の人生にいったい何があったのか。事件を追う刑事、奥貫綾乃は、殺された老女に自分の未来を重ねる。私もこんなふうに死ぬのかもしれないーー。刑事と犯人、二つの孤独な魂が交錯する。困難な時代に生の意味を問う、感動の社会派ミステリー。
新央出版の編集者・葛城梨帆の元に突然、原稿が届く。それは以前新人賞で落選した志村多恵からのもので、学生時代の友人が時を経て再会するところから物語は始まっていた。立場の違う二人の会話はすれ違い、次第に殺意が募っていく。「いっそのこと、最後にこの女を殺してやろうか」-。そんな登場人物の苦境に思いを馳せるうち、梨帆自身の忘れられない出来事と原稿内容がリンクし始める…。私たちのシスターフッドがここにある、著者渾身のミステリー!
「組織で生きる者の矜恃」 オール書き下ろし新作 次世代ミステリー作家たちの警察小説アンソロジー 「孤狼の血」スピンオフ、「刑事犬養」シリーズ新作収録 収録作 葉真中顕 「上級国民」 刑事事件化されなかった交通事故に隠された真実 中山七里 「許されざる者」 東京オリンピックの裏で起きた悲劇 呉勝浩 「Vに捧げる行進」 街で頻出する落書き犯の驚愕の意図 深町秋生 「クローゼット」 バディを組む上野署の刑事が抱える秘密 下村敦史 「見えない刃」 性犯罪の捜査に乗り出した女刑事が見たもの 長浦京 「シスター・レイ」 半グレたちのトラブルに巻き込まれた謎の女 柚月裕子 「聖」 ヤクザに憧れ事務所に出入りする少年が目指すもの
「日本は戦争に勝った!」無二の親友を引き裂いた「もう一つの戦い」の真実。デマゴギーの流布と分断が進む現代に問う、渾身の巨篇。沖縄生まれの勇と、日系二世のトキオ。一九三四年、日本から最も遠いブラジルで出会った二人は、かけがえのない友となるが……。第二次世界大戦後、異郷の地で日本移民を二分し、多数の死者を出した「勝ち負け抗争」。共に助け合ってきた人々を駆り立てた熱の正体とは。分断が加速する現代に問う、圧倒的巨篇。
バブル期に、個人として史上最高額4300億円の負債を抱え、自己破産した朝比奈ハル。「北浜の魔女」と呼ばれた彼女は、平成が終わる年にひっそりと獄死した。和歌山の寒村で生まれ育ったハルは、いかにしてのし上がっていったのか、彼女は果たしてどんな人物だったのか。その生涯を小説に書こうと決めた“私”は、生前の彼女を知る関係者に聞き取りを始める。終戦、バブル崩壊、コロナ禍……。それまでの日常が、決定的に変わってしまうとき、この日本社会に生きる人々はどう振舞ってきたのか。「小説トリッパー」二〇一九年夏号から二〇二〇年春号の連載を、大幅に加筆修正。注目の著者による勝負作。
平成という時代があった。1989年1月8日に始まり2019年4月30日に終わった。およそ30年4か月に及ぶ時代が始まる日に生まれ、終わる日に死んだ一人の男がいた。名は青、母親は彼をブルーと呼んだ。平成15年12月、青梅で教員一家5人の刺殺事件が発生する。藤崎たち警察は、次女の篠原夏希(31)がほかの4人を惨殺した後、薬物摂取の心臓発作で亡くなったと推察した。夏希は高校時代から不登校となり、16年間引きこもっていたという。実はこの事件には重大な事実「凶器に夏希以外の指紋」があり、第三者がいたことがわかっている。事件はその後、夏希の驚愕の真実が明らかとなることで行き詰まっていく。平成31年4月、あと少しで平成が終わる時、多摩ニュータウン団地の空き室で血まみれの男女の死体が発見される。離婚して刑事にカムバックした奥貫綾乃が捜査に加わる。殺されていた二人には子供がいて、彼らはネットカフェ難民だったことがわかるーー。平成元年に生まれた男。平成15年に迷宮入りした殺人事件。平成が終わる直前に起きた殺人事件。それらが平成という時代の中でつながっていく。平成が終わる今だからこそ、平成30年間の社会や文化の変化を描きながら、児童虐待、子どもの貧困、無戸籍児、モンスターマザーと、現代社会の問題に迫る、クライムノベルの決定版。
一九九五年三月二十日、丸の内で起こった無差別乱射事件。カルト教団『シンラ智慧の会』による凶行の首謀者は、忌まわしき過去を背負う教祖、天堂光翅であった。彼や教団に関わった者たちの前に現れる一匹の煌めく蝶。金色の翅が導くのは地獄か、それとも……。平成を揺るがすテロ事件が生み落とした絶望とかすかな希望を、幻想的かつスリリングに物語る衝撃作!
警察官であるより前に、一人の人間として、常に正しくありたいんだよーー「警察官の鑑」と誰からも尊敬されていた熊倉警部。W県警初の女性警視へと登りつめた松永菜穂子は、彼にある極秘任務を与えていた。その最中の、突然死。事故かそれとも……。事故として処理したい菜穂子の胸中を知ってか知らずか、熊倉警部の娘が事件現場についてあることに気づく。『絶叫』『凍てつく太陽』の著者が贈る、ネタバレ厳禁!前代未聞の警察小説。
目的のためには殺人も辞さない過激な動物愛護団体、『DOG』。遺棄動物の譲渡会が行われる会場に集まった隆平、栞、結愛と拓人たちは、『DOG』によって会場に閉じ込められ、謎の黒い獣に襲われる。獣から逃げるため、逃走を開始する人間たち。「ヒト」と「ケモノ」を隔てるのは何か。
社会派ミステリー作家が放つ問題作 “ポリティカル・コレクトネス”をコンセプトにした警察小説の依頼を受けた、新人作家・ハマナコがたどり着く境地とは……!? 表題作「政治的に正しい警察小説」ほか、偶然通りかかったカレーショップで、生き別れた母の思い出の味に再会した大学生の僕とその“隠し味”をめぐる「カレーの女神様」、25歳の若さで亡くなった“史上最強の棋士”紅藤清司郎の没後20年にあたり、彼の軌跡を取材したライターがたどりつく真相を描く「神を殺した男」など。驚愕と感嘆にあふれた全6編を収録。『ロスト・ケア』『絶叫』など社会派ミステリーの新鋭が放つ、ブラックユーモアミステリー集が文庫オリジナルで登場。 【編集担当からのおすすめ情報】 著者の企みに満ちた、スリリングな展開のミステリー6編を収録しています。驚きの逆転劇をお楽しみください。
ゾンビが文芸界を侵食。大人気漫画小説化 累計800万部大人気コミックス『アイアムアヒーロー』(花沢健吾・著)の映画化を記念して執筆された、朝井リョウ、中山七里、藤野可織、下村敦史、葉真中顕、佐藤友哉・島本理生という豪華執筆陣によるアンソロジー小説集。日本文学界に激震が走ったゾンビ小説が待望の文庫化。迫り来る恐怖の物語の数々にあなたは耐えられますか・・・? (内容) ZQN前の世界、比呂美の幸せだったころの物語(朝井リョウ) ZQN細胞を研究している機関で起こった衝撃(中山七里) 陸上部に所属する女子中学生たちに迫り来る恐怖(藤野可織) ZQNに効くワクチンがあるという噂。鈴木英雄が行動を起こす(下村敦史) 将棋の最高峰「名人戦」。戦いを制するのはいったい・・・・?(葉真中顕) 男性目線と女性目線が見事に交錯。息をもつかせぬ合作小説。(佐藤友哉・島本理生)
マンションで孤独死体となって発見された女性の名は、鈴木陽子。刑事の綾乃は彼女の足跡を追うほどにその壮絶な半生を知る。平凡な人生を送るはずが、無縁社会、ブラック企業、そしてより深い闇の世界へ……。辿り着いた先に待ち受ける予測不能の真実とは!? ミステリー、社会派サスペンス、エンタテインメント。小説の魅力を存分に注ぎ込み、さらなる高みに到達した衝撃作!
「この世界は、一匹の蝶が見ている夢かもしれない」 1995年3月20日、カルト教団『シンラ智慧の会』通称「シンラ」の教祖、天堂光翅の命を受け、白装束に身を包んだ6人の信者が、丸の内で無差別乱射事件を起こす。その宗教は、1958年ひとりの女が呪われた子を産む決意をした日に始まる。たとえ今、生きる意味が見出せないとしても、もしかしたらこの子は、私に生きる意味を与えてくれるかもしれないとーー。 『ロスト・ケア』『絶叫』を超えた!これは、葉真中顕というジャンルだ。
目的のためには殺人も辞さない過激な動物愛護団体、<DOG>。遺棄動物の譲渡会が行われる会場に集まった隆平、栞、結愛と拓人たちは、<DOG>によって会場に閉じ込められ、謎の黒い獣に襲われる。獣から逃げるため、逃走を開始する人間たち。「ヒト」と「ケモノ」を隔てるのは何か。 【プロローグ】熊 BEAR 【I】犬 DOG 【II】獣 BEAST 【III】人 HUMANKIND 【エピローグ】鳥 BIRD
戦後犯罪史に残る凶悪犯に降された死刑判決。その報を知ったとき、正義を信じる検察官・大友の耳の奧に響く痛ましい叫びーー悔い改めろ! 介護現場に溢れる悲鳴、社会システムがもたらす歪み、善悪の意味……。現代を生きる誰しもが逃れられないテーマに、圧倒的リアリティと緻密な構成力で迫る! 全選考委員絶賛のもと放たれた、日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作。
鈴木陽子というひとりの女の壮絶な物語。涙、感動、驚き、どんな言葉も足りない。貧困、ジエンダー、無縁社会、ブラック企業…、見えざる棄民を抉る社会派小説として、保険金殺人のからくり、孤独死の謎…、ラストまで息もつけぬ圧巻のミステリーとして、平凡なひとりの女が、社会の暗部に足を踏み入れ生き抜く、凄まじい人生ドラマとして、すべての読者を満足させる、究極のエンターテインメント!
社会の中でもがき苦しむ人々の絶望を抉り出す、魂を揺さぶるミステリー小説の傑作に、驚きと感嘆の声。人間の尊厳、真の善と悪を、今をいきるあなたに問う。第16回日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作。