著者 : 藤田宜永
多くの別荘地を抱え、避暑地として名高いK町が記録的な大雪に見舞われた。町民や観光客、仕事のため車で訪れた人々も動きがとれない。除雪作業も追いつかず、災害救助法が適用され、自衛隊の派遣を要請する事態に。想定外の変化が引き起こした出会い、別れなどを描いた六つの物語。吉川英治文学賞受賞作。
三年半ぶりに日本の地を踏んだ復員兵の貝塚透馬は、衝撃の事実を知らされる。空襲を逃れ軽井沢の山荘に疎開していた両親が、ピストルを持った強盗に撃ち殺されたというのだ。犯人は未だ捕まっておらず、遺体の第一発見者であるメイドの八重は事件後、姿を消した。両親を殺したのは誰なのか。東京で八重の捜索を開始した透馬だったが、フランス留学時代の旧友、恵理子に再会したことで思わぬ事態に巻き込まれていくー。事件の裏に見え隠れする、ナチスの隠し財産をめぐる恐るべき国際謀略とは!?
バブルで巨額の負債を負った自動車修理工氏家豊は、六七年型マスタングで流す夜、何者かに拉致された旧友五十嵐の娘香織を救う。自らも凶禍に遭った氏家に、銀行員の五十嵐は不正融資を強いられたと告げて失踪。マスタングの持ち主で赤坂の料亭女将澄子にも危機が及び、真相を追うや、トラブルはさらに飛び火した!時代の光と闇を描くハードボイルドの旗手、渾身作!
金融会社社長が政界へ流す裏金11億円を、社長運転手の根津謙治が周到な計画の末、強奪する。事件への関与を疑われた謙治だが、アリバイ工作が奏功、逮捕に至らず、実業家として成功を収める。時効直前、かつての謙治の暴挙が綻びとして不穏な影を落とす。昭和の時代と風俗を克明に描く「戦後ノワール」巨編!
大阪あいりん地区のロッカー屋から届いた宅配便。古ぼけた鞄に入っていた手紙にある山本という名に、竹花は覚えがなかった。中身はガラクタのようなものだったが、鞄を引き取りたいと申し出る男が現れた。そして、山本の娘だという女優・清香から依頼を受け、竹花は大阪へ向かう。地元の探偵・明珍を相棒にして調査を進めると…。鞄の中身に秘められた謎とは!?
旅行代理店を経営する男が、ある晩仕事帰りに待ち伏せされ、二人組の男に暴行を受けた。物盗りの犯行ではない。怒鳴り散らす癖のある男は自分に恨みがある者の犯行ではと疑うが…(「怒鳴り癖」)。危機は、日常の延長に思いもよらぬ姿で忽然と現れるー。人生の「迷路」に迷い込んだ6人の男たちを描く短篇集。
恋は、遠い日の花火なんかじゃない、今そこにあるもの。恋は、若者たちの特権なんかじゃない、熱い思いのストックなら、たんと持っている。恋の熾火にふと気づいて、掻き廻したくなるとき。たまさか出会った相手に、自分の過去を重ねてみるとき。直木賞作家の年季が物を言う短編集。
竹花のパリ時代の旧友で、有名作家の国分英二郎の遺体が軽井沢の別荘で発見された。警察は自殺と決めつけ、事件とはならなかったが、竹花は現場の状況に違和感を覚えた。やはり自殺を疑う国分の娘・麗子の依頼で調査を開始した竹花だったが、事態は意外な展開に!圧巻の長編ハードボイルド!
美貌の女探偵・唐渡美知子は原宿の自宅マンションで消音器付きの拳銃に狙われた。命拾いした美知子は、過去に関わりのあった、影乃という謎めいた過去を持つ探偵と、事件の真相を追い始める。ほどなく、彼女の事務所を訪れていた女子大生・光成真澄と父親の会社社長が立て続けに殺される…。30年の時を経て執筆された続篇『罠に落ちろ』のシリーズ第1作、藤田ハードボイルドの原点!
1974年東京。探偵・浜崎順一郎は事務所近くで身なりのよい少年を保護した。少年を親元に送り届けた浜崎は、彼の父親がかつての悪友で、今や名家の継嗣となった石雄であることを知る。だが、旧交を温める間もなく石雄の義妹が殺された。逃亡した容疑者が見つかれば解決と思われたが、なぜか石雄は事件に関わるなと主張し…名家の悲劇と男の友情を描く傑作私立探偵小説。
1972年秋。父親の死とともに新宿歌舞伎町の探偵事務所を受け継いだ浜崎順一郎は、女子大生・栄子から生き別れの母親でバンプ女優と言われた神納絵里香を捜してほしいと依頼される。だが、やっと見つけ出して栄子と会わせる約束を取り付けた矢先、絵里香は何者かに毒殺されてしまった。直後、栄子は姿を消し、第一発見者として容疑者扱いされた浜崎は事件を調べ始めるが…直木賞・吉川賞作家が放つ正統派ハードボイルド。
女優毒殺事件を追う浜崎は、友人の記者・古谷野や歌手の福森里美らの協力で、殺された絵里香が映画会社元社長の愛人だったことを知る。元社長は消えた依頼人・栄子とも関係が?さらに調査を進めるうちに、女優殺しと、探偵だった亡父が調べていた現金輸送車強奪事件との間に奇妙な繋がりを発見した。だがまもなく、浜崎は何者かに襲われ…ジャズや映画が全盛の70年代を舞台に贈る極上の私立探偵小説。
50歳の音楽プロデューサー、塩原達也のもとを突然訪ねてきた29歳の川原奈緒。セックスは苦手と言いながら、年上の俳優と不倫経験があり、男友達と二人で旅行にも出かけてしまう。理解できない奈緒の言動に達也は心を奪われるが、それは禁断の世界の入り口に過ぎなかった…。全裸で絵本を読み聞かせ子守唄を歌う不思議な女。禁断のプレイにはまった男を待つのは天国か、地獄か。あなたを子供に戻してあげたい。男が絶対に認めたくない欲望を直視した衝撃作。
私は森川崇徳。59歳。十数年前に妻を亡くし、現在は東京・江東区に母、次女、三女夫婦と孫、姪っ子、そして二匹の牝猫と暮らしている。近所に住む姉の不倫疑惑、競艇選手である長女の事故、母の徘徊などなど女たちが起こす事件に日々振り回され孤軍奮闘中。そんなある日、私の前に運命の女性が現れた…。
私立探偵・影乃は相棒の雪永とともに谷内義光の惨殺死体を発見。ほどなく蔵主グループ会長・蔵主喜一郎の豪邸で、金庫を狙った窃盗団を撃退する。蔵主は、影乃の仕事仲間の私立探偵・唐渡美知子に、出奔した長男・清太郎の捜索を依頼した。家族の内紛に揺れる蔵主グループには、企業乗っ取りをたくらむ証券仕手筋の奸計が迫っていた…。金と欲の渦巻くバブルに踊る80年代末の東京を舞台に、「影の探偵」が凶悪犯罪を追うハードボイルド・ミステリー!
だれもが憧れる街、銀座。そこには恋も、挫折も、野心も、生きがいもある。なにかを期待するから、この街に男も女も引き寄せられ、なにかが起こるから、人生は彩られていく。銀座は、何気ない日常の中の特別な舞台ー。「銀座百点」で好評連載された33のショートストーリーに、撮り下ろしの写真を多数収録。宝石箱のような一冊。
偽名を使い、多数の人を殺めてきた腕利きの榎波は、暴力団員が起こした動物惨殺事件を見逃すことが出来なかった。激情に駆られながらも、冷徹に暴力団員を射殺した榎波だったが、その完璧さが彼の運命を大きく狂わせていく。榎波の手口が他の伝説の暗殺者・花井と酷似していたことから、花井を追うことになった“影の弁護士”・藤立。本来絡み合うはずのない2人が、再び出会うとき、未曾有の犯罪を巡る追跡劇がはじまる。