著者 : 西村望
狐火狐火
淳子四十六歳。男と女の情炎を燃やしつづけた人生だった。養女となって婿養子をとったが夫は養母と関係し、飛び出て勤めた料亭では、主人にくどかれたのも束の間、夫人に半死半生でたたき出された。月日を重ね、料亭まで手にいれたが、世話してくれた男にも身をまかせた。その男が知人の男性も交え、スペイン旅行に行こうと誘ってきた。なぜ三人。淳子の肉体の奥に、妖しい炎が燃えさかった。鬼才の秀作。
夜に哭く風夜に哭く風
郷里の街で婦女暴行をやらかした中川は、流れ流れて都会の片隅でバーテンの職に就いた。たまたま店に遊びに来た人妻の和歌が、そんな中川に色目をつかう。亭主だけではもの足りない和歌は若い男の肉体に溺れ、中川も彼女の成熟した肢体と、そのつど渡してくれる小遣い目当てに爛れた関係を繰り返す。しかし些細な諍いから中川は殺意を覚え気がついた時は和歌の首を。犯罪小説の鬼才が放つオリジナル傑作。
海の凧海の凧
明治の末、貧困にあえぐ四国の寒村で、若者たちは、一撹千金の夢を賭けて、アメリカ密航を企てる。アメリカでは1年で日本の10年分を稼げるという噂を頼りにして…。10人の男女は、四国を出帆する。まるで海に放たれた凧のように、不安いっぱいの前途である…。奇想天外の冒険ロマン。
風よ迷路を吹き抜けよ風よ迷路を吹き抜けよ
京都在住の大月信平・エリ子夫妻には子供ができない。だが信平は36歳。若い。交際誌で『私たちの夫婦生活を見て!』という記事を読み、名古屋の神田夫妻を訪問。さらに松本夫妻と交際し,鑑賞より実践が迷路を聞くことを悟った。そこに快感未体験の八木夫妻も加わりスワッピングは盛り上がる。鬼才が性を通して人間の業を描く。
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