著者 : 角川書店装丁室
38歳の若さで日本を代表する企業の人事課長に抜擢されたエリートサラリーマンと、暗い過去を背負う短大生。二人が出会って生まれた刹那的な非日常世界を描いた感動の物語。直木賞作家、鮮烈のデビュー作。
化学者ばかりが狙われる謎の連続密室殺人事件が発生。恐怖に歪む死体の表情は事件のむごたらしさを伝えていた。一方森の奥のアリの帝国では十字軍が組織されていた。生態系の最大の敵、人間を絶滅させるためにーー。
土佐・嬉才野村に住む老女の脳裏に甦る四十年前の「神祭」の奇妙な記憶。盆の日、山中に忽然と消えた公務員・定一。彼は神隠しにあったのか、それとも。神秘と幻想美あふれる土俗世界を描いた珠玉の短編集。
アメリカ・ペンシルベニア州で、夫婦の冷凍死体が発見された。五歳の息子は行方不明のまま、事件は迷宮入りする。一方、日本では、異常な兆候を示す少女がいた。数年後、恋人を亡くし、重度障害児施設に赴任した女医・志度涼子は、保護室に閉じ込められた少女に出会う。そして、運命の歯車は容赦なく回り始めたー。人類という種が背負った哀しい宿命を、壮大なスケールで描いたヒューマン・ミステリ。第二十回横溝正史賞正賞受賞作。
企業ヤクザの顧問を務める弁護士・小早川の事務所に、あらたな事務員として紀籐ひろこが採用される。その当時、小早川事務所は二件の交通事故の弁護を同時に引き受けていた。一件は謝罪の意思の無い加害者の弁護。もう一件は死亡現場に警察の見つけていない証拠の残された事件であった。素人同然のひろこは難航していた二件の糸口を見つけだす。才能あるひろこに次第に惹かれていく小早川であったが、身元を調査した結果は…。究極の女性を好きになった男の深き苦悩と愛情の物語。
昭和初期。オカルト、猟奇事件、ナショナリズムが吹き荒れる東京。歌人にして民俗学者の折口信夫は偶然に、しかし魅入られるように古書店「八坂堂」に迷い込む。奇怪な仮面で素顔を隠した主人は木島平八郎と名乗り、信じられないような自らの素性を語り出した。以来、折口のまわりには奇妙な人、出来事が憑き物のように集まり始める…。ロンギヌスの槍、未来予測計算機、偽天皇、記憶する水、ユダヤ人満州移住計画。-昭和の闇を跋扈するあってはならない物語。民俗学伝奇小説の傑作、登場。
日常世界の中でふと垣間見てしまった性の秘密に戸惑いながら、大人への階段を昇ってゆく少女の姿を描いた「世界の真ん中」。村祭りで出会った見知らぬ年上女性に誘惑され、熱く夢のような一夜を迎える少年の心情に迫った「ホップ・ステップ」etc。空港で、更衣室で、金木犀の茂みの中で、性の悦びが光る波となって、私を陶酔の海へと導いてゆく…。未知の扉の向こうに、新しい自分を発見する13の物語を収めた傑作官能小説集。
秀一は湘南の高校に通う17歳。女手一つで家計を担う母と素直で明るい妹の三人暮らし。その平和な生活を乱す闖入者がいた。警察も法律も及ばず話し合いも成立しない相手を秀一は自ら殺害することを決意する。
戦国の世、衰微著しい京都朝廷で後奈良天皇が崩御し、後事を託された時の関白・近衛前嗣は朝権回復のために奔走を始める。室町幕府再建が不可欠と、将軍・足利義輝と連携する前嗣の前に、松永久秀が立ちふさがる。
将軍・足利義輝の挙兵は、三好長慶との和議という妥協に終わり、永禄元年(一五五八)、義輝は帰洛を果たした。なおも長慶を除こうとする関白・近衛前嗣は、正親町天皇即位の礼を機に、勅命をもって諸大名に上洛を促すという奇策に出、若き織田信長を知る。前嗣の計画に、再び反撃に出た松永久秀を操るものの正体は何か?そして太古より神々に仕え、天に対して礼を尽くしてきた朝家が犯した、恐るべき秘密とは?「黄泉の国なくば、朝家の神聖も保たれぬと知れ」-死霊の恫喝に即位の礼の行方は?“戦国三部作”始動。
世界一周クルーズに仕掛けられた罠。うごめく殺意の影。絶対不可能な状況の中で、犯人はなぜ凶行に及んだのか。浅見光彦と岡部和雄、二人の名探偵が船上の「罪と罰」に迫る。
ーーどうか、どうか、私。これから先の人生、他人を愛しすぎないように。他人を愛するぐらいなら、自分自身を愛するように。水無月の堅く閉ざされた心に、強引に踏み込んできた小説家の創路。調子がよくて甘ったれ、依存たっぷりの創路を前に、水無月の内側からある感情が湧き上がってくるーー。世界の一部にすぎないはずの恋が、私のすべてをしばりつけるのはどうして。恋愛感情の極限を抉り出す、戦慄のベストセラー小説。直木賞作家の原点。
タイム・トラベラーが冬の晩、暖炉を前に語りだしたことは、巧妙な嘘か、それともいまだ覚めやらぬ夢か。「私は80万年後の未来世界から帰ってきた」彼がその世界から持ちかえったのは奇妙な花だった……。
「私は断じて愉快犯ではない」-世間を恐怖に陥れている連続婦女誘拐殺人事件。少女惨殺の模様を克明に記した犯行声明が新聞社に届けられた。ところが、家族や捜査陣の混乱をよそに、殺されたはずのその少女は無事戻り、犯人とされた男は自殺、事件は終結したかに思われた。しかし、事件はまだ終わっていなかった。捜査を担当している佐原刑事の娘が誘拐されたのだ!しかも、犯人は衆人環視のなかで身代金を運べと要求する…。犯人の目的はいったい何なのか?刑事たちを待ち受ける驚天動地の結末とは!?偉才が放つ奇想のミステリ。
父の会社の倒産、母の病死を乗り越え、幼い頃からの夢だった「社長」になるため、渡邉美樹は不屈の闘志で資金を集め、弱冠24歳にして外食系ビジネスを起ち上げる。順調に軌道に乗ったかに見えたが・・・・・・。
追い風に乗った「ワタミフードサービス」は、ついに株式公開に向けて動き出す。しかし、FCビジネスの急激な業績悪化と、大企業の資本の論理が、渡邉に襲いかかる。息詰まる攻防の末、社運を賭けた事業の行方は!?
金融不祥事で危機に陥った協立銀行。不良債権の回収と処理に奔走する竹中は、住宅管理機構との対応を命じられ、新たな不良債権に関わる。社外からの攻撃と銀行の論理の狭間で、再生に向け苦悩するミドルの姿を描く。
支店長として大阪へ赴任した竹中は、「貸し剥がし」といわれる資金回収の現実に直面、個人の無力を痛感する。やがて上層部の対立に端を発した人事抗争は、銀行崩壊の危機を招き・・・。ミドルの感動を呼ぶ力作巨編。
ヨーロッパの新興ジャーナリズムと同時に、化政・天保年間の日本で漢詩の大流行を背景にジャーナリズムが開花した。ジャーナル誌『五山堂詩話』を通して身分を越えて躍動した文壇を描き出す。